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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ16位 11枚のとらんぷ 泡坂妻夫

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     高校の時に古本屋を歩き回って手に入れて読み、「泡坂先生にしては薄味だな……」と思った。直前に「亜愛一郎シリーズ」全三冊と、「ヨギ ガンジーの妖術」と「しあわせの書」、という、泡坂妻夫漬けの生活をしていたからだろう。

     さて再読である。泡坂先生、趣味に走りまくりである。ここに描かれているのは、アマチュアマジシャンにとっての夢の生活なのだ。市民ホールを超安価で使わせてもらっての発表会、思いついたものの舞台にかけるには問題のある奇術のネタの本の出版、そして世界中から奇術師が集まってきての世界奇術家国際会議。

     なんのことはない。漫画でいえば、市民会館を超安価で使わせてもらっての同人誌即売会であり、秘蔵の小説なり漫画なりをぎゅっと詰め込んだ大部の自費出版本の出版であり、そして世界中からマニアが集まってのコミックマーケット。いい年をした大人が揃ってオタクな趣味にふける、そういう夢のお話なのであるこれは。殺人事件のひとつも起きなかったらバチがあたってもおかしくない世界だ。

     そう思ったらがぜん楽しくなってきた。こういう、小説でも漫画でもボードゲームでも、「そういう趣味の世界」に共感できる人間にとっては、本書はものすごく楽しいミステリである。何しろ、趣味の世界の有名人がぞろぞろと集まってきて、趣味以外の話はいっさいしなくていいのだ。ちょっと卓をかこめば、その筋では名の通った名人たちがみごとなまでの妙技を見せてくれるうえに、蚤の市ではマニアがよだれをたらすようなアイテムが山ほど売られ、そして喉から手が出るような掘り出し物まで見つけてしまう! 極楽だ!

     逆をいえば、そういう世界にちっとも興味がない人にとっては、面白くもなんともない作品に違いない。この作品が、ユーモアのある読みやすい文章でかつひねりも備えたよくできた作品でありながら、長らく絶版状態が続いていたのも、そしてオールタイムベストを組むとこの辺りの位置なのも、まさに、「オタクの夢」的な雰囲気ゆえに相違あるまい。

     日本ミステリの中でも、映像化は困難な作品だろう。映像化したらかえって面白くもなんともなくなってしまうミステリという意味で。これをもっとオーバーに描けば、シャーリン・マクラム「暗黒太陽の浮気娘」になるんだろうな。未読だけど。

     泡坂先生の、奇術ファンにとっての夢の世界の建築、という野望については、自作奇術の解説本「魔術館の一夜」と、美貌の奇術師にして名探偵・曾我佳城が活躍する「奇術探偵曾我佳城全集」も読むと興味深いかもしれないけど、そこまでしたらマニアの域か。
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    まあそういう世界は書いていると泥沼になりますから。

    「家畜人ヤプー」なんてその最たるもので、あれに魅入られるとほんとに人の道から外れてしまう(笑)

    激辛料理みたいなものですな(^^;)

    NoTitle

    おや、そうでしたかw

    まぁ、言われてみれば、意外とそのものズバリは書いてなかったりしますねw

    あと、個人的には、それほどおどろおどろしく書いてないってのもあるかも、です

    Re: blackoutさん

    故・「フラミンゴ」誌の愛読者だったので、blackoutさんの小説の映像化、それほど映像倫理に触れるものでもないような気がする(笑)

    我ながらひどい感覚マヒ(笑)

    NoTitle

    映像化といえば、自分は小説書くときは、いつも映像を思い浮かべながら書いてますw

    まぁ、仮にそれが実現したとしても、ほぼ確実に地上波だと深夜枠になるかとw
    下手すると、ネット配信専用とかかもw

    Re: 面白半分さん

    生まれて初めてコミケへ行った時の圧倒された感じは今でも覚えています。

    いずれの道でもオタクというものはそういう悲惨な生物なのです(笑)

    NoTitle

    殺人事件のひとつも起きなかったらバチがあたってもおかしくない世界ってのにはニヤニヤしました。
    ポール・ブリッツさんにとっての夢の世界とはそうなんですね。

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