映画の感想

    「美女と野獣(2017)」見た

     ←日本ミステリ14位 陰獣 江戸川乱歩 →日本ミステリ15位 ゼロの焦点 松本清張
     今回の「ブログDEロードショー」お題作品。ディズニーのアニメを実写リメイクした版である。そういや、「美女と野獣」、大ざっぱなあらすじは知っているし、あらゆるメディアになってるけど、「通し」で見たのは初めてだな。

     で、この映画を見たのだが、見ていて腹が立った。

     別に悪役に腹を立てたんならばそれはそれで構わないけれど、この作品の場合、「脚本」と「演出」に腹を立てたんだからどうしようもない。わたしにはこれが「ヒロインが結ばれてよかったね映画」と単純に見ることができそうにない。いや、「ヒロインが結ばれてよかったね映画」ではあるのだが。

     つまり、この映画、作成にあたっての前提として、「フェミニストを怒らせること」を隠れた目標としているのではないかと考えるのだ。そもそも、ヒロインのベルをあれだけユニークな存在として設定しておきながら、物語の興味の中心は、「ベルがどの『男の社会のルール』を選ぶか」から一貫してぶれないからだ。

     ベルは自由なようではあるが、彼女に許された選択肢は3つしかない。

     父のもとで娘として生きることにより、『父=娘』というコードで『娘』を生きるか、

     野獣のもとでその伴侶となり、『理想の男性=妻』というコードで『妻』を生きるか、

     ガストンのもとでその伴侶となり、『現実の男性=妻』というコードで『妻』を生きるか、

     それ以外に選びようがないからである。

     別に野獣の城で世話になるだけ世話になってひたすら本を読んでオタクとして暮らす、という選択肢があったっていいではないか、と思うのだが、物語の仕組みは、それを許さない。『娘』でいたくなければ、どっちかの男を選べ、それが『普通』だ、というルールで、劇中の人物が総動員でベルを後押しにかかるのである。

     これではベルはユニークな存在である必要など何もないではないか。ベルの特性である知性も好奇心も、『妻』となってからは必要とされない、もしくは重要なポイントと見なされないからだ。

     そして何よりも頭を抱えるのが、この事態をもたらした存在が「魔女」であるということである。

     プリンス・チャーミングをこらしめるのが目的ならばそれでもいいだろう。だがなぜ、そこに『女』をからめなければならないのか。ここで魔女が呪いを解くために『女』に求めているのは、知性でも教養でもましてや好奇心でもなく、『女であること』それのみなのだ。そのような女を枠にはめることを女が率先して行っている! ひどいブラック・ジョークではある。

     そして多分制作スタッフは、それをわかって『わざと』そういう物語をこしらえている。

     思うに、製作スタッフの影の狙いは、そうした「男本位の社会体制」にのっかったラブロマンスが、ポリティカル・コレクトネスをすんなりとすり抜けてしまうことを、それと同時に映画がヒットすることを、全世界にアピールすることではなかったのだろうか。ベルが本の山を見て歓喜のあまり歌い出すシーンを『女性の自立』などと安易に書いて喜んでしまう評論家を陰で笑っているようにしか思えない。

     少なくとも、わたしがフェミニストだったら、この映画を見て烈火のごとく怒ると思われる。

     映画の中盤からそういうことばかり考えてしまって、歌もCGもどうでもよくなってしまった。

     とほほ。
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    ~ Comment ~

    Re: miss.keyさん

    まったく、男女が平等な社会というものは作るのが難しいものであります。野獣が専業主夫になる未来を考えるのも面白いけれど、それはそれで単に立場が変わっただけで、「搾取=被搾取」の構造はそのまんまだから何の解決にもなってないしなあ。

    女性の夢とは所詮玉の輿なのであろうか・・・

     自立を許されぬ時代であれば兎も角、この現代に於いても女性の夢憧れが王子様とのハッピーエンドってのもどーかと思うのであります。しかしだからと言って男への単なる反発からのの自立心ってのも違う気がするんだ罠。
     でもですよ、結局のところ野獣の中身が王子様なればこそのハッピーエンド。これがもし、人格者ではあるが貧乏長屋の八さん熊さんだったらヒロインの恋心はどーだったろう。金は無くとも恋心?私が稼いで食べさせてあげる!!ってのは単なるアホにしか見えん。結婚するなら金持ちを選べって、確かに現実は金があった方がより有利だよなぁ。貧乏だからより誠実とも限らない訳で、中身が同じなら敢て貧乏を選ぶ道理は無い訳である。難しい問題・・・でもないな。迷うな、選択肢が有るなら金持ちを選べ。ベンツS600の向こう側には財布の中身を気にしないで買い物が出来る生活が待っている。

