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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    日本ミステリ12位 大誘拐 天藤真

     ←映画オールタイムベスト10に投票してみました →1984年(13)
     何回読んでも面白い、ユーモア・ミステリの傑作である。今回も再読したが、ゲラゲラ笑い、どきどきはらはらして、最後には少しばかり泣いてしまった。しかし、この小説を、「日本の謎解きミステリの最高傑作」といってしまっていいのだろうか。全体のトーンは、どちらかといえば、謎解きよりも、「ユーモア冒険小説」といったほうが近いのではないか、と、初読時以来ずっと思っている。

     最初に読んだのは、高校三年生のときである。所属していた同好会の部室の本棚に、気の利いたやつが古本屋で買ってきたのだろう、あの辰巳四郎先生のイラストが描かれた角川文庫版が置かれていたのだ。そのころすでに、「東西ミステリーベスト100」のラインナップは頭に入っていたから、「ああ、あの意地悪な婆さんが大暴れするユーモア・ミステリか。12位だそうだな。どうせ日本のユーモア・ミステリが瀕死の時に書かれた作品だから、読んでも仕方がないだろうけれど、後学のために読んでおくか」と拝借した。まことにイヤミな高校生である。

     むろん、そんな不遜なことを考えていた報いはすぐにきた。10ページほど読むつもりが、気がついたら夢中になって読みふけっていたのである。今でも、放送車のカメラが、闇夜にクルッ……クルッ……と回る懐中電灯の明かりを捉えたシーンを読んだときの興奮を、ヴィヴィッドに思い出すことができる。おかげでその晩は徹夜してしまい、翌日の授業には寝不足でハラホレヒレハレな状態で臨むことになった。当時からまことにダメな人間であった。ストーリーの詳細は省く。本屋で買って読んだほうが早いからだ。

     それからはお決まりの古本屋探しだったが、天藤真の作品を探すのは当時は容易なことではなかった。創元がリバイバルする何年も前である。「陽気な容疑者たち」「死角に消えた殺人者」「殺しへの招待」などを探すのだけで精いっぱいで、しかたなく、図書館を丹念に回ることになるのだった。当時から本当にダメな人間であった。

     個人的には、この「大誘拐」を別格とすると、天藤真の作品で一番好きなのは、「遠きに目ありて」である。安楽椅子探偵もののシリーズだが、探偵役の高校生の少年と、女手一つで少年を育ててきたその母親と、いつの間にかその家に足しげく通うようになってしまった男やもめのワトスン役の警部との間にかわされるやりとりが、まあ、実にいいのだ。少年は小児麻痺により、普通に体を動かすことができず、指先を動かすことと、言葉をしゃべること、そして表情を変えることを、ものすごく苦労したうえでわずかに行うことしかできない、というのがすさまじい。シリーズを完結させる前に作者が急逝してしまったのが何とも残念である。せめて警部の恋が実ったかくらいは教えてほしかったなあ……。
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    ~ Comment ~

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    Re: blackoutさん

    安部公房先生はどうかなあ。

    村上春樹よりは可能性ある人だけれど、大江健三郎先生と芸風がかぶるような気がする(^_^;)

    あの人のSFとミステリ、けっこう好きです。「鉛の卵」みたいなきついユーモアの利いた作品も書くから一筋縄ではいかない(笑)

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    NoTitle

    あと20年生きてれば、で思うのは、個人的には安部公房先生ですね
    ノーベル賞取れたんじゃね?っていう(汗)

    ええ、砂の女はもちろん、ほかの作品もチョコチョコと読みましたが、結構好きな感じですw

    あとは、川端先生とか乱歩先生とかですかねw

    きっと、自分の小説は、諸先生たちの影響が多少なりとも出てるんだろうなぁ(汗)

    Re: こみさん

    これを最初に読んだときは、映像にしたらさぞかしすごい作品になるのに、どうして誰も作らないんだろう? と思ってましたが、やりましたねえ岡本喜八監督。日本のミステリ映画でも指折りの作品になって。

    これで天藤先生があと二十年長生きしてくれれば……(T_T)

    Re: 面白半分さん

    「遠きに目ありて」はランクインしていないんですよ。

    こういうベスト100企画では、やっぱり短編集はワリを食ってしまうらしくて……。

    「東西ミステリーベスト100」を古本屋で買った時に誓ったことがあって、「全部に撃墜マークをつけるまでは絶対に捨てへん」と(笑)

    今は、この企画を終わらせるまでは捨てられませんねえ……。

    NoTitle

    ミステリー度はさておき、大好きな作品です。
    映画でも使われましたが、紀伊半島が舞台なので、
    ちょいとなじみもあったりして。
    私はあの身代金を婆さんがつり上げるシーンで大笑いしました。
    『遠きに目ありて』もいいですね。

    NoTitle

    この作品というか「東西ミステリーベスト100」の本作の作品紹介
    がきっかけで創元の天藤作品を読んでいくことになりました。

    それでもまだ半分くらいか。

    「遠きに目ありて」もランクインしていませんでしたっけ?

    「東西ミステリーベスト100」を売ってしまったことが悔やまれます。


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