映画の感想

    「アルジェの戦い」見る

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     中島らも先生のおすすめ文を読んで以来、20年間見たくてたまらなかった映画。とうとう見ることができた。

     感想であるが、

     「世界・クソ暑い土曜の午後に冷房の利いてない部屋で生ぬるいコーラを飲みながら見る映画大賞」堂々の1位!

     というところである。まあ今回は、コーラの代わりにペットボトルのお茶だったが、名画座で、生ぬるいコーラをなめながら見たらさぞや浸れるだろうなあ、という映画だ。

     舞台はアルジェリア独立戦争時のアルジェ。130年間にわたるフランス人の植民地支配により、街はヨーロッパ人の住む区画と、イスラム系原住民の住むスラム街、カスバに大きく分断されてしまっていた。

     このアルジェリアが、太陽がさんさんすぎてうだるように暑いところである。カメラを通しても、その暑さが伝わってくる。そんな中でアルジェリア独立運動の過激派が独立闘争をやるのだ。もうムチャクチャ暑い、暑苦しい映画である。

     最初あらすじだけ読んだときには、過激派の爆弾闘争がノリノリで、勝って勝ちまくっているうちに民衆が蜂起してめでたしめでたし、な、典型的な革命映画かな、と思っていたのだが、イタリア・ネオレアリズモ、特にロッセリーニ監督の「戦火のかなた」に影響をうけまくったジッロ・ポンテコルヴォ監督が、そんなお子様向けの映画を撮るはずもなかった。彼は徹底的なリアリズムの演出で、淡々と、「いかにして憎悪と怨念が溜まっていくか」を克明に描いた。

     まず、平和的な独立運動を独立組織FLNがラジオでアルジェリア人に呼びかけると、それに対抗してフランスの総督府は活動家を収監、ギロチンで斬首。FLNは武力闘争に切り替え、拳銃で警察官などを襲っていたが、警察は見せしめとして検問所を設けてカスバを封鎖し、容疑者の家を住民ごと爆弾で破壊。FLNも対象を警官から一般市民に変更し、爆弾テロを行う。フランス軍は対独レジスタンスの英雄、マチュー中佐を本国から召還、その都市ゲリラ戦の知識と技術で、FLNを組織的に追い詰めていく。マチューはコンピュータのような正確な頭脳と、一流の教養を持つ有能な指揮官として描かれており、ここまで来るとどっちに正義があるのかすらわからなくなってくる。FLN側は住民にゼネストを呼びかけ、マチューはそれを口実に全イスラム系アルジェリア人を拘束し拷問する特権を配下の部隊に与える。FLNは絶望的な抵抗を試みるも、同志はひとりまたひとりと逮捕され、拷問で殺されていく。最後にFLNの精神的支柱となって残ったリーダーのアリ・ラポワントもフランス軍に包囲され、爆死し、在アルジェリアのFLNは事実上壊滅する……。

     そう。壊滅してしまうのである。壊滅までに双方にどれだけの怨恨が溜まったかを、フィルムは残酷なまでに記録していく。この記録があってこそ、突然始まったクライマックスが生きてくるのだ。

     アリ・ラポワントが爆殺されてから2年後、群衆は何の前触れもなしに突如蜂起する。それぞれの家で手作りされた山のような数のアルジェリアの小旗が振られ、群衆は銃弾を恐れもせずにフランス軍とヨーロッパ人に立ち向かっていく。鬱積された怒りと恨みがこもりにこもった顔、顔、顔!

     爆弾テロの執拗なまでの描写は、これを描くためにあったのか、とうなってしまった。この蜂起シーンは強烈で、このシーンだけでも一見の価値はある。暴力とエネルギーがみなぎり、自分まで焼けてしまいそうである。

     日本人には絶対に撮れないタイプの映画である。あえてそのエネルギーを描いた作品を挙げると、やっぱり深作欣二「仁義なき戦い」になってしまうなあ。

     今日のような暑い午後にお茶をがぶ飲みして、いい具合に汗をかきながら見たせいか、見終わった今は、「この世のすべての社会悪と不正義を爆弾でもって吹っ飛ばしてやりたい」という気持ちでいっぱいである。肩をいからせて歩いてしまいたくなる。

     広島県のとある高校の野球部が、部員に活力を入れるため、試合会場に向かうバスの中で「仁義なき戦い」を生徒に見せて問題になった例があるが、これからは、そんなことにならないよう、この「アルジェの戦い」をバスの中で流すべきではないか。ベネチア映画祭金獅子賞だし、濡れ場もないし、問題にはならないのではと思う。高校の文化祭なんかでもおすすめである。青少年に生きるエネルギーを取り戻させたいのならばぜひ、国家的プロジェクトとして上映会をしてほしい。


    ※わたしの勘違いと、読んでくださった方からの指摘がありましたので一部改稿しました。
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    ~ Comment ~

    こんばんは☆

    暑中お見舞い申し上げます☆
    体調崩していませんか?
    また元気に映画のお話などしたいですね~!

