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    ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1984年(13)

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     「ハイドライド」を家庭で遊ぶ。

     当時のパソコンの常識から考えたら、何を馬鹿なことを、と誰もが思ったろう。

     ハイドライド。PC-8801シリーズとX1シリーズで発売されたこのソフトは、それほどまでに最先端を行っていた。

     平和な王国を突如襲った悪魔「バラリス」にさらわれたアン王女を救出し、再び王国に平和を取り戻すため、怪物を退治し自らを鍛えていくジム王子の困難を極める冒険、というのが、当時のパソコンユーザーたちの心をいかに刺激したか、それは現在想像するようなものとは桁が違った。しかもその冒険が行われる舞台は、はっとするほどカラフルな異世界なのだ。ジム王子にしても、ただ単に敵と接触すれば死んでしまうような、それまでのゲームのキャラクターとは違うのだ。敵と戦えば傷つき、休めば回復し、そして、経験を積むことによって強くなっていく。おおかたの人間にとって、そんなゲームが存在すること自体、『驚異』以外の何物でもなかった。そんな、まるで実際に生きている人間のような振る舞いを見せるキャラクターを操作できるゲームが、「アクションゲーム」として表現されているのだ! それゆえに、それがどれだけ移植が困難なものであるか、誰もが想像がついたのである。

     広大なゲームマップは、PC-8801版では超高速度のマップ切り替え、X1版ではスクロールにより表現されていた。そのような広大なマップの素早い処理を、煩雑なセーブやロードなしで、MSXやファミコンで行うことが可能であろうか? また、そこでうごめく多種多様なクリーチャーを、同じくセーブやロードなしで表現することが可能だろうか? さらには、様々なアイテムやダンジョンが登場するこのゲームには、クリアまでに膨大なじかんがかかることが容易に想像できた。その時に備えてのゲームデータのセーブやロードをどうするのか?

     たぶん、FM-7やPC-6001mk2に移植することは可能だろう、というのが大方の予想であった。FM-7も、PC-6001シリーズも、T&Eソフトが昔から得意としてきたハードウェアである。しかし、MSXはどうか? グラフィック能力でPC-6001mk2に大きく水をあけられているMSXでは、メモリを限界の64KBまで増設しても無理なのではないか。実質的なRAMが2KBしかないファミコンに至っては問題外である。

     MSXやゲームパソコンで、RPGや本格的なアドベンチャーゲームをやろうというのが無理なんだと、常識はそう語っていた。

     それからの歴史を知っている人間にとっては、それがいかに誤ったものの見方であったかわかるだろう。発表の翌年にはMSXに移植され、2年もしないうちにファミコンで「ハイドライド・スペシャル」が発表されることになる。MSXでもファミコンでも、RPGは定番の「売れるタイトル」となり、いわゆる「メガROM」が実用化されるに至って、80年代のコンピュータRPGは黄金時代を迎えることになるのだ。そのもっとも有名なものが、ファミコンの「ドラゴンクエスト」であろう。

     話を1984年当時に戻す。

     修也は自分の動かすキャラクターが、自由にありとあらゆることを行い、難解な謎を解き、ゲーム世界に平和をもたらすことを思って、ぞくぞくした。

     それは果てしなく果てしなく代り映えのしないステージを繰り返してアンドアジェネシスを倒し続ける未来よりも有意義で素晴らしいものであるかのごとく思えた。

     修也はベーマガを両親に預けながらも、頭の中では受験のことなどはほとんど考えていなかった。パソコンを買おう。RPGとアドベンチャーをやろう。そして冬休みを迎え、最初のチャンスがやってくるのである。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    ゼビウスとロードランナーとハイドライドと信長の野望で「売れ線」の要素はほぼ決まってしまった感じがありますね。これにポートピア連続殺人事件とストⅡが加わると後はそのバリエーションでしかないような気がする(^^;)

    NoTitle

    確かにRPGというのは当時では画期的なものでしたからね。
    もはや伝説ともなっていますからね。
    今でこそ当たり前のジャンルですけど、
    この時代はゲームの革新が凄かったですねえ。。。
    (´_ゝ`)

    Re: 椿さん

    ウィザードリィなんて、「国産機で走らせるのは無理だ」とまでいわれてましたからねえ。最初に動いたのがPC-9801で、皆が「なるほどこれでは無理だ」と思ったものです。

    まさかそれが貧弱にもほどがあるメインRAMのファミコンで動くようになるとはだれも思ってもいなかったのですこのころは(笑)

    NoTitle

    おー! 修也くんお待ちしておりました! 年内にまた会えて嬉しい。
    私は本当にパソコン疎くて、日本のRPGブームはドラクエとかウィザードリィあたりが始まりだとばかり思い込んでいました。

    でも、PCゲームとしての長い開発の歴史があって、そして専用ゲーム機への移植という流れがあったんですね。
    考えてみれば当然のことなのですが、何だかそのことにしみじみしてしまいました。

    修也くんの挑戦はどうなるのか、どんなプレイをすることになるのかのんびりお待ちしていますね。
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