東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ37位 孤島の鬼 江戸川乱歩

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     どの版で読んだのかすっかり忘れたが、高校時代に読んでムチャクチャ面白かったのを覚えている。いや、あれは横溝正史「八つ墓村」であったか。まあいい。面白いものは面白いのである。以降しばらく読んでいなかったが、ひさしぶりに再読。

     記憶通り、やっぱり面白い。だけれども、あれ、こんなに登場人物少なかったっけか、と思ったのも事実。もうちょっといたと思ったのだが、江戸川乱歩、あまりにもご都合主義にすぎないか、といいたくなるような運命の連鎖でもって、登場人物をゴリゴリ削っていく。今のラノベ作家が書いたら、登場人物の数は倍近くなっていてもおかしくない。それだけの魅力あふれる大ロマンなのである。

     ポプラ社の少年探偵団シリーズは、乱歩のジュブナイルが尽きると、過去の傑作を片端から探偵作家に代作させて無理やり少年探偵団ものにしてしまうという、厚顔無恥きわまりないことをやってぼろ儲けしたらしいが、この作品はさすがに無理だったらしい。だが、この作品のエッセンスは、たしかに乱歩のジュブナイルに直結しているのだ。それが、「大金塊」であり「怪奇四十面相」なのである。この「孤島の鬼」が傑作なのは、異常な殺人事件ゆえでもなく、世界を転覆させようとする陰謀ゆえでもなく、ただ、「いい大人が宝探しのために洞窟探検をして死にそうな目に遭う」という大嘘を大真面目に語り切ったからなのだ。異性同性を問わぬラブロマンスも、残虐な殺人事件も、意表を突く真犯人設定も、ムチャクチャな悪人の陰謀も、その大嘘を成立させるために丁寧に組み上げられた足場にすぎない。そういった意味で、これは乱歩が乱歩らしさを出しながら語った「冒険小説」なのである。

     それをもっと洗練された形で再構成したのが横溝正史の「八つ墓村」であろう。そしてそのエッセンスをしっかりとつかみ取ったのが、脚本家の橋本忍である。彼は、「八つ墓村」という物語に「名探偵」は存在しなくてもいい、という洞察のもとで、すべてを「たたりじゃ」にする大手術を行い、ミステリ風冒険ホラー映画として脚色、映画を大ヒットさせた。もし、橋本忍が「孤島の鬼」の脚本を書いたとしたら、探偵要素を全て取り払って、純粋な冒険ホラー映画にしたはずである。

     まあ、しかし、ほかのすべての乱歩作品が映画化されたとしても、現代においてこれを映画化する人間は……いたよ。東映に「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」という映画があるそうだ。監督は誰かと思ったら、石井輝男だった。うん。あの人ならやりかねん。見たいような見たくないような。見たら絶対、後悔するんだろうけれど。いっそ外国資本で忠実な映画化を……ムリだな。
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    奇形人間はあの人の好みですからねえ。

    カーニバル性ということでは、ブラッドベリなんかと重なるところもあるかもしれませんな。

    blackoutさんの小説のテーマは、精神的に奇形な人間の純粋な愛かもしれませんなあ。

    Re: 面白半分さん

    そういう「見た」ことが勲章になるタイプの映画ってありますよね。

    わたしは「幻の湖」を見て(以下削除(笑))

    NoTitle

    そういえば、乱歩先生はこれ見よがしに、よく奇形な人物を出してきますよねw
    この小説に限らず

    ええ
    確かにご都合主義な感は、この小説に限らず多い気はしますねw

    でも、わりと好きですねw
    その影響を受けてるのか、自分も小説では奇形な人物ばかり書いてます(汗)

    NoTitle

    見ましたよ「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」
    大井町の映画館でした。

    なんだかわからない内容でしたが”見た”という行為に自己満足しました。
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