東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)
日本ミステリ35位 猫は知っていた 仁木悦子
中学生のときに最初に読んだが、そのときはつまらないミステリだとしか思えなかった。驚天動地のトリックが使われているわけではなく、ユーモア・ミステリの割に笑えない作品、という印象しか残っていない。
さて、それから三十年くらいぶりの再読である。ポプラ文庫からの再版を入手して読んだ。結構根強い人気はあるらしい。
読んだ感想であるが、思っていたよりははるかによくできたミステリだった。よくいうコージー派を日本を舞台にやってのけた作品であり、作者である仁木悦子は、たしかにコメディリリーフとして、ワトスン役の仁木悦子という人物を出してはいるが、ユーモア・ミステリを書くという発想はなかったであろう。どちらかといえば、アガサ・クリスティーの世界に近い感じがする。
とはいえ、これが1985年版で35位、2012年度版で77位のランキングに見合うミステリか、と聞かれたら、ううん、と考え込んでしまうのも事実。少なくともわたし好みの作品ではない。2012年度版でこれを入れるのなら、まだしも戸川昌子か夏樹静子のほうがミステリ的にも冒険しているしまだ妥当なのではないかと思う。
どうも仁木兄妹は、兄の雄太郎も妹の悦子も、常識人すぎて好きになれないんだよなあ。最初に読んだ作品が悪かったのかな。短編「弾丸は飛び出した」という強烈なインパクトを持つ不可能犯罪ものだけど、それで過剰な期待をして見事に裏切られた経験があるので、ネガティブイメージが先行しているのかもしれない。内容は忘れてしまったが、仁木兄妹ものでは「林の中の家」も読んだけれど、あれも陰惨な作品だった気がする。
否定的なことは書いたけれど、本作はかっちりとしたロジックでもって、ひとつの家庭で起こった事件を描いた堅牢な作品でありながら、ワトスン役である仁木悦子のはつらつとした語りで非常に読みやすく仕上がっている、「トリックよりロジックを」という都筑道夫の主張を先取りしたかのようなよくできた作品である。実質上、新人作家の登竜門としての江戸川乱歩賞としては最初の受賞作であるこれを書いたとき、作者の仁木悦子は、4歳の時に発症した重度の胸椎カリエスで実に25年間にわたって寝たきりの生活を送っていた。よくもまあこんなみずみずしい作品を書けたものだ。
これは仁木兄妹ものをシリアスなミステリとして読み直すべきなのだろうか。図書館にある全集にまとまっていることだし。うーん、どうしよう。宿題にしておくことにしたい。
さて、それから三十年くらいぶりの再読である。ポプラ文庫からの再版を入手して読んだ。結構根強い人気はあるらしい。
読んだ感想であるが、思っていたよりははるかによくできたミステリだった。よくいうコージー派を日本を舞台にやってのけた作品であり、作者である仁木悦子は、たしかにコメディリリーフとして、ワトスン役の仁木悦子という人物を出してはいるが、ユーモア・ミステリを書くという発想はなかったであろう。どちらかといえば、アガサ・クリスティーの世界に近い感じがする。
とはいえ、これが1985年版で35位、2012年度版で77位のランキングに見合うミステリか、と聞かれたら、ううん、と考え込んでしまうのも事実。少なくともわたし好みの作品ではない。2012年度版でこれを入れるのなら、まだしも戸川昌子か夏樹静子のほうがミステリ的にも冒険しているしまだ妥当なのではないかと思う。
どうも仁木兄妹は、兄の雄太郎も妹の悦子も、常識人すぎて好きになれないんだよなあ。最初に読んだ作品が悪かったのかな。短編「弾丸は飛び出した」という強烈なインパクトを持つ不可能犯罪ものだけど、それで過剰な期待をして見事に裏切られた経験があるので、ネガティブイメージが先行しているのかもしれない。内容は忘れてしまったが、仁木兄妹ものでは「林の中の家」も読んだけれど、あれも陰惨な作品だった気がする。
否定的なことは書いたけれど、本作はかっちりとしたロジックでもって、ひとつの家庭で起こった事件を描いた堅牢な作品でありながら、ワトスン役である仁木悦子のはつらつとした語りで非常に読みやすく仕上がっている、「トリックよりロジックを」という都筑道夫の主張を先取りしたかのようなよくできた作品である。実質上、新人作家の登竜門としての江戸川乱歩賞としては最初の受賞作であるこれを書いたとき、作者の仁木悦子は、4歳の時に発症した重度の胸椎カリエスで実に25年間にわたって寝たきりの生活を送っていた。よくもまあこんなみずみずしい作品を書けたものだ。
これは仁木兄妹ものをシリアスなミステリとして読み直すべきなのだろうか。図書館にある全集にまとまっていることだし。うーん、どうしよう。宿題にしておくことにしたい。
- 関連記事
-
- 日本ミステリ36位 サマー・アポカリプス 笠井潔
- 日本ミステリ35位 猫は知っていた 仁木悦子
- 日本ミステリ34位 追いつめる 生島治郎
スポンサーサイト
もくじ
風渡涼一退魔行

