ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1984年(11)

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     幸か不幸か、修也の行動範囲内にあるゲームセンターには、「ドルアーガの塔」の筐体は入荷されていなかった。おそらく、あまりの人気沸騰のために地方までは回ってこなかったのだろう。それに、筐体がやってきたからといって、ゼビウスの最初のアンドアジェネシスの攻略にも四苦八苦している自分には、60面をクリアできるわけがない、という判断ができないような小学生でもなかった。

     とにかく目標となる中学校の入学試験に合格しなければ、せっかく買ったベーマガや、モスラ対ゴジラといったゲームと永遠の別れということにもなりかねない。

     修也は駅近くの学習塾にバスに乗って通い、10月号のベーマガで取り上げられていた「バッドランズ」や「ソンソン」、11月号を彩っていた「スターフォース」に「エクイテス」、そんな面白そうなアーケードゲームの誘惑を避けるために、駅近くの、自分の住んでいる近くにある駄菓子屋の店先のようなものとは規模がまるで違うゲームセンターにも入らず、ひたすら勉強を続けるのであった。中学の入試は一月中旬。それまで耐えればいいのである。それに、同じ学習塾にいる連中の返却されたテストの内容をこっそり横から盗み見れば、その塾のクラス内における自分の学力の程度もわかるのであり、とりあえず「作業」さえこなしていればまあなんとかなるのではないか、くらいの計算は立つのであった。10月号の「LUI.2」と、11月号の「宇宙刑事ガリバン」というペーパーアドベンチャーも解いていない以上、ある意味修也にとってはこの入試は「負けられない戦い」ではあったはずなのだが、どこか他人事のような感覚が修也にはあった。これは後に修也に破滅をもたらすのだが、今の段階では、まだ誰もそこまでは予測できていない。

     だいいち、修也自身が全然わかっていなかった。そんなことよりももっと驚くべきふたつのニュースがあったからだ。

     ひとつ目は、ベーマガ12月号に載っていた、衝撃的なゲームの広告。仕掛けたのは、野心的なソフトを多数発表していた、愛知県のソフト会社、「T&Eソフト」。三部作として構想され、ソフト会社の技術のすべてが注がれた、スターアーサー伝説三部作の最終作「テラ4001」も衝撃的だったが、真に驚愕させられたのは、同時発表されたアクションゲームのほうだった。

     その名を「ハイドライド」という。ロマンあふれるストーリーと、広大な屋外マップ、そして難解な謎と多種多様なキャラクター、さらには多数のアイテムを備え、しかも直感的にわかりやすいシステムを備えた、日本のコンピュータRPGの歴史を一変させてしまうソフトであった。

     そしてふたつ目は、カシオが売り出したMSX規格パソコン、「PV-7」だった。特筆すべきはその価格である。29800円。それまでのMSX機のおよそ半額だった。
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    ~ Comment ~

    Re: きみやすさん

    ハイドライドは革新的なゲームでしたなあ。

    あのころはRPGというだけですごかったのにしかも「アクション」ですから……。

    ゲームの発表順では「カレイジアスペルセウス」のほうが先ですが、T&Eは売り方もスマートでしたね。

    NoTitle

    よっしゃ、ハイドライドっ!! きたー。
    (もはや掛け声のレベル)の感想ですみません。

    Re: 椿さん

    パソコンだけが人生やあらへん(笑)

    中学や高校のころに知識や見聞を広めておくべきだと本当に思います。それはどんな方向でもいいのです。パソコンやゲームの果てしなく奥深い世界を放浪し見聞きするのも、立派な見聞ではないかと思います。(← わたしがいったんじゃ説得力が薄い(笑))

    Re: ihiroppiさん

    楽しみにしてもらっているのに更新頻度がガタ落ちでもうしわけないです(汗)

    しかし、修也くんとパソコンゲームの蜜月関係は、それほど長く続かないのでありましたが、それはまた後のお話(笑)

    当時のベーマガとか探したけれどありませんねえ……。あれだけ売れていたのに。うぬぬ。

    Re: ECMさん

    カセットテープのゲームなんかほとんど全滅でしたね。

    でもROMカセットは動くものがけっこう多かったような気がします。電波新聞社のゲームが「ムーンパトロール」以外は全部動いたから、当時の電波新聞社の技術力はすごいもんでしたねえ……。

    Re: バンドル太郎さん

    懐かしいですね魔城伝説。あの頃のコナミのゲームはどれもこれも恐ろしいほどに作り込んでありましたなあ。

    MX-10が1984年末に出ていたら、ファミコンとのユーザー数は逆転していたかも? 等と考えてMSXユーザーは夢を見る(笑)

    NoTitle

    修也くん受験もあるんですよね。小学生から受験勉強するお子さんたちは本当に偉いですわ…… 小学校の時とか、ひたすら寝転がってゲーム&ウオッチしてた気しかしません(^-^;

    パソコンもソフトもどんどん画期的なものが開発されていっていたのですね。あの頃の自分は何に興味を持っていたのだろう。
    あ、ムー大陸の本とか読んでました(笑)

    NoTitle

    このシリーズ、いつも楽しみに読まさせて頂いていて
    非常にありがたく思っています。
    あの時代を違う視点から見ることができる、というのは
    なかなかに興奮を呼び覚まして、なんかこう、エネルギー
    があった頃の感覚を覚えます。

    NoTitle

     PV-7はメモリーが少なくて、動作するソフトが少ないのですよね。
     懐かしいなぁ。

    NoTitle

    MSXの廉価パソコン懐かしいですわぁ。
    後継機のMX-10の方もってたんですけどこれで
    Dragon Slayerとか魔城伝説とかアストロロボSaSaとかやりましたね。
    昔を思い出させていただいてありがとうございます。
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