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    ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1985年(2)

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     PB-100でRPGができる!

     家に着くなり修也はそのプログラムを入力し始めた。いくら長いといっても、当時のポケコンのプログラムである。PB-100の最大のメモリは変数域を入れてもわずか2KBにすぎない。雑誌を広げてキーを押せば、小学生でも3時間あれば入力は終わった。

     修也は震える手でプログラムを実行した。

     「THE FIGTER」は、ファンタジーもののRPGである。異世界に飛ばされてしまったプレイヤーは、その世界の住人たちと戦い、交渉し、金貨を溜め、町で休息し、情報を買い、一刻も早くこの世界から脱出しなければならない。

     胸を躍らせながらゲームに取り組んだ修也だったが、しだいに「あれ?」と思い始めた。なにか、自分の想像していたものと違う、そんな感じを覚えていったのである。

     まずは戦闘システムである。とりあえず他のキャラクターと遭遇したら、「戦う」「話す」「逃げる」の3つの選択肢の中から自分の行動を選び、それによってゲームを進めていくのだが、「話す」コマンドをいくら入力しても、相手は何の情報ももたらしてくれないのだ。単に、その場の戦闘が回避できるだけである。

     修也は思った。

    『これじゃ、「逃げる」ことと何も変わらないじゃないか!』

     次に、戦闘であるが、戦闘を行うと、プレイヤーキャラクターは体力がかなり減少する。減少した体力は町で回復させられるのであるが、回復に使える資金は、このゲームでは非常にシビアに設定してあった。

    『これじゃ、何もできないうちにすぐに死んじゃうじゃないか!』

     現代のゲームに慣れ親しんだ人間には意外かもしれないが、1985年当時のコンピュータRPGには、そうした「プレイヤーにはどうしようもない点における難易度の高さ」が存在した。今となっては信じられないかもしれないが、当時は「クソゲー」という言葉はほぼ存在しなかった。ゲームは、神のごときプログラマー様と、至高神のごときソフトハウス様の手になるものであり、遊べるだけありがたいものであり、そのような芸術作品にケチをつけるなどもってのほか、だったのである。そして、そのようなゲームソフトにケチをつけていいのは、プログラムを改造して、哀れなプレイヤーに救いの手を差し伸べてくれる、「プログラムを組む能力がある人々」だけだったのだ。

     修也の気に食わないことはもうひとつあった。

    『戦ってもお金が手に入らない相手から逃げられない! どうしろっていうんだ!』

     修也はまだ、RPGというゲームのシステムをよく飲み込んでいなかった。経験値を貯めて強くなる、ということがよくわかっていなかったのである。

     かくして、このゲームにおける修也のプレイは、金銭欲しさに序盤から強そうな相手に突っ込んでいく、というかたちをとりがちになり、その結果として、修也のゲームした後は死屍累々ということになるのであった。もちろん、修也のキャラクターの死体である。

    「これならゲームブックのほうが面白いじゃないか!」

     文庫本一冊の情報量をポケコンの2KBのゲームと比較するのは酷であろうが、修也にとっては裏切られたような思いだった。しばらくの間、無言でPB-100を見た後、修也は決断を下した。向こうがその気なら、こっちもこっちである。

     簡単なBASICの改造ならば、修也にもできた。修也はパラメータを見て、ファンタジー世界からの出口を捜し、そこから出た。

     感激も感動も全くないゲームエンドだった。これが修也のはじめてのコンピュータRPG体験だった。先達はあらまほしき事なり。
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    ~ Comment ~

    Re: 風月時雨さん

    まあ、2KBしかメモリのないポケコンの、読者投稿ゲームでしたからね。充実しているほうがおかしい(笑) 

    でも、市販ゲームのほうが、バランスもなにもあったもんじゃないゲームの割合が多かったかな? 1985年に出たアクションRPGに「真のエンディング」があることがわかって、動画がupされ、当時のユーザーが皆びっくりしたのが、21世紀に入ってからだという実話が(笑)

    NoTitle

    こんにちは。「話す」と「逃げる」が同じだとテンション
    下がりますね…。そして回復資金のシビア設定…!
    何もできないうちにすぐ死んじゃうのはガビーン!…という
    感じです。昔のゲームはそんなに難易度が高かったのですね!

    先日はコメントありがとでした!ミュウミュウはかわいい
    外見に似合わず、けっこうハードな所もありましたね。
    局はテレ東系列でしたね。ミュウミュウもご存じと知って
    嬉しいです!ハグプリはチャリート、机がなくなってたの
    怖かったですね…子どもが会社にガクブルする可能性も…!
    チャラリートあの後はyoutuberとして活躍しているようで
    ほっとしました。では読んでくださり、ありがとでした☆

    Re: blackoutさん

    アクションゲームは反射神経以上に「慣れ」と「パターンへの対応」が問われますからねえ。

    逆をいえば「慣れ」てしまえば、反射神経がそれほどでもなくてもたいていは優位に進めることができる、という。

    スト2以降のゲーセンのゲームではあまりにそれが行き過ぎた感がありましたなあ。それがゲーセンの凋落の一因じゃないかと思っております。

    Re: LandMさん

    早くからそのことに警鐘を鳴らしていたのが、すがやみつる先生の隠れた名作「マイコン電磁ラン」だったんですけどね。

    ゲームセンターあらしでないとクリアできないゲームなんて意味があるのか、って。

    いろいろとすがや先生も「あらし」のヒットで思うところがあったんでしょうなあ……。

    NoTitle

    そうですね
    確かにこの時代のゲームは、訳のわからない難易度の高さがあった気がしますw

    そして、無意味に理不尽っていう(汗)

    まるで現実世界の理不尽さに近いかなとw

    ただ、RPGはレベルアップしてパラメータを上げられるだけいいかなって思ったりもします

    格ゲーだとそれができなくて、デフォルトの能力がモロに物をいう感じですし

    NoTitle

    まあ、昔は難易度調整なんてあってないようなものですからね。
    クリアできなくて当たり前ですからね。
    今ではそんなゲームが出てきたらフルボッコされますけど。
    (*´ω`)

    Re: 椿さん

    満足できるコンピュータRPGに出会ったのは想像よりは早かったりします(笑) まあ内容は特殊ですが(笑)

    しかし猫も杓子もRPGだったなああのころ……。

    NoTitle

    あああああ…… 容量の壁……(^-^;
    それでは確かに出来ることが限られ過ぎてそんな感想になってしまうかも。修也くんが満足できるコンピューターRPGに出会えるのは何年後になってしまうのか。

    ケチをつけるなんてとんでもないというのはどのコンテンツにもあった気がしますね。小説でも何でも、需要に対して供給が少なかったのでしょうか。
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