もくじ
はじめにお読みください

もくじ
ゲーマー!(長編小説・連載中)

もくじ
5 死霊術師の瞳(連載中)

もくじ
鋼鉄少女伝説

もくじ
ホームズ・パロディ

もくじ
ミステリ・パロディ

もくじ
昔話シリーズ(掌編)

もくじ
カミラ&ヒース緊急治療院

もくじ
未分類

もくじ
リンク先紹介

もくじ
いただきもの

もくじ
ささげもの

もくじ
その他いろいろ

もくじ
自炊日記(ノンフィクション)

もくじ
SF狂歌

もくじ
ウォーゲーム歴史秘話

もくじ
ノイズ(連作ショートショート)

もくじ
不快(壊れた文章)

もくじ
映画の感想

もくじ
旅路より(掌編シリーズ)

もくじ
エンペドクレスかく語りき

もくじ
家(

もくじ
家(長編ホラー小説・不定期連載)

もくじ
懇願

もくじ
私家版 悪魔の手帖

もくじ
紅恵美と語るおすすめの本

もくじ
TRPG奮戦記

もくじ
焼肉屋ジョニィ

もくじ
睡眠時無呼吸日記

もくじ
ご意見など

もくじ
おすすめ小説

もくじ
X氏の日常

もくじ
読書日記

~ Comment ~
Re: 面白半分さん
きっちりとしたいい謎解きミステリですよね。ところどころに「赤い館の秘密」のリスペクトなんかが入ったりして。
仁木兄妹シリーズは復刊されて全作が読めるのはいいのですが、あまりに事件が地味すぎるきらいがあるので、手を付けようかどうか今も迷っています。
仁木兄妹シリーズは復刊されて全作が読めるのはいいのですが、あまりに事件が地味すぎるきらいがあるので、手を付けようかどうか今も迷っています。
NoTitle
家ではママさんが文庫本を可能な限り集めています。
「猫は知っていた」をラジオドラマでなんとなく聞いていて、え?これ、ミステリーだったんだ!と驚いたのが収集のきっかけだそうです。
書かれた時期が古いせいで古さが目立つ部分も有りますが、サキは、とても品質の良い作品だと思っています。
家に有る作品はみんな読んでしまいました。
「猫は知っていた」をラジオドラマでなんとなく聞いていて、え?これ、ミステリーだったんだ!と驚いたのが収集のきっかけだそうです。
書かれた時期が古いせいで古さが目立つ部分も有りますが、サキは、とても品質の良い作品だと思っています。
家に有る作品はみんな読んでしまいました。
NoTitle
本作は勝手なイメージとは違い”本格”であったことに驚きました。
「林の中の家」もやはりポプラ文庫で買っていますが未読です
「林の中の家」もやはりポプラ文庫で買っていますが未読です
- #19368 面白半分
- URL
- 2018.05/05 17:26
- ▲EntryTop
~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Re: 山西 サキさん
https://www.amazon.co.jp/仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻-仁木-悦子/dp/4882931281
https://www.amazon.co.jp/仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻-仁木-悦子/dp/488293129X
https://www.amazon.co.jp/仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻-仁木-悦子/dp/4882931788
https://www.amazon.co.jp/仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻-仁木-悦子/dp/4882931796
「猫は知っていた」は、あの円谷の伝説的なドラマ「恐怖劇場アンバランス」で一時間のドラマにもなりましたが、見た友人の感想によると、「つまらん」だったそうで……さすがにこの内容を一時間では無理だ(^^;)