東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
日本ミステリ4位 不連続殺人事件 坂口安吾
徹底的にフェアプレイを貫いた謎解きミステリのひとつの到達点。奇抜な物理的トリックもなければ、時刻表も関係しない、読者に名探偵と同様の分析力と判断力さえあれば、誰にでも犯人を指摘することができる小説なのだが、残念なことに読者は名探偵のような頭脳を持ってはいない、ということを痛烈に思い知らせてくれる小説。
読むのはこれで何度目だろうか。最初に読んだのは小学生の時で、わけも分からず読み、名探偵巨勢博士の推理をふむふむと聞くだけだった。次に読んだのは中学生の折である。創元の坂口安吾集で読んだが、そのときは犯人を知っていたので、むしろ稚気たっぷりの安吾の毎回の読者への挑戦の方が面白かった。その後「堕落論」に魂を震わせては読んで、「風博士」ににやにやしては読んで、まあ何度となく読んでいる。
今回腰を据えて読み直してみると、作者の入念なまでのフェアプレイぶりと、偽の手がかりのばらまきかたとに感動してしまった。作者の坂口安吾本人が語るとおり、論理的に考えると解くことができるが、「消去法では絶対に解けない」ミステリなのである。それでいて伏線は目に見えるように堂々と張っていて、巧妙に突いてきた心理的な盲点が明かされたときの、世界が逆転して見えるかのような爽快感は、ミステリファンのみが味わえる興奮体験である。
登場人物は奇人変人ぞろい、誰が誰を殺してもおかしくない状況で着々と犯人の計画が進んでいくところのブラックなユーモアとサスペンスは、「獄門島」を凌駕するのではないかと思えてならない。現に、第2回日本探偵クラブ賞を、「獄門島」と競り合った末に受賞している。
この「不連続殺人事件」があまりにも出来が良すぎたせいか、小学生の時に押入れから掘り出して読んだバージョンでは、安吾のその他の推理短編も収められており、長いこと「坂口安吾という人は論理的なミステリを書くタイプの推理小説作家なんだ」と信じて疑わず、文学全集で「桜の森の満開の下」を読んだときは、その幻想性とわけのわからなさに頭を抱えてしまった懐かしい思い出もあるが、今考えてみれば、「不連続殺人事件」のような推理パズルを作れるだけの論理的な思考能力がなければ、真に幻想的な世界というものは作れないのではないだろうか。そんな感じがする。
現在、青空文庫で出回っているバージョンには、先ほども書いた、安吾が雑誌連載時に書いた読者への挑戦状エッセイも含まれているため、推理に飢えている未読の方は、挑戦してみてはいかがだろうか。安いし。
読むのはこれで何度目だろうか。最初に読んだのは小学生の時で、わけも分からず読み、名探偵巨勢博士の推理をふむふむと聞くだけだった。次に読んだのは中学生の折である。創元の坂口安吾集で読んだが、そのときは犯人を知っていたので、むしろ稚気たっぷりの安吾の毎回の読者への挑戦の方が面白かった。その後「堕落論」に魂を震わせては読んで、「風博士」ににやにやしては読んで、まあ何度となく読んでいる。
今回腰を据えて読み直してみると、作者の入念なまでのフェアプレイぶりと、偽の手がかりのばらまきかたとに感動してしまった。作者の坂口安吾本人が語るとおり、論理的に考えると解くことができるが、「消去法では絶対に解けない」ミステリなのである。それでいて伏線は目に見えるように堂々と張っていて、巧妙に突いてきた心理的な盲点が明かされたときの、世界が逆転して見えるかのような爽快感は、ミステリファンのみが味わえる興奮体験である。
登場人物は奇人変人ぞろい、誰が誰を殺してもおかしくない状況で着々と犯人の計画が進んでいくところのブラックなユーモアとサスペンスは、「獄門島」を凌駕するのではないかと思えてならない。現に、第2回日本探偵クラブ賞を、「獄門島」と競り合った末に受賞している。
この「不連続殺人事件」があまりにも出来が良すぎたせいか、小学生の時に押入れから掘り出して読んだバージョンでは、安吾のその他の推理短編も収められており、長いこと「坂口安吾という人は論理的なミステリを書くタイプの推理小説作家なんだ」と信じて疑わず、文学全集で「桜の森の満開の下」を読んだときは、その幻想性とわけのわからなさに頭を抱えてしまった懐かしい思い出もあるが、今考えてみれば、「不連続殺人事件」のような推理パズルを作れるだけの論理的な思考能力がなければ、真に幻想的な世界というものは作れないのではないだろうか。そんな感じがする。
現在、青空文庫で出回っているバージョンには、先ほども書いた、安吾が雑誌連載時に書いた読者への挑戦状エッセイも含まれているため、推理に飢えている未読の方は、挑戦してみてはいかがだろうか。安いし。
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NoTitle
連続ならばともかく不連続なんだから
わざわざタイトルにしなければいいのに、が読む前の第一印象でした。
奇人変人が出てきますが洒落た感じのミステリだなと思いました。
完全に内容は忘れていますので改めてもう一回読みたいです
わざわざタイトルにしなければいいのに、が読む前の第一印象でした。
奇人変人が出てきますが洒落た感じのミステリだなと思いました。
完全に内容は忘れていますので改めてもう一回読みたいです
- #18915 面白半分
- URL
- 2017.09/30 22:08
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Re: 面白半分さん
ここまで徹頭徹尾遊んでいる作品だからでしょうね、今にもこうして読まれているのは……(^^)