映画の感想

    「アフリカの女王」見る

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     ブログDEロードショーの企画として見る。前から見たいと思っていたのだ。

     しかし、最初から今回の視聴は困難を伴った。ブックオフの百均棚で買ってきたDVDの画像が、「よくもこんな三倍速のビデオをダビングしたような映像に2800円もつけたもんだ」と思うような代物で、しかも字幕もちょこちょこ不備があるうえに音声もよくないという、ごめんなさい百均棚では二度と買いません、と痛感する、まあひどいDVDだったのだ。

     そんな状況での104分。

     結論をいうと、この映画はやたらと面白かった。冒険映画というものはこうでなくてはならない。原作のフォレスターというやつはやっぱり冒険小説のツボというものを知り尽くしている。そしてジョン・ヒューストンもそれを「わかって」作っている感がありありと感じられてうれしい。

     キャストのキャサリン・ヘプバーンとハンフリー・ボガートであるが、これはこいつらでなくてはならんのだ。

     ヒロインは頭の固いオールドミスでなければならぬ。ヒーローは疲れた中年男でなければならぬ。もしこれが、元気はつらつのきゃぴるん(死語)な若い娘と、海兵隊あがりのワンマンアーミーな男をキャスティングしていたら、この映画は駄作になっていただろう。

     敵は悪魔のようなドイツ軍でなければならぬ。ドイツ軍は非道をせねばならぬ。そしてイギリス人は可能な限りそれに反撃せねばならぬ。どうしてか、などと聞くのは、なぜ仮面ライダーはショッカーと戦わなければならぬのか、を聞くのと同じくらい野暮な話である。戦争反対、とか、ドイツ人にも愛する国と家族が、とかいう映画ではないのである。そこをカン違いすると「サハラに舞う羽根」みたいな駄作になってしまうのである。

     ヒーローの武器は可能な限りボロくなくてはならぬ。こんなもんで戦力になるのか、というほど非力でなくてはならぬ。その点、この作品のメインウェポンである「アフリカの女王号」は実に理想的だ。誰がどう見たって戦力はおろか、川を進むのさえムチャであろう、というほどのひどいボロ船。しかも基本的に非武装。だからいいのだ。もし、これが「ガンダム」クラスのスーパーウェポンだったら、この映画は駄作になっていたに違いないのである。

     そこらへんの基礎的なところさえ共感できれば、本作は、笑って泣けてどきどきできてさらにはアフリカ観光までできる、最上級の冒険映画の傑作である。ダイハードがなんだ。レイダースがどうだという。「超人的」とは縁もゆかりもないパッとしない男と女が、あからさまに強力すぎる敵に挑むのだ。襲い掛かる困難を、ひとつひとつ愚直に乗り越え、絶望的な事態に直面しても勇気とユーモアを忘れず、そして……。

     最後の展開にわたしは泣いた。しょぼくれた中年男と、しかたのないオールドミスの冒険は、あまりにも無謀だから当然の結末を迎えるのだ。ジョン・ヒューストン監督、「わかって」いらっしゃる。

     この映画の主役は、あくまでも「アフリカの女王」号なのである。ボガートの1951年度アカデミー主演男優賞の代わりに、アカデミー主演女優賞を、この美しき船が受賞しなかったことが残念でならない。

     今度はもっと美しい画質のDVDを買おう。
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    ~ Comment ~

    Re: 白くじらさん

    当時の冒険小説は、映画ネタ放り込んでくることが多かったですね。

    大半が、「中高生の読者は見たことないからわからない」という(笑)

    今ではネットで無理すれば見られる映画が多いですから、いい時代になったものです。

    今は「アルジェの戦い」を探していますが、テロリストを刺激する映画のせいか日本語版のDVDもBDも出てなくて残念……。

    こんにちは。

    あはは、「さらばアフリカの女王」ではキャサリンでしたか。
    面白いですね。

    TRPGサイトの紹介もありがとうございます。
    さっそく覗いてみました。
    私は、もっぱらGMをしていたり、運営もしていた方なので懐かしいですね。(^^)/

    Re: miriさん

    こちらこそわたしの私的な趣味に付き合わせてしまってすみません&ありがとうです(^^)

    ほかのかたがたの推し作品も見たいですので、次々回が楽しみです(^^)

    おはようございます☆

    ポールさん、今回の企画もそろそろ〆といたしましょう☆

    take51さんはDVDを購入されたのですが、
    たいへんにお忙しいのでご鑑賞は後日になりそうです。
    また記事がアップされたらお知らせしますね!

