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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ37位 黒い白鳥 鮎川哲也

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     大学時に、大学の図書館で借りて読んだ。角川文庫は全冊ぞろえをしていた図書館をこれほどありがたく思ったことはない。ステーマンの「マネキン人形殺害事件」を読んだのもあのころだったなあ。で、初読時の感想であるが、やっぱり鮎川哲也の鬼貫警部ものは自分には合わない、というものであった。精緻なアリバイ崩しというやつが、つくづく向いてないと思い知らされただけで終わったのである。

     二十年ぶりに再読。鬼貫ものの「黒いトランク」があまりにも好みに合わなかったからどうか、と思ったら、意外と道具立てが派手で面白かった。鮎川哲也のアリバイ崩しってこんなに面白かったんだっけ、というところである。

     この手のアリバイ崩しを読むときのコツは、やはり、探偵の先回りをしようなどとは考えないことであろう。時刻表チェックはしても無駄であるし、そこらへんは『密室』と何ら変わる所はないな。鉄道ファンは探偵の追跡と推理を時刻表で再確認しながら読むんだと思うんだけど、そういう趣味はないので楽しみがよくわかったとはいわない。

     しかし、この「黒い白鳥」というミステリの場合、そうした時刻表と数字のマジック以外の要素もふんだんにあって、そこらへんが「黒いトランク」に比べてわたしが面白いと感じた要因だと思う。特に、怪しげな新興宗教とか労使関係とか、明らかになってくる人間の物語とか、そこらへんの面白さは明らかに「黒いトランク」より上だ。

     アリバイトリックが好きではないので、この「黒い白鳥」のメイントリックも、それほど感心はしなかった。鉄道に詳しくないからなあ、そんなこといわれてもなあ、という感じである。

     それよりも、再読してわたしが面白く感じたのは、鮎川哲也の稚気というか、フェアプレイ根性だった。なにしろ、真犯人が初登場した時点で、作者は「こいつが真犯人ですよ」と手の内を明かしているのである。実にわかりづらいカードの明かし方ではあるが、これが連載ものであることを考えると、まことに堂々とした態度といわざるを得ない。そこらへんに、あの「薔薇荘殺人事件」と同じ、自作に対する恐ろしいまでの自信と自負が窺えて、さすが大物は違う、と土下座してしまう。

     85年版にはもう一作、鬼貫警部ものの「死のある風景」が70位にランクインしているが、そちらも楽しみになってきた。確かあれはあのブルーバックスの「推理小説を科学する」でボコボコにされていたような覚えがあるが、どんなトリックだったっけ。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    署名記事ではないんですけど、2012年度版の対談で、北村先生や折原先生が書いた記事を告白されています。

    北村先生は、書いた記事をエッセイ集に全編入れているそうで、そこが「はなれわざ」ファンとしては悔しい北村先生の自信の現れなんでしょうねえ……。

    NoTitle

    「東西ミステリー」は署名記事だったんですね。
    北村先生大学生のころですか。
    記事を書かせてもらえる立場にいたんですね

    この本つくづく売ってしまったことが悔やまれます。
    古本で見かけた事一度もありません。

    Re: miss.keyさん

    わたしの守備範囲が広いのではなく、この文春の「東西ミステリーベスト100」の守備範囲がやたらと広いのであります(^^)

    一冊一冊再読するのもたいへんで……(笑)

    白い黒鳥

     黒鳥とは鳥の種類であり、色は二の次三の次。突然変異で白い固体が生まれる事だってあるし、赤い固体が生まれるかもしれない。しかし、種的には黒鳥なのである。つまり何が言いたいかと申しますと、

     ポールさんのミステリーの守備範囲の広さには驚くばかりです。わたくし全然知らんのばかりや・・・

    Re: 面白半分さん

    それは「うんちく」欄の最後ですね。

    うんちくと解説を書いた北村薫先生、よほど悔しかったらしい(笑)

    北村先生の気持ちもわかるけど、東西ミステリーベスト100でのあの人の解説、必要でもないDisりをしているからわたし好きではありません。「はなれわざ」とか「人生の阿呆」とか……。大学生だった若書きとはいえ、うーむ(^^;)

    NoTitle

    「東西ミステリー」では
    ”中身を読まずして「黒い白鳥」という題名の矛盾をいう人がいる”
    っていうような紹介から始まってなかったですか?

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