東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ44位 八つ墓村 横溝正史

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     いかなるミステリファンも全く弁護できない、金田一耕助の最大の失敗事件。特に、金田一耕助が最初から犯人を絞っていた、という弁明が本当ならば、ダメじゃん、としかいいようがない不始末である。本人が言う通り、なにもしなくても事件は解決していたであろう。それもこれも、名探偵以外の人間のファインプレーのおかげであるし、金田一耕助でなく怪盗X・Y・Zと三津木俊助と探偵小僧が来ていた方が解決は早かったかもしれぬ。

     と書いたが、そんなことはこの雄編の前には些事にすぎない。サスペンスとしてはこの小説は実に面白いからだ。シチュエーションとしては、語り手であり主人公である男による、前半「レベッカ」、後半「ソロモン王の宝窟」というゴシックロマンなのだ。特に前半のレベッカぶりは、主人公・寺田辰弥の立場がじわっじわっと悪くなっていくところなんか面白くてたまらない。

     最初に読んだ高校生のときは、後半の洞窟での追いつ追われつのシーンが楽しかった覚えがあるが、今こうして読み返してみると、江戸川乱歩「孤島の鬼」の洞窟のほうが印象的だった。それでも大の大人が宝を探して洞窟探検をするのはその筋の人間にとっては重要な萌えポイントである。

     というわけでふたたび読んで堪能したわけであるが、思い出されるのはあの怪作、つのだじろう版「八つ墓村」である。一部の意見として「再版不可能」とかいわれていたが、なにをいうか、だ。堂々とコンビニで売られているではないか。とほほ。

     立ち読みでパラパラめくってみたが、うん。これは……原作小説よりも面白くないか? 金田一耕助はチビでメガネで洋装であるが、映画なんかよりもよほどこの小説のゴシックロマン的側面を捉えている。悪人の顔がほんとに野獣みたいなのはカルト映画みたいでさすがだ。それに結末も、こっちのほうが盛り上がる。

     そういうわけで、この分厚い小説にチャレンジする勇気がない人は、つのだ版「八つ墓村」を読みましょう。今ならコンビニで買えます。買って読んだ後は、家族に見られないところにしまっておきましょう。そうでもしないと、あなたが「そういう人」に見られてしまうおそれがあります。

     それにしても……半世紀以上が過ぎてもこの小説とセットで語られてしまう津山事件の被害者……浮かばれないなあ。なにしろ地方自治体からして肝煎りだもんなあ。小説が面白いから悪いのです。南無。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    影丸譲也版は読んだことありませんが、やっぱりきついんでしょうな(笑)

    いま描くとしたら誰かなあ。あのタッチで(笑)

    楳図かずお先生が書いたらものすごい傑作になるのとちゃうかな(笑)

    NoTitle

    前もコメントさせていただいたかもしれませんが
    私が持っていたのは影丸譲也版、
    という事を再確認しようと画像検索したらいろんなのが出てくるわ出てくるわ。
    「そういう人」に見られますね。

    Re: miss.keyさん

    語り手を主人公にしたサスペンスとして読むとこれ以上に面白い本はないのですが、人間がほんとにバタバタ死ぬから、金田一耕助に「実はあの人を前々から探っていたのです」といわれても、というやつですな(笑)

    このことは東野圭吾「名探偵の掟」でもネタにされていました(笑)

    1971年版のテレビドラマで、この作品から金田一耕助を切ってしまうという判断をしたNHK、度胸があるというかなんというか(笑)

    金田一シリーズとは知らず・・・

     いえね、最初にこの作品に触れたのは1977版の映画でした。ショーケンが主人公の様に展開し、渥美清演じる金田一はどっちかと言うと脇役っぽい。作品としてはこれが強烈に面白いわけだが、ミステリーと言うよりホラーに近い。後になって金田一シリーズであったと知ったときはたまげた(笑
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