ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1984年(5)

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     家へ帰ると、両親はいい顔はしなかった。とりあえず今日だけは読んでいいが、明日以降は受験勉強に励むこと。その間、この雑誌は責任を持って預かる、というのである。

     修也は了承した。ほかにどんな道があったというのか。

     そして、修也は、ペーパーアドベンチャーゲーム「LUI.1 ジャングルの巻」をひたすら読んだ。悪漢にさらわれたルイ姫を救出するため、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、パラグラフの迷路をさまよい続けた。

     寝る時間も迫ってきてあきらめかけたころ、ようやく、修也はジャングルを脱出し、ルイ姫をさらった張本人の悪党「ジウコウヨ=ジンケ」の屋敷の前にたどり着き、最後のパラグラフを読んだ。

    「143 ルイ王女だ! とても悲しそうな顔をしている。
     LUI.1おわり……LUI.2 ジウコウヨ=ジンケ屋敷の巻に続く」

     修也は深く息をついた。

     アドベンチャーゲームって、なんて面白いゲームなんだ!

     早く続きが読みたかったが、受験勉強がなくとも来月になって次号が発売されるまで読めないことは明らかである。

     修也は、「マイコンBASICマガジン」の本文をゆっくりと読み始めた。

     まずは冒頭の広告欄から。そこにあったのは、ただの宣伝広告ではなかった。

     スクラムを組んでやってきたかのようなゲーム写真の群れ、群れ、群れ!

     最初に修也の度肝を抜いたのは、ゲームセンターに置いてあるナムコのゲーム、そのほとんどがパソコンで遊べるということだった。この雑誌を出版していた電波新聞社は、ナムコと提携し、パックマンはじめ、ギャラクシアン、マッピー、ワープ&ワープといった、ゲームセンターで遊べるゲームをパソコンに移植していたのだ。そして、その中には。

     あの「ゼビウス」が含まれていたのだ!

     シャープの、当時の主力パソコンだった「X1」。その高度なグラフィック能力は、あの修也を魅了した緑と黄色と青と、光り輝く銀の世界を見事に再現していた。修也は長いことその画面写真から目を離すことができなかった。

     修也はページをめくった。そこにもまた「ゼビウス」があった。PC-6001用の「タイニーゼビウス」である。色こそ緑っぽかったが、画面写真にはしっかりとあの浮遊要塞アンドアジェネシスが描かれていた。修也は二年前に読んだPC-6001の値段を思い出した。89800円。

     修也はおそるおそるパソコンの市販の値段の一覧が載っているページを読んだ。

     くらっとした。

     桁の多い足し算をしなくても、パソコンでゼビウスを遊ぶには、ざっと20万円近くの投資が必要なことがわかったのである。
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    ~ Comment ~

    Re: 矢端想さん

    おお、「ラ製」の読者でしたか。パソコンゲームが面白すぎて、結局「ラジオの制作」誌は読まなかったので、わたしははんだ付けひとつまともにできません(^^;ゞ

    もしそちらのほうにも詳しかったら、ゲームソフトの「タコの吸出し」を自作して違法コピーのヤクザな道に走っていたでしょうから、運がいいというかなんというか……。

    ヤフオクでMZシリーズの出物見てみましたけれど、あまり高値で取引されているわけでもないみたいですね……。

    NoTitle

    電波新聞社!小~中学生のころ月刊「ラジオの製作」を愛読してましたよ。この話の5年ぐらい前ですね。しかし結局のところ自分は嗜好も頭脳もまったくPC技術者向きではなかったのですね。ハナからプログラムなんて勉強する気もなく。
    高校入学祝いに親に買ってもらったMZ-80K2Eはずっと実家にありましたが、十年ぐらい前に「ああ、もう使い物にならんからいいよ」って処分してもらいました。ヤフオクにでも出せば売れたのかな…。

    Re: 椿さん

    この金銭の問題が、学生たちをファミコンへと殺到させることになる一番の理由なのですが、パソコンもパソコンで黙っていたわけではありません。

    そこらへんの事情については、今後もしばらくお付き合いください。この時代って、言い方は陳腐になるけど、まさに「日本のコンピュータゲームの青春時代」そのものなんですよ。年代的には、PC-8801の登場から、PC-9801が市場をほぼ独占するまでの期間ですね。牽引役となったのはもちろんファミコンですが、パソコンもパソコンでがんばっておりました。

    Re: ECMさん

    両方とも性能はいいんですけどねえ……。あと中堅価格帯での代表的な負けハードというとSMC-777Cとパソピア7とMULTI8あたりですか。

    のちにパソコン誌の投稿欄かどこかで、16ビット機が出始めたころ、迷わず「MZ-5500」を選んだ気の毒なシャープ信者の話を読んだことがあります。

    Re: らすさん

    当時のパソコンファミコン少年たちにとっての「ゼビウス」は特別なものでしたからねえ……各社も「ザビガ」とか露骨な対抗商品をばりばり出すし。

    ポストゼビウスをめぐっての第一次の戦乱を制したのは、ファミコンとボンボンを押さえた「スターフォース」かな、とか思ってるんですが、こう主張すると反論必ず来るやろな(笑)

    NoTitle

    子供にはとても無理な金額ですね。パソコンとなると仕方ありませんが……
    このゲームへの憧れはいつ成就するのでしょうか。
    ゲームをするのも簡単ではない。

    NoTitle

     高価な買い物で、カシオのFP-1100と日立S-1を持っている、見事な負けハードをつかまされた人がいました。
     ついたあだ名がマニアック。
     まあ当時のパソコンの使い方が、プログラミングだったので別に市販ソフトにたよる必要もそれほどなかったのかもしれませんけど。

    NoTitle

    こんばんは(*'ω')

    「ゼビウス」は小学生の時、学校の近くの写真屋さんに筐体があって、
    学校帰りに時々立ち寄ってプレイしていました。
    当時の自分の行動範囲内で「ゼビウス」が遊べるのはそこだけでしたが、
    写真屋さんなのでなかなか入りにくかったのは覚えています。
    それからまもなくファミコンでも遊べるようになるのですが…

    Re: LandMさん

    いま面白いな、と思うのは、

    「最高のセッティングで最新のPCゲームを楽しもう」とすると、

    だいたい20万円を投資することになる、ということが、この30年間まったく変わっていないところですね(笑)

    ほんとアップルのころから全然変わらん(笑)

    NoTitle

    昔はパソコン高かったよなあ。。。
    まあ、いまでも、高いけど。
    まだ汎用性の高いから今はいいですけどね。
    昔はまだパソコンも発展途上でしたからね。
    色々思い出します。。。( TДT)
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