    PS:ちなみにわたしゃ完全無欠の庶民だす。

    Re: 宵乃さん

    アメリカの若いのは進んどるのう(笑)

    NoTitle

    何言ってるんですか!ディズニーの世界はコウノトリが赤ちゃんを届けてくれるんですよ!
    キスして結婚したら赤ちゃんを授かるんですっ(笑)

    Re: 宵乃さん

    ロマンチック、って、ベルが野獣とのベッドでないと満足できない身体になってしまったらどうするんですか。このネタだけで薄い本が三冊は。

    щ(゜▽゜щ☆\(^^;ぽかっ

    Re: blackoutさん

    この映画では、そこら辺の芝居を「目」で行うことにより、ベルにとって相手が「野獣」でなく「プリンス・チャーミング」であろうが、大事なのは中身だ、という具合に持って行ったのがうまいと思いました。

    逆もまた真なりではありますが。

    ドストエフスキーを「変態小説」として読み直してみたら面白い……かもしれぬ(誰がやるんだ(^^;))

    魔女は二人の母親の思いを汲んで

    歪んで育った王子に愛を取り戻し、村に馴染めないベルを理解者となれる人の元へ導いたのかな…とメルヘン思考で見てました(笑)
    難しいことはわからないですけど、結末ありきで考えられた話だなぁというのは私も思います。魔女のやり方は、たとえ善意からだったとしてもかなり荒療治で押しつけがましいですし。
    でも、時代設定的にヒロインが結婚しないで自立という結末は無理があるような…。シスターとか?

    個人的には、愛し愛されて呪いが解けるんなら、相手は女性でなくても友情や主従間の信頼、我が子との愛情でもいいよなぁと思ったりもしました。
    ベルとの愛だけでは呪いが完全には解けず、野獣の姿のまま結婚生活を送って、子供が産まれて初めて完全に呪いが解けるとかロマンティック!

    NoTitle

    フェミニストにキレられることを前提に敢えて書きます

    オナゴという存在は、相手が野獣だろうがバンパイアだろうが「だって、好きなんだもん…」っていう想いで全てを超克するものだと思います

    だから、この映画で相手が王子か野獣かなんてのは、ベルにとってはどうでもいいことなんではないかとw

    まぁ、無害な変態だと誰も読まないでしょうw
    たぶん、誰しもが程度の差こそあれ持ちうる要素だからこそ、だと思いますです

    Re: LandMさん

    まあそりゃあそうだw

    でもディズニーが2017年現在にこうしたベタベタなラブロマンスをやってくるということは裏に何らかの意図があるものだと……(笑)

    Re: しずくさん

    いや、企画・脚本段階から様々な分野にまたがったチームを組んで、チームとして映画を作るディズニーが、そういうことに対して無自覚なわけがない。あれは絶対意図的なものだ(笑)

    ちょっとこれを書いたときは虫の居所でも悪かったのかなわたし(笑) 今後も虫の居所が悪くなるよう頑張ります(`・д・´)キリッ

    Re: blackoutさん

    昔読んだパロディで「なぜベルは王子に戻った野獣を愛してしまうのか。やっぱり野獣よりも王子のほうがいいのか」ってツッコミに笑いましたが、この映画ではそこら辺をうまくクリアしてましたなあ。

    よく考えたら、「無害な変態」を描いた小説ってあまりありませんね。たいてい、よその人に迷惑をかけてますな。乱歩はやはりすごいのう。

    Re: 椿さん

    ガストンはそういう価値観で育ったことによる環境の犠牲者なのかな、と思って見ていたら、ものすごく頭が回る大衆扇動者だったことにびっくり。そこらへんがディズニーのディズニーたるゆえんなんでしょうなあ。

