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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ48位 りら荘事件 鮎川哲也

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     大学のころに図書館で読んだ。実によくできた謎解きミステリだと思った。鮎川哲也は鉄道アリバイ崩しよりもこっちの路線のほうがいいな、などと思ったものだ。それ以来二十年、トリックも犯人も忘れた上で再読。

     あのときと同様、めちゃくちゃ面白かった。ところどころの記憶はあったものの、だからといって犯人を当てるのにつながらないというもどかしさもあったが、謎解きミステリとはそのもどかしさを楽しむ娯楽小説だから別にいいのである。

     連続殺人もので、容疑者が三人まで絞られてもまだ当てられないというのはミステリとしてよくできている証明である。そのくらいに人がバタバタ死ぬ。やってくれるではないか。そして満を持したように現れる、神のごとき知恵を持つ名探偵・星影龍三が……これが印象が薄いのだ。

     あからさまにネタバレ込みでいってしまえば、この事件、別に星影龍三が出なかったとしても、それなりに解決してしまう事件なのである。彼が出てくるのは、警察が異常なほどにへまを重ねるからだ。ごく普通の警察ならば、本書で星影龍三が指摘する点を調べていないわけがないので、近年の警察小説に慣れた人間からすると、そういうところに「粗」を感じてしまうのも事実。

     もっとも、あまり目くじらを立てすぎると、例の「簡単な殺人法」におけるレイモンド・チャンドラーや、講談社ブルーバックスの「推理小説を科学する」になってしまうので、読者はおおらかな気持ちで鮎川哲也のフェアな謎解きを楽しめばいいのではないかと思う。本書におけるこのフェアプレイぶりはそうとうなものだ。

     鉄道ミステリが嫌いで、鮎川哲也のミステリを読んでいない人にこそ読んでもらってそのクリアな論理を楽しんでもらいたい小説。個人的にはコナンや金田一少年が活躍してもおかしくないような舞台設定とトリックなので、次は誰が死ぬのかというサスペンスフルな点も含め、鮎川哲也の長編の中でいちばん面白いと思う。そういえば犯人逮捕の瞬間も、金田一少年のような感じだったな。

     図書館の棚を見ても、鮎川哲也のミステリがずらっと並んでいる。こういう状態が永遠に続くだなどとはとても思えないので、今が積極的に鮎川哲也を読むチャンスだろう。たぶんそう遠くないうちに、また本格ミステリ冬の時代が来るのではなかろうか。そんなことをぼんやりと考える夜である。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    鉄道ミステリをどうとらえるかでしょうね。

    一時期は鮎川先生も密室ばかり書いていたみたいで、そのころの短編集読みましたが面白いですな。

    アリバイ崩しより密室だなあわたしは。

    鮎川先生の怪奇探偵小説については……まあ、そんなものもあるということで(^^;)

    NoTitle

    りら荘については鮎川哲也はこんなのも書くんだ、というむしろ否定的な印象でした。
    よって読んだときは違和感が残りました。
    いまこそ再読しなければならぬミステリですね。

    怪奇探偵小説も短編では書いていらっしゃるので
    結構フレ幅は広いようですけどね

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