東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ33位 なめくじ長屋捕物さわぎ 都筑道夫

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     大学生のころ、図書館に置いてあった。とはいえ都筑道夫のこのシリーズ、何冊もあるうえに、どこから読み始めればいいのかわからなかったので敬遠していた。途中適当にパラパラめくってみたものの、それほど感心はしなかったように思う。20年ぶりに本腰を据えて再読。うまい具合に光文社から全作が文庫本で再刊されていたので、短編しかないのを幸い、全作まとめて読んでみることにした。

     面白かった。江戸時代を舞台に本格謎解きミステリをやる、という試みは大成功である。都筑道夫本人としては、半七捕物帳の精神を生かした作品を、というつもりだったろうが、都筑道夫自身の博覧強記の暴走と、シリーズものとしてのワンパターンさを愛する心と、同時に何の新しいこともしようとしない悪しきワンパターンということを許せないプライドとが複雑に絡み合い、読んでみれば「毎度おなじみの登場人物が同じようなことをしているのに、読んでみると『どうして毎回こんな変なことを思いつくのだ』という展開」という、まるでエドワード・D・ホックのシリーズ探偵の短編集を読んでいるような気分にさせられるのである。

     初期のころに目標にしていた『江戸時代という舞台設定でしかできないトリックとロジック』ということでは、第二短編集『くらやみ砂絵』に収録されている「天狗起し」が、捕物帳の枠を飛び越えて、日本のミステリ史の中でもひとつの到達点とでもいうべき超絶技巧の作品になっているのだが、あるときは一冊丸ごと落語のパロディとか、あるときはミステリ作家の立場から佐々木味津三「右門捕物帳」をネチネチと批判してみるとか、あるときはトーマス・カーナッキのごとく幽霊退治に乗り出してみたり、あるときは時代小説の王道であるチャンバラをしてみたりと、もうここまでくると、ネタに詰まったとかそういうのではなく、融通無碍というか、この「なめくじ長屋」のフォーマットで試せるものは全部試そう、と考えているとしか思えない。そしてそれをいかにも「やすやすと」やってのけているように読者に思わせるのが都筑道夫の都筑道夫たるゆえんである。

     それぞれ短編集2冊を合本した分厚い文庫本6冊に収録された全78話を読んだ後でも、作者が死んでこのシリーズが終わったことが信じられない気分である。来月号の小説誌を読めば、ちゃっかり新作が出ているのではないか、などと思ってしまう。そして現代ミステリ界が必要としているのはまさにその「なめくじ長屋」の新作なのではないか、と、2012年版の「東西ミステリーベスト100」にランクインした作品の中で「江戸時代」が舞台の作品が「半七捕物帳」しか存在しないことを確認して思うのである。古き良き昭和がとか大正がとか明治がとかいうのにどうこういうわけではないが、これって日本人として恥ずかしいことなのではないか。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    クセがつよいですからね都筑先生の文章。

    なめくじ長屋と退職刑事を全部読みましたが、中には少々読んでいてつらい作品もありました。玉石混交というか、「玉」がすごいので読み落としができないのがこれから読む人にはつらいような気がします。

    でも「傑作選」を編んで済ます、というのも、都筑先生のミステリとしてはどうかと思うのもまた事実で……。読者泣かせでありますね(笑)

    NoTitle

    私はいまいち都筑先生の作品は苦手です。
    「毎度おなじみの登場人物が同じようなことをしている」の部分です。
    まだまだ読ん込みが浅いようであります
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