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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ49位 押絵と旅する男 江戸川乱歩

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     最初に読んだのは大学時に、なにかの雑誌のミステリ特集号に採録されていたもの。あまりいい作品だとは思えなかった。今回は、電子書籍で買った江戸川乱歩の小説集に入っていたバージョンを読んでみた。

     正直な話、ミステリとしても、怪奇小説としても、ファンタジーとしても、変態小説としても、乱歩が自薦するほどいい出来の作品とも思えない。乱歩が書いた、「乱歩作品のパロディ」みたいに思える。なんというか、「残念なブラッドベリ」という印象が強いのだ。乱歩が自薦していなかったとしたら、この49位という位置につけることができただろうか、はなはだ疑問だ。

     ではあるが、乱歩が自薦した気持ちもわからないでもない、というのもまた真実である。おそらく、乱歩は、こういう、あわあわとした幻想世界を描く作家たちを羨望する気持ちもあったのだろう。もしかしたら、「二銭銅貨」から一連の明智ものへ続く水脈も、この幻想世界へ接続するための入り口にすぎなかったのかもしれない。「鏡地獄」や「芋虫」といった一連の異常心理小説はいわずもがなである。

     そのような幻想世界へリンクするための手段という観点から、後期の少年ものを評価できるのではないか、と「怪人二十面相」を読み始めたら、これがもう悔しいくらいに面白く、次から次へとページを繰って読みふけってしまった。「少年探偵団」を読みかけたところで我に返ったが、こんなものを読んだら小学生がミステリマニアになってしまうではないか。それにしても小林少年、記憶にあるよりも有能なやつだった。二十面相にピストルを突きつけるシーンなど、カッコよさに涙が出そうである。それが戦後はああなってしまうんだから、まあ、時代というものはあるんだろう。

     乱歩という人は、とにかく、『迷走する人』なのかもしれない。新しい方向を切り開くパイオニアとしてはこれ以上の人はいないが、いざ植民地経営をするとなると途端に迷走を始める人なのだ。雑誌「幻影城」なんて、迷走のカタマリみたいなものではないか。なにせ生み出した作家が連城三紀彦と泡坂妻夫と栗本薫と田中芳樹である。『迷走する人』だったからこそ、こういう人たちが見いだせたんだろうな。

     いま、ここまで迷走できるシンボル的存在って、なにかあるだろうか? アングラの漫画雑誌が、「売れ線」狙いで同じような作品ばっかりになってしまっている状態では無理か。しかし、良師に出会わずに大成した例というものはまずないし。クールジャパンなんぞとのんきなことをいってられるのもあとわずかかも知れない。
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    ~ Comment ~

    NoTitle

    言われてみれば確かにそうですね(汗)

    押し絵と旅する、は読んだことがありますが、確かに変態的ですな
    ただ、ポールさんの言う残念なってのもわかる気がするんですよね

    たぶん、鏡地獄とか芋虫とか蟲よりもいろんな意味でインパクトが薄いからかなって、個人的には思ったりしますです

    「ありゃ?これで終わり?」みたいな肩透かし的な感があった気がします

    ええ、自分の小説は、これも言われてみればですが、言いたいことはほぼ一貫してるかもですね
    逆にジャンルはあまり意識してなかったりします
    なので、ジャンルを聞かれるといつも答えに困ってたりしますなw

    ここ最近は、ほぼノンジャンルとか純文学かなって勝手に思ってたりしますが、どうなんでしょ?

    Re: blackoutさん

    「押絵と旅する男」は異常な話でして(^^;)

    残酷ではないけれど変態的なファンタジーなんですよねえ(^^;)

    blackoutさんの作品は、いろいろとジャンルは分かれているけど、「ブレ」は少ないと思うんだけどなあ。

    NoTitle

    バランス取るために書いたのかもですね、乱歩先生はこの押し絵と旅する男を
    異常なものばっか書いてると、その反動でたまに普通なものを書きたくなるってことかもですねw

    ええ、異常なものを書くのって思った以上に体力と精神力を使います
    最近、自分も書くペースが遅くなってますし(汗)

    そういう自分も、毎回実験的なものが多いので、たぶんこの迷走するタイプかなって思ったりしますw

    Re: 面白半分さん

    個人的なランキングですが、江戸川乱歩の小説のタイトルでいちばん読者を読みたい気分にさせるのは「お勢登場」ではないかな。内容はほんとにお勢が登場するだけですし(笑)

    NoTitle

    私も正直「押絵と旅する男」の位置付けがわかりません。
    でも題名はいいな
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