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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ8位 黒いトランク 鮎川哲也

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     高校生のおり、古本屋をまわって苦労して探し読んでみて、読み切ったものの気分としては玉砕。しばらくの間鮎川哲也が嫌いになっていたトラウマ案件。あれから二十五年。どきどきしながら再読である。

     結果。玉砕である。とほほ。話としては面白いのだが、なにがどうなっているのだかさっぱりわからない。これならまだクロフツの「樽」のほうがわかりやすくて面白いと思う。緻密を極めたアリバイ崩しは、わたしには向いていないらしい。

     なぜわたしにアリバイ崩しが向いていないのかであるが、まず最大の理由は、「日本地図がパッと頭に思い描けないこと」だろう。いや、わたしも日本のおおざっぱな形はわかる。北海道が北で九州が西ということもわかる。しかし、細かい県の位置となると、ぐっと「わかる」率が落ちる。都市名となるとさっぱりだ。だから、鬼貫の推理でトランクの移動経路が示されても、それがだいたい日本のどこら辺の話なのか、まあ中国四国九州のあたりだろうな、くらいはわかるが、どうもイメージできない。

     そこにさらにトランクの移動ルートがやたらと複雑と来ている。当時の現実の時刻表までが出てくるともうなにもわからない。犯人が作ったアリバイが堅牢だ、といっても、どうせ列車を乗り継いだりしたんだろ、とか考えると、一気に興味というものが失われていく。巻末にはたしかに地図と時刻表があるが、いちいち参照しながら読むのもめんどくさい。かくしてもう、探偵の説明を右から左に聞き流すだけになり、意外な真実があることはあるのだが、あまりに地味すぎて、アッと驚くこともなく、「早く犯人の告白にならないかな……」などと考えながらひたすらにページをめくるだけになってしまうのである。本書を読んで感激し、鮎川哲也全集を二冊ずつ買った人の趣味が正直、信じられない。なるほどこれに比べれば、一番のメインのトリックを最初に明かしてしまう松本清張の「点と線」が一般ウケするわけだな、などと考える始末である。

     よって、わたしは、鮎川哲也では、完全に、「星影龍三」派である。アリバイ崩しよりも密室のほうが面白い、と思えてならない。また、同じアリバイ崩しでも、時刻表トリックよりも、土屋隆夫「影の告発」のように、犯人の使ったトリックが「イメージとしてわかりやすい」ほうが好みである。

     しかし読んだ光文社文庫版の付録の「トリック図解」の図を見てもさっぱりわからないというのには愕然とした。トラベルミステリーを普通に楽しめる人間の脳味噌ってどうなってるんだ? 人には向き不向きがあるらしい。うむむ。
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    このところミステリの名作ばかり読んでますけど、

    明らかに「一般ウケ」を狙った作品の65パーセントのほうが、「コア層ウケ」作品の120パーセントよりも絶対量で上、ということがちょくちょくあるので、そこまで思いつめなくてもいいのではないかと思います(^^;)

    人間にはどう転んでも「自分に書ける作品しか書けない」ので、自分が面白いと思う作品さえ書ければ、それでいいのではないでしょうか(^^)

    NoTitle

    究極的ですが、何をやるにしても、一般ウケ(全員が65点、良くても80点)を狙うか、コア層ウケ(一部の連中が100点、悪くても80点)を狙うか

    このどちらかだと思います

    自分は明らかにコア層ウケを狙ってますし、それが自分の肌に合うのもわかるのでw
    それにファンもそれなりに増えてきちゃったので、なおさら一般ウケにはシフトできないわけで(汗)

    個人的に悲劇的なのは、自分のタイプと逆の方向性で行こうとする連中ですね
    明らかに違和感を感じるので

    Re: 面白半分さん

    アリバイトリックでも、細かい時刻表のやりとりではなく、一発でかいのをバシッと決めてくれたら面白いんですけどね。

    高木彬光先生の「人形はなぜ殺される」とか(^^)

    NoTitle

    アリバイ崩しモノは好きです。
    時刻表トリックだけだとアレですが
    さらにあと何件か組み合わさっているのが好き。

    Re: もうゼーゼーさん

    そりゃーもちろん、「選んだ人がコアな人たちばかり」だというだけで(笑)

    80年代にアンケートを取った文芸春秋も、それはかなり意外だったらしいです。なんたって文春の単行本が、全200余冊中わずか4冊という体たらくだもんな(笑)。

    4冊入っただけでもえらい(笑)

    NoTitle

    予備知識が必要なもので展開されると、全然楽しめないものですよね。
    コアな人しか楽しめないものが、高評価の理由に、むしろ興味がそそられます。
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