    この映画は未見です。
    タイトルは昔から知っていますが。。。
    いつか機会があれば見たいと思っています☆

    では、ご自愛くださいね~ !!!


    .

    NoTitle

    まあ、感想自体というよりか。
    映画を観るときの感想ですが。
    私は酒のみながら、狂った映画を観ると、とても楽しい気分でアッハッハ!!笑いながら観るのが好き。
    映画を観ると、世界なんて吹っ飛べばいいのに!!っていう想いは共感できる(笑)。

    NoTitle

    自分は、社会悪と不正義を吹っ飛ばしたい願望はないですねw

    仮に吹っ飛ばして、一瞬だけ無になっても、時間が経てば、新たな悪が生まれるって思う方です

    ええ、自分は良くも悪くも、悪を受け入れちゃうところがあります

    ただ、悪に内面が支配されることは今のところないです
    そうでなければ、小説なんて書いてられないですし

    Re: 百物語ガールさん

    いい映画ですからどうぞ。見る人を選びますけど(^^;) 「太陽の牙ダグラム」が好きな人は必見ですね。

    アルジェリアの独立が1962年ですからねえ、世界史的にはつい昨日みたいなもんです。今のアルジェリアの様子を見ていると、作中で革命家のひとりがつぶやく「革命を始めるのは難しい、続けるのは困難だ。勝つとなると至難だが、本当に難しいのは勝った後、どんな国を作っていくかだ」というのをしみじみ感じます。

    日本人が作った革命映画って、民衆が暴れるシーンになるととたんにつまらなくなりますからねえ……。唯一の革命といえる明治維新だって、基本的に軍隊と軍隊のヘゲモニーの争いだもんな。

    感想で誤解されると残念なので、該当部分を大きくしておきました。

    この映画を見た後では、気分はカスバを徘徊する革命家です(`・ω・´)キリッ

    日本もこの映画を見せるなどして、地下組織作って闘争するための細胞組織の作り方とかを教育しておかないと、いざ侵略を食らった時たいへんだよほんとだよ(^^;)

    NoTitle

    おー!見ましたかー。
    ブリッツさんに教えられて、検索したら予告編があったんで。
    それ見たら、いやもぉ血沸き肉躍っちゃいました(笑)
    その勢いで買っちゃおうかとも思ったんですけど、
    見たら、なんだレンタルもしてるじゃんって(笑)
    ということでまだ見てません。

    > 対独レジスタンスの英雄

    そうかー。
    そう言われてみると、あらためてこんな無茶苦茶な話が、第二次大戦後のついこないだのことなんだなーって、ちょっとビックリしますね。

    フランス人は嫌いじゃないし。むしろ結構好きですけど、結局は白人至上主義の白人なんだなーって思ってしまうのはこういうところですかね。
    って、それもある意味人種的偏見なのかもしれませんけど(笑)

    > あえてそのエネルギーを描いた作品を挙げると「仁義なき戦い」

    てことは、日本人っていうのは意外と「大義」とかはどーでもいいタイプなのかもしれませんね(笑)
    あー、でも、確かにそうかも。
    てことは、教条主義的になった日本人は日本人らしさを失ってるってことなのかも(爆)

    > この世の社会悪と不正義を××でもって××××××やりたい

    チェックされてるよー(笑)

    > 肩をいからせて歩いてしまいたくなる

    それじゃまるっきり「仁義なき戦い」と一緒じゃん!(爆)

    > 国家的プロジェクトとして上映会

    まぁ国家的プロジェクトとしてこれを上映しなくてすむのが、今の日本のいいところでありつつ。
    政治家でもお役人でも、そんなこと言ったらボロクソに叩かれるのが当たり前と、100人いたら100人がそう信じこんでるところが今の日本のダメなところなんでしょうね(笑)
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