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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ99位 酔いどれの誇り ジェームズ・クラムリー

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     大学生のころに読んだ。そのときは、あまり面白くなかったと記憶している。ストーリーもすっかり忘れた。20年経って再読。

     哀しい小説である。かすかに甘く、男臭い罪の薫りがして、そしてものすごく苦い。読んでいる間は夢中なのだが、読み終わった後のなんともいえない悲哀は他に例を見ない。同じアル中の探偵が主人公の小説でも、カート・キャノンの場合は、また立ち上がって日常生活を続けて行こうという気にもなるが、この小説の主人公、ミロの場合は、読み終えた後、立ち上がるよりもそのまま酒瓶を抱えて座り込みたくなるのである。とうてい、二十歳そこらの若造がわかるわけがない小説なのだった。

     この小説には無数の酔っぱらいが出てくる。彼らは皆、傷を抱え、そして飲んでいる間は優しくなれるやつらである。だが、一度その狭間に落ち込むと、二度と出られない蟻地獄のような生活をしているやつらでもあるのだ。この本を読んだ後だと、「酒とタバコはどちらが健康に害があるか」と聞かれた時に、ためらわずに「酒」と答えるだろう。そしてこの小説の酔っぱらいたちには、何よりも酒が必要なのだ。

     この小説で描かれた、70年代アメリカの、酒とドラッグとセックス事情がどこまでほんとうのことかは知らないが、ほんとうならば日本などとは比較にならないほどのひどい退廃ぶりである。そんな中であるから、逆説的に、どうしようもないアル中の中年の私立探偵でしかないミロが、「普通人」としての視点で、事件と、それがもたらした哀しみを見ることができるのだ。

     作中でミロも語っているが、人がばたばた死に、気がつけば一ダースも死体が転がっているような、殺伐でやりきれない事件であり小説である。しかし、この小説のテーマは、「ゆるし」なのだ。生きているやつも死んでいるやつも、そろいもそろってどうしようもないやつらを、酒の力を借りてではあるが、みんな「許してしまう」小説なのだ。

     これでちょうど100冊目である。ベスト100完走である。海外ミステリベスト100の長い旅路を、このような味わい深い作品で終われたことを嬉しく思う。

     さて、来週からだが、「日本編」のベスト100に行くか、それとも「ベスト101以下の海外ミステリー」を読んでいくか迷っている。しかも、よせばいいのに古本屋で2012年度版の「東西ミステリーベスト100」まで買ってしまったのだ。ミステリの旅はまだ道半ばにも達していない。どこまでもつのかわたしの気力体力経済力!
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    ~ Comment ~

    Re: 百物語ガールさん

    そういえば日本でクラムリーらしい小説を書いているのは誰だろう? あれほど重症なアル中患者をリアルな形で動かす犯罪小説……意外と穴場かもしれないなあ。

    アル中小説の最高傑作である「今夜、すべてのバーで」を書いた中島らも先生がご存命なら、と思うと残念であります。

    NoTitle

    ジェイムズ・クラムリーは好きでしたね。
    ただ、たぶんこれは読んでないと思う。
    いや、読んだかな?
    いずれにしても、クラムリーは読んだとしても憶えてないくらい昔(笑)

    最近はとにかく「本格」ばっかがもてはやされてるんで、こういうのにも光があたってほしいですね。
    ていうか、「本格」ってなんで「本格」って言うの?
    まるで、それが正統みたいだから「本格読んでるオレ/わたしって正しい」みたいな感じがあって、今…、というかずっと続いてる本格ブームってキライ(笑)
    だって、「本格」って、ぶっちゃけアホバカミステリー小説の最たるものですよね(爆)
    いや。アホバカだからこそ面白いんですけど(笑)

    Re: 椿さん

    ほんとにアル中ばっかり出てくる小説で、「お酒やめますか、それとも人間やめますか」を地で行っている(笑)

    同時に、「人間やめたくないから酒をやめてないんだ」というアル中たちの叫びも聞こえてくるようで、実にヘビーな小説でした。

    哀しいやつらなんですよ……。

    Re: 矢端想さん

    モク中でもアル中でもありませんが依存症的体質であるわたしとしては、かけられる言葉はただひとつです。

    「今度お会いした時はぜひ飲みましょう。吐くまでつきあいます」

    NoTitle

    海外ミステリベスト100完走おめでとうございます!
    最近めっきり読書量が減ってしまった自分は見習わないとです。

    今は煙草の方が叩かれる傾向にありますが、お酒もハマったらヤバいですからね…… なんにせよ自分にとっての適量を見定めないといけないのでしょう。
    と言いつつ自分もソシャゲとネットのやりすぎに要注意……(^-^;

    NoTitle

    海外ミステリベスト100完走おめでとうございます!
    最近めっきり読書量が減ってしまった自分は見習わないとです。

    今は煙草の方が叩かれる傾向にありますが、お酒もハマったらヤバいですからね…… なんにせよ依存性のあるものは取扱注意、自分にとっての適量を見定めないといけないのでしょう。
    (と言いつつネット依存がヤバい自分)

    NoTitle

    「酒は百薬の長!煙草は百害あって一利なし!」と若い頃は力説してましたが、最近はどうでもよくなってきました。自分と周りの健康を害するのが煙草ですが、もっとひどいのが人生やら何やらめちゃくちゃにする酒の方です。はっきり言って短い人生、快楽はなんでも嗜めばいいじゃん…とアル中でモク中のオレが言うんだから間違いない。

    Re: miss.keyさん

    えー、酒も部屋中の人に「なにい、おれの酒に付き合えねえのか!」をやりますし、一本でも毒ですし、麻薬の原点じゃないですか(笑)

    タバコに一票

    タバコの煙は部屋中に籠る。アルコールはその人だけ。
    タバコは一本でも毒である。アルコールは適量なら酔っ払いになるだけである。
    タバコは麻薬である。アルコールは百薬の長(飲んべ談)である。

    Re: blackoutさん

    タバコは本人が死ぬだけだけど、アルコールは家族からなにからぶっ壊していくので……禁煙外来よりも怖いですよアル中病棟(笑)

    吾妻ひでお先生の最近の作品読むと特にそう思います。

    酒はほとんど飲まないのに炭水化物食品を中毒するかのように食べただけで脂肪肝になった男は語る(笑)

    NoTitle

    酒とタバコはどちらが健康に害があるか?

    いや、タバコでしょうw

    まぁ、自分は酒飲みなので、余計にそう思うのかもですが(汗)

    とはいえ、アルコールとか麻薬とかの中毒になっちゃうような心理は、多少なりとも理解できます

    これ以上ヤッたらダメだ、って思っててもその自制を吹っ飛ばしちゃうんでしょうし
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