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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ5位 黒死館殺人事件 小栗虫太郎

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     犯人の名前まで思い切りネタバレしています。未読の人は心せよ。

     中学生のころ創元の「小栗虫太郎集」で読んだのが最初。当時、さっぱりワケがわからず、ミステリじゃなくてファンタジー小説ではないか、と思った。しかしこいつはそのまま忘れてしまえるような軟弱な作品ではなく、それから二十年後、病気がひどいときに図書館で借りて読んだ。すると、意外と面白かった。なんだ、普通の謎解きミステリじゃないか、と思ったのだ。それから何回か読んだ。家で使っている電子辞書の「書籍」に、この小説も全文収録されていたのだ。青空文庫おそるべしである。

     あるときはバカミス、ある時はホラーと、読むたびに様々な色合いを呈してくれて、まあよくも小栗虫太郎という作家はこんな変な話を書いたものだと思っていたが、今回の企画でまた再読し、そこで新たな面を見出した。

     この小説、「ラブロマンス」じゃないのか。

     一度そう思い出すともう止まらない。この小説は、紙谷伸子という、奥底に得体のしれないデモーニッシュななにかを抱えた女に魅了されてしまった名探偵法水麟太郎が、なんとか彼女を呪われた屋敷と殺人の連鎖と絞首台の運命から解放しようと、ありとあらゆるペダントリーと詭弁を駆使したものの、伸子の暴走を止めることはできず、名探偵の生涯を賭けた忍ぶ恋は不発に終わりました、という悲恋物語なのである。だって常識的に考えたらごく最初の時点で、犯人は伸子以外にいないことが誰にだってわかりそうなものじゃない。ワトスン役にだってわかるんだもの、名探偵が気付かないわけがない。もうこれは恋だ。恋に目がくらんだ名探偵は、司直の手から愛する伸子を守るため、詭弁、詭弁、詭弁の連鎖によって、確信的に事件を複雑化させ、サボタージュを試みたのだ。よく、超論理、なんていわれるけれど、当たり前だよわざとやってるんだもの。しかし伸子は法水の配慮に気づいてるんだか気づいてないんだか、己が血の衝動に基づいて、次から次へとヘンテコリンな殺人を繰り返すという始末。なんとかソフトランディングできるかな、とひと安心したところで次の犠牲者が死ぬことの繰り返しには、法水麟太郎、ほんとうに頭を抱えたと思う。伸子犯人説に固執する支倉検事や熊城捜査局長からはイヤミをいわれるし、真実だから抗弁もできず、必死に話題をそらそうとする法水の努力には涙を禁じ得ない。結末、せめてもの思いで伸子の名誉だけは守ってやろうとする法水麟太郎、あんた、頭でっかちのインテリだけど、男だねえ。

     そんな読み方も許容することからも、確かにこれは古典だ。また暇ができたら読もう。
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    解釈を完全に読者にゆだねてしまうのはわたしはどうかと思います。それじゃあ書き手が書きたいことを書く意味がなくなってしまうじゃないですか(^^;) 小説を読むとはこれを伝えたいんじゃあ、いう書き手と、俺はこれをこう読むんじゃあ、という読み手の、一種の闘争状態を経た弁証法的行為であり……などと考えていたら疲れるのでしませんが(笑)

    個人的には小説を断章形式で書く時には「断章形式でなければならない必然的理由」と、「断章形式でなければ出せない効果」を狙っているので、ある意味普通の長編以上に気を使うから、ノリノリになって「おれはこれから書く小説のすべてを把握しているZEEEEE!!」的に高揚しているときじゃないと怖くてできません(笑) 「幻想帝国の崩壊」のときなんか、作品の早い段階でその高揚感が切れてもうえらい目に遭ったもんな(笑)

    NoTitle

    読者には誤読する権利がある、解釈は読み手に委ねるものである

    案外自分はそういうスタンスだったりしますw

    とはいえ、断章系の展開が多い小説を書いてるときは、精神状態があまり良くないときだったりします(汗)

    まぁ、自分は、角度を変えれば、また違った解釈ができるようなものを書きたい、とは常に思ってたりします

    Re:面白半分さん

    ワケのわからない単語は飛ばして読むコツさえ覚えればそれほど恐ろしい作品ではないですよ(^^;)

    恐ろしいのは、この小説に注釈を2000個もつけて、「新青年版『黒死館殺人事件』」なんて本を出すマニアな方々です(笑)

    何気に欲しいです(笑)

    NoTitle

    えっ!真犯人の名前ネタバレ?
    紙谷信子?
    誰だっけ?

    何度も読んで途中で挫折し
    読了したんだかしてないんだかよく覚えていないオソロシイ小説です。

    おかげさまで今回真犯人が誰かだけはわかりました。

    青空文庫版もダウンロードしているので
    なにか有事の際は持っていくとしますか

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