東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
海外ミステリ99位 魔性の殺人 ローレンス・サンダーズ
大学に入り、下宿先の市立図書館で読んだ。分厚い上下巻本だったが、徹夜してむさぼり読み、自分の生き方はこれだ、とまで思い詰めた。これ、とは何か。この小説の主役ふたりのうちのひとり、登山用具「アイス・アックス」を振り回す狂気の連続通り魔殺人犯である。病気だったとしか思えない。
しかし、それほどまでに、この小説の犯人、ダニエル・ブランクは魅力的だ。この完全に気が狂った男の内面を、作者ローレンス・サンダーズの筆は克明に描いていく。この小説の副題「第一の大罪」は、聖書にある七つの大罪のうちの「傲慢の罪」であるが、自分の精神的至福のために罪なき人を殴り殺して「愛」を感じるダニエルはまさにそれを地で行っているといえよう。
本を読んだら真似したくなるのが人情というものである。わたしはダニエル・ブランクを真似ることに決めた。山岳部に入り、片時もアイス・アックスを手放さず、夜な夜なふらふら歩き、獲物を一撃で殴り殺す。そういうキャラクターを、当時流行していた郵便大戦ロールプレイングゲーム「蓬莱学園」でやってみようと思ったのである。考えただけでわたしはぞくぞくし、はがきに行動文を書いて郵送した。しかし、行動は反映されなかった。ボツになったのである。後にあのゲームのマスター役をやっていた人に話を聞いたところ、「あれはゲームの雰囲気に合わないから何回やっても絶対ボツだよ」といわれた。それを聞いて落胆し、わたしはTRPGを捨て、シミュレーションゲームの殺伐たる世界へ本格的にのめり込んでいくのだがそれはさておく。
さて、精神的変質者の話はそれでいいとして、本書は、いわゆるサイコ・スリラーものの初期の傑作である。傑作ではあるが、いま読む価値があるかというと、それは少々微妙だ。なぜなら、二十世紀も終わらないうちに、あのトマス・ハリスの傑作「羊たちの沈黙」が発表されたからである。あそこに出てくる事件の犯人も、謎めいた助言をする怪人ハンニバル・レクター博士も、ダニエル・ブランクをはるかに上回る狂人であり変態であるからだ。爾後発表された山のようなサイコ・スリラー小説についてはここでくだくだ述べることもあるまい。レクター博士たちに比べたら、ダニエル・ブランクなんて、傲慢どころか謙虚もいいところである。
二十年ぶりに再読したが、いまとなってはむしろ捜査側のディレイニー署長の活動の方に魅力を覚える。この人もかなり強引な人で、古き良き警察官の魂を受け継いでいる人である。彼の活躍は「欲望の殺人」「無垢の殺人」「憤怒の殺人」と続くのであるが、くそう、体力あるうちに読んでおくんだったなあ。「無垢の殺人」はけっこう評価が高いからなあ。
しかし、それほどまでに、この小説の犯人、ダニエル・ブランクは魅力的だ。この完全に気が狂った男の内面を、作者ローレンス・サンダーズの筆は克明に描いていく。この小説の副題「第一の大罪」は、聖書にある七つの大罪のうちの「傲慢の罪」であるが、自分の精神的至福のために罪なき人を殴り殺して「愛」を感じるダニエルはまさにそれを地で行っているといえよう。
本を読んだら真似したくなるのが人情というものである。わたしはダニエル・ブランクを真似ることに決めた。山岳部に入り、片時もアイス・アックスを手放さず、夜な夜なふらふら歩き、獲物を一撃で殴り殺す。そういうキャラクターを、当時流行していた郵便大戦ロールプレイングゲーム「蓬莱学園」でやってみようと思ったのである。考えただけでわたしはぞくぞくし、はがきに行動文を書いて郵送した。しかし、行動は反映されなかった。ボツになったのである。後にあのゲームのマスター役をやっていた人に話を聞いたところ、「あれはゲームの雰囲気に合わないから何回やっても絶対ボツだよ」といわれた。それを聞いて落胆し、わたしはTRPGを捨て、シミュレーションゲームの殺伐たる世界へ本格的にのめり込んでいくのだがそれはさておく。
さて、精神的変質者の話はそれでいいとして、本書は、いわゆるサイコ・スリラーものの初期の傑作である。傑作ではあるが、いま読む価値があるかというと、それは少々微妙だ。なぜなら、二十世紀も終わらないうちに、あのトマス・ハリスの傑作「羊たちの沈黙」が発表されたからである。あそこに出てくる事件の犯人も、謎めいた助言をする怪人ハンニバル・レクター博士も、ダニエル・ブランクをはるかに上回る狂人であり変態であるからだ。爾後発表された山のようなサイコ・スリラー小説についてはここでくだくだ述べることもあるまい。レクター博士たちに比べたら、ダニエル・ブランクなんて、傲慢どころか謙虚もいいところである。
二十年ぶりに再読したが、いまとなってはむしろ捜査側のディレイニー署長の活動の方に魅力を覚える。この人もかなり強引な人で、古き良き警察官の魂を受け継いでいる人である。彼の活躍は「欲望の殺人」「無垢の殺人」「憤怒の殺人」と続くのであるが、くそう、体力あるうちに読んでおくんだったなあ。「無垢の殺人」はけっこう評価が高いからなあ。
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