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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ40位 弁護側の証人 小泉喜美子

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     世の中には再読のきくミステリと再読のきかないミステリがあるのは事実であり、再読のきかないミステリの代表選手が、この「弁護側の証人」であろう。それほどまでに、この小説を普通に前情報なしで読んだときの驚愕はすさまじい。前情報ありで読んだ人間だから自信を持っていえる。トリックを知ってしまったらぶちこわしの作品なのだ。

     この本を読んだのは、大学在学中である。入手困難だった集英社文庫版を古本屋でやっとのことで手に入れ、胸をワクワクさせながら読んだ。あらすじは、それまでに何度となく読み返してボロボロになっていた「東西ミステリーベスト100」でほとんど暗記している。そして……つまらなかった。なんだこの二時間サスペンスは。小泉喜美子は稀代のテクニシャンだと聞いていたが、ちっとも面白くないではないか。その幻滅から、しばらくSFに逃避していたくらいだ。

     それから二十年して悟った。小泉喜美子は悪くない。また、若いわたしも悪くない。悪いのは、「東西ミステリーベスト100」という本を編集した文藝春秋である。

     もし、何かの拍子で、古本屋で古い85年版の「東西ミステリーベスト100」を入手したら、読む前に、250ページと251ページをヤマトのりでも木工用ボンドでも写真用セメダインででもいいから厳重に糊付けし、ページがめくれないようにしておくべきである。そこを読んでしまったらもうアウトなのだ。まったく、この本には編集者というものが存在しなかったのだろうか。あまりといえばあまりである。

     種と趣向を知ってからこの「弁護側の証人」という小説を読んでも、驚くことは不可能だ。あくまでも作者の仕掛けたトリックを味わうため、と割り切って再読しようとしても、知ってしまったらどうしても二時間サスペンス原作としか思えない。図書館から借りてきた今、まっさらな気持ちで再読することすら許してくれないという小泉喜美子の無類のテクニシャンぶりと残酷な真実とを突きつけられ、正直、泣きたい気持ちである。

     これと全く同じ体験をしたのが、相互リンクしてくださっている「いぢわるこみ箱」のこみさんである。わたしよりも悲劇的なことに、こみさんは「これから謎ときにかかる一ページ手前」で「東西ミステリーベスト100」の解説を読まれたそうなのだ。

     その結果がこれである。
    s-100201.jpg©こみ

     同志よ、わたしにも文春のビルをぶっ壊させろ。くくくく(泣く)。
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    クリスティ先生の場合は、作者の伏線の張り方や、奇術でいう「あらため(例えばコインマジックで、どちらの手にもコインは持っていませんよ、ということをアピールする技術)」のうまさとかを鑑賞するという楽しみ方があって、わたしは「ABC」を何回読んだかわかりませんが、そのたびににやにやしてます。

    しかしこの「弁護側の証人」ではトリックの隠し方が名人芸で、トリックを知って読み返すと、あまりの「自然さ」に、つまらない二時間サスペンス原作としか思えないのです。

    もう読者泣かせ(^^;)

    乱歩先生の「暗黒星」は小学生の檻にポプラ社版を読んだだけですが、乱歩先生のあれは、通俗スリラー路線での「様式美」です(笑)

    NoTitle

    個人的に再読がきかないミステリは、クリスティ先生のABCとオリエント急行、そして乱歩先生の暗黒星かなと思ったりしますです

    1度わかってしまうと、作者が「ほれここ、ここw このタイミングだってばよw 意図的に出てこないような展開にしてあるのだよw 灯台下暗しってことわざがあんだろ?w 1番身近にいる奴が1番クロなのさw おかしいと思わないか?なんで主人公をせせら笑うように、先回りするように殺人が起きるのかw」って言ってるような感じですしw

    Re: こみさん

    あのやらかしっぷりはまさに芸術ですな。(^_^;)

    書いちゃいけないことが全てまんべんなく書いてありますからねえ(^_^;)

    藤原宰太郎よりタチが悪い(^_^;)

    NoTitle

    絵を使っていただいてありがとうございます。
    にしても、よみがえるこの怒り。
    こればっかりは本当に「書いたやつはアホなのか」と思いましたよ。
    損害賠償に匹敵する事項ですぞ。
    とりかえしのつかないこととはこのことですわ。
    ふがー

    Re: 面白半分さん

    シャドー81でも匣の中の失楽でもやらかしてしまった文春の東西ミステリーベスト100ですが、「やらかした」ことではこれが最大の失策でしょう。なにせあらすじの冒頭から終わりまで、まんべんなくやらかしてくれていますから(^^;)

    この手のトリックが珍しかったため、あらすじ書いた人が、どこが読みどころなのかわからなかったんでしょうなあ。それか、結末から読んだか……いずれにしろ、担当者は「わかる人」を動員してほしいものです。

    小泉喜美子が墓から蘇って獣人化して暴れるくらいのやらかしですからねえ。

    さすがに2012年版では配慮して書いてありました。(笑)

    NoTitle

    「東西ミステリー」やっちまったのか。
    「弁護側の証人」は既読なのでむしろ250頁を読みたい
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