東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
海外ミステリ97位 オデッサ・ファイル フレデリック・フォーサイス
大学時に読んだ。そのときは、「悪魔の選択」の印象が強かったせいか、ちょっとパワー負けしているような感じがしていた。ラストの展開も何となく歯切れが悪いし。
それから二十年、図書館に頼んで取寄せてもらい再読してみた。かつて一世を風靡したフォーサイスの傑作群は、今や地方の図書館にはまるで置いていないのである。
気乗りがせずに読んでみたら……。
これがもう面白い。一日で読破してしまった。あれから幾星霜、ナチス要人に関する雑学的知識も増え、ドイツ国防軍とSSとのズブズブの関係もよくわかったうえで、本書の主人公であるルポライターのミラーと、彼が必死で追うもとSS高官のロシュマン、そして暗躍する、大戦下におけるSSを国外逃亡させるための支援組織「オデッサ」の話を読むと、もう細部がわかりすぎてわかりすぎて。情報小説というよりは、古式ゆかしい冒険小説といったノリなのである。
なぜこんなに面白いのかを考えてみたのだが、フォーサイスが自著に対して、「私の作品は今この時のトピックを扱っているので、三十年後には読まれないだろう」といったという逸話が、まわりまわりながらもまさに正鵠を射ているからだろう。
「オデッサ・ファイル」で扱われている、第二次世界大戦下のドイツ軍とSSに関するトピックは、「今まさに進行中の、今この時のトピック」だからではないのか。発表から45年の年月が経っても、いまだナチスとヒトラーを賛美する人間は絶えることを知らず、ドイツ人は日本人ほどではないにせよ、戦時中の戦争犯罪から目を背けている。しかもイスラエル、アメリカ、フランス、イギリスと、民族主義をあおりたてる輩ばかりが政権の周りにはびこる始末。いま、「オデッサ」は攻守所を変えて、南米からナチズムの戦士たちをヨーロッパなりアメリカなりに再び送り込み、歴史の修正を狙っているのではないか?
そんなことまで考えさせられる、スリルたっぷりのエンターテインメントだった。フォーサイスが過去の作家になりつつあるのは惜しい。1970年代に世界が抱えていた問題は、40年経ってもいまだひとつも解決されていないのだ、ということを実感するためにも、フォーサイスのような作家は読まれなければならないと思う。それが、「歴史書よりも小説で歴史を学びたがる」日本人にとって、いくらかでも世界の現在を理解するための「義務」なのではないだろうか。それを抜いても、ページをめくり出したら止まらない徹夜本なので、古本屋で見かけたらぜひどうぞ。
それから二十年、図書館に頼んで取寄せてもらい再読してみた。かつて一世を風靡したフォーサイスの傑作群は、今や地方の図書館にはまるで置いていないのである。
気乗りがせずに読んでみたら……。
これがもう面白い。一日で読破してしまった。あれから幾星霜、ナチス要人に関する雑学的知識も増え、ドイツ国防軍とSSとのズブズブの関係もよくわかったうえで、本書の主人公であるルポライターのミラーと、彼が必死で追うもとSS高官のロシュマン、そして暗躍する、大戦下におけるSSを国外逃亡させるための支援組織「オデッサ」の話を読むと、もう細部がわかりすぎてわかりすぎて。情報小説というよりは、古式ゆかしい冒険小説といったノリなのである。
なぜこんなに面白いのかを考えてみたのだが、フォーサイスが自著に対して、「私の作品は今この時のトピックを扱っているので、三十年後には読まれないだろう」といったという逸話が、まわりまわりながらもまさに正鵠を射ているからだろう。
「オデッサ・ファイル」で扱われている、第二次世界大戦下のドイツ軍とSSに関するトピックは、「今まさに進行中の、今この時のトピック」だからではないのか。発表から45年の年月が経っても、いまだナチスとヒトラーを賛美する人間は絶えることを知らず、ドイツ人は日本人ほどではないにせよ、戦時中の戦争犯罪から目を背けている。しかもイスラエル、アメリカ、フランス、イギリスと、民族主義をあおりたてる輩ばかりが政権の周りにはびこる始末。いま、「オデッサ」は攻守所を変えて、南米からナチズムの戦士たちをヨーロッパなりアメリカなりに再び送り込み、歴史の修正を狙っているのではないか?
そんなことまで考えさせられる、スリルたっぷりのエンターテインメントだった。フォーサイスが過去の作家になりつつあるのは惜しい。1970年代に世界が抱えていた問題は、40年経ってもいまだひとつも解決されていないのだ、ということを実感するためにも、フォーサイスのような作家は読まれなければならないと思う。それが、「歴史書よりも小説で歴史を学びたがる」日本人にとって、いくらかでも世界の現在を理解するための「義務」なのではないだろうか。それを抜いても、ページをめくり出したら止まらない徹夜本なので、古本屋で見かけたらぜひどうぞ。
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