    見て下さった方は皆さん、それぞれ良い発見やご感想を持ち
    良いご鑑賞になったようで、とっても嬉しいです♪
    もちろんポールさんも私も!

    では、またいつか、宵乃さんの四季の企画の合間に、
    「皆で一緒に見たい映画」があったら、お世話させていただきますので
    ぜひお声掛けしてくださいね☆

    今回は楽しい時間を有難うございました。


    .

    Re: 白くじらさん

    わたしも初見だったので戦々恐々で(笑)

    この映画を見ようと思ったのは、森詠先生の「さらばアフリカの女王」という冒険小説を昔読んだからです。DC3ダコタというおんぼろ輸送機でアフリカで運び屋をやっている男が主人公なんですが、そのダコタの愛称が「キャサリン」(笑)

    ここまで冒険小説作家を惚れこませる映画って何なんだろう、と。

    今回見られてよかったです。

    TRPGされていらっしゃるなら、「TRPGオンラインセッションSNS」通称「TRPGオンセン」に登録してみませんか? 最近ハマってしまって、昔の「ファイティング・ファンタジー」のルールブックとか掘り出してはプレイしています(^^) チャットのセッションはチャットながらで楽しいですよ(^^)

    こんにちは。

    今回も私の知らない、なおかつ楽しい映画を推薦していただきありがとうございます!(^^)/

    2人のドタバタ恋愛ストーリーもよかったですけど、おっしゃられている通り、ドイツ軍にスーパーウーマンとスーパーマン、そしてスーパーウエポンで立ち向かって何が面白いのか!
    このボロ船でどう沈没させるのか、先の読めないストーリーはとてもよかったですし、誤解のタイトルであった「アフリカの女王」もラストで面目躍如でしたね。(^o^)

    そうなんですよ、昔からTRPGとかしていると弱点無しのスーパーマンを作ろうとする人が結構いらっしゃるんですよね。ロールする上においては、弱点を長所に置き換えて状況打破する方が面白いと思うんですけどね。(^^; って脱線しちゃいましたけど。

    トラックバックもさせて頂きました。(_ _)

    Re: ひゃくさん

    あそこまで歩くのは電車組にはつらいような(^^;)

    バスを使うんだったらイオンモール行ったほうがよりどりみどりだし、車を使える人は直接行けるし、と考えてしまうイナカ者であった(^^;)

    伊藤ヒロ先生の「女騎士さん、ジャスコ行こうよ」を笑えん(^^;)

    NoTitle

    アフリカのジャングルは、ちょっと黒すぎちゃって、とっつきにくいイメージがあってあんまり好きじゃないんだよなー。
    (イメージとかって、別に行って見たわけじゃないんだけどwww)
    ニッポン人だと、やっぱり奄美の森くらいの方が馴染めるような気がします。
    もっとも、奄美の森はジャングルとは言わないのかもしれなけど。
    (って、こっちも行ったことないですけどね)

    アフリカは、やっぱりサバンナと砂漠が好きですね。
    あの美しさと、あの音のしない音が聞こえる世界というのは他にはないと思う。
    あと、そう、サヘル地域の妙に懐かしさを感じさせる風景もいいなー(笑)

    ていうか。
    亀城公園前の古民家カフェ、あそこいいじゃないですか!
    オフ会やるんなら、ああいうところで2時間くらい、グダグダと盛り上がらない会話してるくらいがいいんだって(笑)

    管理人のみ閲覧できます

    このコメントは管理人のみ閲覧できます

    Re: 宵乃さん

    DVDってものはいざ探すとなると出てこないものですよね~!((笑)

    あの讃美歌が無駄に長いシーンは、さすがにわたしも悪い意味で印象深い(笑)

    それでもわたしは気に入ってます、この映画(^^)

    いまならもっとお金をかけてダイナミックに撮るんだろうなあ……。

    NoTitle

    再見してからコメントしようかと思ったんですが、うちにあるはずのDVDがどうしても見つからなくて…。

    初見時の感想ではオールドミスと粗野な男の冒険とロマンスが楽しめたようですが、今となっては冒頭のへたくそな讃美歌を歌う現地人のシーンしか覚えてません。そういえばドイツ軍とか出てましたっけ。

    いつか再見できたら、またポールさんとお話ししたいです。ポールさんも、まともなソフトで再見できる機会に恵まれるといいですね!