    アシモフの雑学本に、グリム童話とアンデルセンの童話に出てくる意地悪な父親と母親の割合を比較したら、95パーセント以上で「意地悪な母親」しか出てこない、と出ていて笑ったのを覚えてます。いや、心の闇から考えると笑い事じゃないな(^^;)

    NoTitle

    ラブロマンスに自由なんてないですよ(笑)。
    本当の自由って結構難しいですし。
    どっかで折り合いをつけるのが現実ですからね。
    (´_ゝ`)

    それはやっぱり。
    アニメでも映画でも実写でも変わらないような。
    世界共通ですかね。。。

    NoTitle

    >ベルは自由なようではあるが、彼女に許された選択肢は3つしかない
    >魔女が呪いを解くために『女』に求めているのは、知性でも教養でもましてや好奇心でもなく、『女であること』それのみなのだ。そのような女を枠にはめることを女が率先して行っている! ひどいブラック・ジョークではある

    手厳しい考察、面白く読ませて戴きましたe-234

    >製作スタッフの影の狙いは、そうした「男本位の社会体制」にのっかったラブロマンスが、ポリティカル・コレクトネスをすんなりとすり抜けてしまうことを、それと同時に映画がヒットすることを、全世界にアピールすることではなかったのだろうか。

    製作スタッフ側にはそこまでの作為はなく、ただ浅はかだったのではないでしょうか?考えが及ばなかったというか・・・。

    NoTitle

    美女と野獣(アニメ版)はだいぶ昔に観ました

    >フェミニストを怒らせること

    言われてみれば確かにその通りですねw
    3つの選択肢しかないのなら、そりゃ理想を選びますわなw
    少しでも良い方を選ぶのは人間のサガでしょうし

    まぁ、現実に牙を剥かれて理想を奪われかけるわけですが、個人的にはイマイチ感情移入できない作品ではありました

    そういえば、乱歩先生の鏡地獄は読んでたことを思い出しましたw

    ええ、あれは確かに変態が変態的なことをやってるだけですねw
    最後は発狂しちゃいますが、ある意味誰にも害がないですし、本人も幸せでしょうし

    いんぢゃね?って思っちゃう自分がいますw

    NoTitle

    アニメ版とミュージカルしか見てないのですが、そういう見方もあるのかとなるほどなるほどと思いました。

    ガストンはあまりにも一方的な引き立て役すぎてかわいそうと思いました(^-^; ハリウッド的テンプレマッチョヒーローでは本好きベルのお眼鏡にはかなわないのよって意図は分かるんですけど。
    ガストンそこまで悪くないよねって思うところも結構あった(笑)

    知性や好奇心が妻になってからは役に立たないjかどうかはこれからのベルと野獣……っていうか王子次第ではあると思いますが、『女を追い込むのは女』という構図になっているというご指摘には『おお』と驚き、また納得いたしました。

    グリムには『白雪姫』『ラプンツェル』など母と娘のすごく暗い心理に突っ込んでる話がありますが、ペローもそうなのかな。
    そう言えばシンデレラも普及版はペローが元でしたっけ。いわゆる『お姫様もの』全般を疑えば疑える気もしますね。
    と思うと、こういう民話を語り継いだヨーロッパ人の家庭の闇ってどんなものだったんだろうとか想像が広がりました。

    Re: 鉦鼓亭さん

    いえいえ。脳細胞にはいい刺激でありました(^^)

    考えてみればそれほどディズニー映画を見ていないのでうかつなことはいえませんが、エマ・ワトソンは行動的なヒロインを見事に演じてましたなあ。

    これは原作読んでみないとダメかな(^^;)

    NoTitle

     ポール・ブリッツさん、こんばんは
     観て下さり、ありがとうございます!

    血圧の上がる時間にしてしまい、ごめんなさい。(汗)

    ディズニー的には、それまでの(「白雪姫」とか)ヒロイン像から現在のフェミニズムに考慮した依存性の少ないヒロインへの転換点だったみたいです。
    旧タイプと現タイプが、まだ混在したヒロインがベルなのかな。
    まぁ、元々は野獣がヒロインを変える話だったのが、ディズニーアレンジでヒロインが野獣を変える話になったのですが。

    これに懲りず、企画への参加を続けて頂ければ幸いです。
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