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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ31位 野獣死すべし 大藪春彦

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     いわずと知れた、国産のいわゆる「ハードボイルド小説」の代表作であり、乱歩が激賞したアクション小説である。大学生だった昔に読んで、結構面白かった覚えがあるが、いま読んだらどうだろうか。というわけで、古本屋の棚で買ってきたのを再読した。すごい小説であった。とんでもない中二病小説なのである。デビュー作としては気恥ずかしくなるほどの、「俺SUGEEEEE!」と「俺TSUEEEEEE!」のカタマリ。主役の伊達邦彦という男がいかに強くてタフで顔が良くて頭が良くて生まれが良くて芸術的なセンスがあって幾たびもの生命の危険を超えるほど運がいいか、ということが延々と書いてある。それが昭和三十三年の作品だから恐れ入る。

     それにクラクラしてきたころから、話が犯罪小説になってくる。これがまた、昭和三十三年の作品としてはマニアックなディテールにこだわった、オタク趣味丸出しの犯罪小説なのだ。そこでは「主人公補正」以外に形容する言葉すら出てこない「俺SUGEEEEE!」「俺TSUEEEEEE!」の連発により、伊達邦彦はあれよあれよという間に大金を獲得するのだ。その過程において山のように人が死ぬのはもちろんである。

     警察の捜査をかいくぐって伊達邦彦がアメリカ留学という形で逃亡するまでを読み終えると、読者としては呆然とするしかない。いや、まさに大藪春彦と伊達邦彦は、ライトノベルの元祖であった。果てしなく肥大した「俺」の全能感と自己陶酔、快楽を中心とする世俗的な欲望の全面的肯定、自分のこだわりを誇示する手段のためなら目的を選ばない行動原理(誤記にあらず)、これで現代のラノベにないのは「美少女」くらいのものである。

     つまり、伊達邦彦というやつは、女にはストイックなのかな、と思って、続編の「野獣死すべし 復讐編」を読んでみると、「俺SUGEEEEE!」と「俺TSUEEEEEE!」はそのまま、今度は出てくる女という女と関係を持ちまくる。関係を持つだけでなく、関係を持った女は残らず責任をとって殺す、という、「タフ」とか「非情」とかを通り越して「異常」な振る舞いを見せてきて、もうどうにでもしてくれ、といいたくなってくる。昭和三十年代では、権力や社会に反抗する、強靭な意志を持つ男が「ハーレム」を作る、というのは、「らしくない」と思われていたらしい。

     まあとにかくそういうラノベ的な、昭和三十三年の作品としたらものすごく先見的な小説であるわけだが、これを大学の同人誌から発見して激賞した江戸川乱歩という人はほんとうにたいしたものである。もし、乱歩が発見していなかったら、日本の娯楽小説はずいぶんとつまらなくなっていたことだろう。いや、同年デビューの高城高がメインになってハードボイルド界を引っ張っていったとしたら……そういう宇宙も興味あるなあ……。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくさん

    知らんし見とらんがなそんな映画(^^;)

    NoTitle

    ♪うっごく ひょぉてきー 狙いをつけてぇー、しか記憶ありません(爆)

    Re: 面白半分さん

    とりあえずベスト100走破のために「蘇える金狼」2冊を古本屋で買いましたが、今読むとなるとどうなのかなあ。大学のころ読んだときはなかなか面白かったのですが……。

    柳生一族も、五味康祐「柳生武芸帳」以来すっかり悪役になって……(^^;)

    NoTitle

    これだけメジャーながら大藪作品は一つも読んでいません。
    今なら読んでみてもいいかもなんて思いました。
    高城高は読んでいるのに。


    回転寿司評論家なら柳生九兵衛ですな。

    Re: ECMさん

    野獣牛兵衛ですか。(笑)

    なんかそういう主人公の出てくる漫画があったようななかったような。(笑)

    NoTitle

     最初映画のTVCMを聞いたとき「柳生死すべし」に聞こえました。
     それじゃ子連れ狼だよ(笑)
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