    Re: ひゃくさん

    わたしの見た中でもっともすごかったアフリカ映画は、前にサイレント映画の上映会で見た、1921年版の「四枚の羽根」ですかねえ……。

    もともとはドキュメンタリー映画だったフィルムに、「ドキュメンタリーでは客が入らない」という理由で、当時冒険小説の古典だったメイスンの「四枚の羽根」をもとにしたドラマをつぎはぎする形で発表された、というもので、ドラマ部分はそれほど面白くないのですが、

    1921年当時のアフリカのジャングルを生々しく映したドキュメンタリー部分が迫力満点で面白くて面白くて仕方がない、という(笑)

    特に動物を使った、「あからさまにフェイクドキュメンタリーだろう」という部分は、後にコッポラが「地獄の黙示録」で映像美のために東南アジアのジャングルにナパーム弾をぶっ放したのに勝るとも劣らぬ、迫力と異様な美しさと、動物愛護団体と環境保護団体が激怒することが間違いなしの非道さが出ていて、一見の価値はあります。

    「わくわく動物ランド」や「ダーウィンが来た」などメじゃない面白さですからほんと(笑)


    ……どこで見るんやねん(笑)

    Re: miriさん

    ここだけの話ですが、リクエストした後で、そういやmiriさんはこの映画についてどんな感想持ってらしたんだっけ、と過去記事を参照して、「いかん、地雷を踏んだか……」と真っ青になった(笑) だからこの映画を見るときも少々怖かった(笑) あの「海の男ホーンブロワー・シリーズ」を書いた海洋冒険小説の巨匠であるフォレスターが反戦小説など書くわけがないので、これはどきどきはらはらの冒険映画だ、と自分を勇気づけてから見たであります(^^;)

    どきどきはらはらの冒険映画でよかった(笑) 特に呑んだくれのダメ男であったボガートが次第にカッコよくなっていくのと、きっつい表情のオールドミスだったキャサリン・ヘップバーンが、幾多の死線を乗り越えて、ラストシーンでは生まれ変わったように生き生きと輝いた表情をしているのを見ると、同様にパッとしない生活を送っているわたしはなぜだか泣けて泣けて。

    再見してよかった、ということは、前回よりは面白かった、ということでしょうか。それともさらなる酷評の前に息を整えてらっしゃるのか(笑)

    いずれにしても感想を読むのが楽しみです。

    NoTitle

    アフリカといったら、ひと言、二言、三言、口をはさまないわけにはいかないですね(笑)

    アフリカで映画といったら、『愛と哀しみの果て』これにつきます!(爆)

    え?それは冒険映画じゃないだろって?
    いえいえ。
    冒険だってあるんです。
    カレンがネトロン湖に食料を届けに行くエピソードが!(笑)

    だって、ネトロン湖ですよ、ネトロン湖。
    無茶苦茶行きたいじゃないですか!(笑)

    とにかく。
    後にも先にも、私が20回見た映画(ビデオ&DVD)というのはこれっきりなんですから(爆)

    あとは、いまだDVD化されてない『愛と野望のナイル』ですねー。
    これは、まさに冒険、それもナイルの源流をめぐるお話。
    いやもぉそれだけでワクワクです(笑)

    ていうか、お話の中でリビングストンとスタンレーが、探検の時の怪我を自慢しながら、お互い服をどんどん脱いでいくシーン、これがまたいいんだー。
    こいつら、正真正銘のバカだなぁって(爆)

    こんにちは☆

    責任を持って、画質の悪い?ソフトを鑑賞なさったんですね、
    本当にお疲れ様でした☆
    そして傑作と思われたんですね~! 良かったですね!

    記事に書かれていることは全部うんうんうんうんと頷いて
    深く納得しました。
    そうなんでしょう、この映画はそうでなくてはならなかったんでしょう!

    特に監督が「わかって」らっしゃるとの記述には
    製昨場面が目に浮かんだりして(笑)。

    実は私この映画はあまり再見したくなかったんですが、
    今回本当に再見して良かったと思っているんです!

    再見しなかったら、初見時感想から発展しませんものね、
    思い込みを持ったまま、一生涯を終えていたかもしれません?(笑)。

    自分だけでは見なかった映画を見られて、
    ポールさんに感謝です♪
    本当に有難うございました☆

    (また、ホントに良い企画だと、再確認しました・笑)

    では、皆様のご感想をゆっくりとお待ちしましょうね~!!!


    .
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    映画「アフリカの女王」観た

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