映画の感想

    「血槍富士」見る

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     かねてから見たいと思っていた映画であり、「飢餓海峡」と並ぶ内田吐夢監督の戦後の代表作である。

     発音が聞き取りにくいとか聞いていたので、覚悟を決めて見てみた。

     感想。

     めちゃくちゃ面白かった。これはマイベスト級の映画ではないか。「ナイトミュージアム」などとは比較にならん。

     いろいろな背景を背負った人々の旅を描いた悲喜こもごもの(意外とギャグのシーンが多いのだ)ロードムービーが、それぞれのドラマを見事に連関させ、クライマックスの大立ち回りと哀愁を帯びたエンディングに集約されていく。見事なまでの脚本と構成。そしてこの映画のテーマは、「封建制度の矛盾と人間の自由」なのだ。作中の誰もが、封建制度に絡めとられ、自由をつかみとれないままであり、身分制度下では主人は下郎とともに酒を酌み交わすことすらできない、ということに気づかされた主人が自分でもよくわからない怒りのままに剣を抜くシーンで最高潮に達する。

     立ち回りはリアリズムの悪しき影響が出たのか「爽快」とは全く縁のないものだが、それがかえって恐ろしいばかりの緊迫感を与えていてすばらしい。立ち回りで人が何人もばたばた死ぬのだが、それすらも「斬られ損」として「おとがめなし」にしてしまう身分制社会に、命を救われた立場でありながら絶望して去っていく片岡千恵蔵の表情が最高である。

     とにかく素晴らしい映画。物語の暗い異様な迫力はたしかに「飢餓海峡」の方が上だが、のんびりと楽しみたいなら、この「血槍富士」の完成度の高さも捨てがたい。

     すごいよ内田吐夢。すごい。もう今日はほかの映画見たくない。余は満足じゃ。

     寝よう。
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    ~ Comment ~

    Re: 鍵コメさん

    そりゃ―こんなすごい作品を「音が聞き取りにくかった」だけで見逃していく映画ファンの友人がいたら、何とかしてあげたいと思うのが人情じゃないですか(^^)

    なんたってめったに見られない特Aクラスの大物ですしねえ(笑)

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    Re: miriさん

    時代劇のベストを組むと、上位に挙げるマニアが必ず何人かいるので、昔から見たかったんですよ。しかしすごい映画でしたな(^^)

    BS3は、たぶんNHKの技術が高度過ぎたんでしょうね。撮影現場でマイクが拾った音をすべて再現しようとして、聞き取りにくくなっちゃったんじゃないかな、と思います。時代劇専門チャンネルは、感度が悪い録音を使ったので、かえってセリフが聞き取りやすかったんじゃないかな。と推理してます。

    >今年の邦画一位

    まだ四月だじぇ☆(^^;) 気持ちはわかるけど(^^)

    子役の使われ方ですが、たぶん川を泳がされたことと木から落とされたところだと推察しますが、戦後まもなくということと、内田吐夢監督の職人根性と、それから、あの男の子、片岡千恵蔵の実子なんですよ。もし内田吐夢監督が「撮影に明らかに手心を加えていた」なら、現場の空気はだらけたものになり、あの映像は撮れなかったことだろうと思います。たぶんそれも内田監督の計略のうちでしょうねえ。なにしろ「飢餓海峡」で、人気絶頂のコメディアンだった伴淳三郎を執拗なまでにいじめて「打ちひしがれた感じ」を出す作戦を成功させた映画の鬼ですから。それでもカット割れよ、とか思ったけど(^^;)

    小津安二郎の参加にはびっくりしました。やっぱり戦争を生きのびた同志的感情があったのかな。

    もし、今年見たある時代劇が「この首百万石」のことだったら、監督の伊藤大輔も、この映画のクレジットに、小津監督と並んで出てきてますよ。

    伊藤大輔監督のサイレント時代の出世作に「下郎」という、封建制度の矛盾を鋭く突いた時代劇がありまして(当時の社会を批判した「傾向映画」というやつのひとつです)、それ以来、伊藤監督は封建制度の矛盾を「下郎と主人」の関係で描くことに異様なほどの執念なりこだわりなりを見せるようになるのです。多くの時代劇が、伊藤監督の諸作を元ネタにしています。

    この「下郎」という映画が、当時のキネ旬でもベストに入るほどのすごい傑作で人気作だった、と、見た人は口をそろえて言うのですが、悔しいことにすでにフィルムが残っていません。伊藤大輔という人は、モノクロサイレントの映画を撮らせると神がかり的な傑作を撮るのですが、トーキーになると力量が半減し、カラーになるとさらに力量が半減する、という、アメリカのグリフィス監督みたいな人だったのです。力量が四分の一くらいでもああいう見ごたえある映画を撮ることができたということから、全盛期のモノクロサイレントの出来栄えを想像してください。いやほんと。山中貞夫の「百万両の壺」も、伊藤監督が大河内伝次郎をキャスティングして「新版大岡政談」という映画を撮っていなかったら作られることはなかっただろう作品ですので。(お菓子のおまけと思われる断片フィルムしか残っていないけれども、それでもすごいということがわかってしまう映画なのです)

    あと、正確に何としゃべっているか知りたいけれど聞き取りにくかったら、「時代劇専門チャンネル」が入るのだったら、リモコンの字幕ボタンを押せば字幕が出てきますよ。「日本映画専門チャンネル」も同様です。BS3の音声が悪いと聞いたとき、「字幕を……」といおうとして調べたところ、NHKは邦画に字幕は基本的につけないんですな。受信料取って翌年に予算を持ち越してるのにケチですなNHK(´・ω・`)

    こんにちは☆

    ポールさんの記事のお陰で、やっと見られました☆
    時代劇専門チャンネルでオンエアしたんです!

    >発音が聞き取りにくいとか聞いていたので、覚悟を決めて見てみた。

    それがスラスラ聞こえたんですよ~♪

    前はBS3でそれはそれは美しい映像でしたが、
    最初のひと言を聞いて愕然!
    あとはもう諦めて、とうとう削除してしまったけど、

    今回は映像はBS3に比べるとかなり劣りましたが、
    音声は(多少は分かりにくくても)ハッキリと聞こえたんですよ!!!

    これは今回が見るべき時だと思い、最後まで楽しく見ました☆

    >めちゃくちゃ面白かった。これはマイベスト級の映画ではないか。

    ホントにね~
    私は今年見た邦画で一番です!
    きっと今年の邦画1位になると思います☆

    >いろいろな背景を背負った人々の旅を描いた・・・

    以下全て、書かれてある通りです!

    ラストシーンも考えられていましたよね~
    赤鼻さん3人衆も素晴らしかった。

    ただ1つだけ引っ掛かったのは「子役の在り方、使われ方」でしたが
    もう60年も前のこと、仕方ないですよね、と思いました。

    小津さんも参加していましたね・・・
    「東京暮色」ずーんとした後だったので
    本当に感謝の鑑賞になりました。

    永久保存版にします、有難うございました☆

    あ、あと、今年見たある時代劇と、ほぼ同じシーンというか
    言いたいことというか、そんなところもあったのですが
    監督さんは違うし、偶然かどうかも分かりません。
    いつかポールさんと、両作品についてお話しできれば嬉しいです☆


    .
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