風渡涼一退魔行
風渡涼一退魔行 第三話 ぬりかべ
風渡涼一退魔行
第三話 ぬりかべ
1
「なるほど、ここでお見かけしたんですね。道理で見覚えがあると思った」
晩酌タイムに聞きたい声ではなかった。おれは酒の入ったグラスを前に、憮然とした表情でいた。飛んで来た蚊をぴしゃりと潰し、巌のような顔でグラスを磨いている、バーテンダーの後ろに並んだ酒瓶を見た。
「あんたたち、いつのまにそこまで深い知り合いになったのよ」
このバー、「ソフィア」のマダムの織江が、おれも名前を知らない外国煙草をくゆらせながら、面白そうにいった。怪しげで驕慢で色気過剰の女を演じさせたらかなうものがない。
「いいじゃない、涼ちゃん。なにも、つがってるところを覗かれたわけじゃないんだしさ」
いや。おれは怨念の籠った目で、バーのドアを開けて入ってきたサラサラヘアの美青年、あからさまにひ弱な若造、塚原喜八郎のやつをにらみつけた。
「だけど、意外ですね。風渡さんはもっと……」
デリカシーのかけらもない塚原は、訳知り顔で大きくうなずいた。
「もっと、辛口のお酒を召し上がるものだと思ってました」
うるさい。
おれは、アレキサンダーをぐっと飲んだ。ブランデー、クレーム・ド・カカオ、生クリームをシェイクして作る、極甘口のカクテルである。
「おれだって、たまにはこういうのを飲むんだ。昔のアメリカ映画『酒とバラの日々』で、リー・レミック演じる品行方正を絵に描いたような社長秘書のカーステンを、恐ろしいアル中患者へと転落させてしまう第一歩となったカクテルの名作だ。人生経験の少ないお前にはわかるまい」
無表情でいる名前も知らないバーテンダーをよそに、織江のやつは明らかに面白がった調子で、塚原の耳元にささやいた。
「ああいってるけどね、ここへ来るときは毎回、甘めのカクテルなのよ。意外とあの人、甘党なの。オンザロックとか飲んでいる時は、たいてい、見栄ね」
くそ。覚えてやがれ。
「マダム、おれの趣味嗜好はどうでもいいが、どうしてこいつがおれの晩酌タイムを狙ったかのようにここにいるんだ」
「『ぴゅしす』の同人なのよ、この子」
「『ぴゅしす』? ああ、そういえば、マダムが前にいってたな。なんだか童話かなにかのサークルを主催しているとかなんとか……」
「少女小説です」
塚原喜八郎はきっぱりとした口調でいった。
「メルヘンと恋愛の世界を原稿用紙に描き出す、それがぼくの仕事です」
「お前の仕事は駅の立ち食いそば屋の店長だろう」
「それがね」
織江は灰皿で煙草をもみ消した。
「どういうわけか、勤めていたそば屋がつぶれて、今は浪々の身なんだって」
「ふん」
「どういうわけ」があったかについてはよく知っているおれは、カクテルを飲み干した。
「で、こいつは、どんなメルヘンと恋愛の少女小説の原稿を持ってきたんだ」
塚原喜八郎は、鞄をごそごそやると、おれにA5サイズのタブレットを差し出した。
「読みます?」
おれは拝読することにした。
画面を操作し、タイトルをざっと見た。
『いきおくれプリンセスがホモ王子に輿入れいたしましたっ!!』
おれは塚原喜八郎の顔を見た。再びタブレットの画面に映ったタイトルを見た。もう一度塚原喜八郎の、賞賛の言葉への期待に満ち満ちた顔に目を戻してから、おれはタブレットを塚原喜八郎に返した。
「いや……いい。そんな話読むと、悪酔いを起こしそうだ」
「自信作なんだけどなあ……」
「どうせ、最初の3ページまではみっちり書いてあるけれど、そこから先はずっと白紙なんだろ?」
おれはグラスを返すと、バーテンダーにいった。
「濃い目のスクリュードライバーをくれ。ウォッカは抜きでな」
織江はげらげら笑った。
「オレンジジュースを頼むのにもこうも回りくどいんだから、男ってめんどくさいわね!」
「ふん。店の雰囲気に貢献してやってるんだ。で、どうなんだ、そいつの原稿は」
織江は二本目の外国煙草に火をつけた。
「3ページで途切れ、後は真っ白。涼ちゃん、見事な推理よ。どうしてわかったの?」
「前に読ませてもらったお前のところの同人誌、全部『第一話』だけで、『第二話』がなかったじゃねえか。そこから類推しただけだ。おい若造」
おれは塚原喜八郎にいった。
「さっさと帰って4ページ目以降を書くか、ここで黙って酒を飲むかしたらどうだ。こんな婆さんにつきあっていると、精気どころか尻子玉まで抜かれちまうぞ」
「婆さんだなんて、ひどいわよ」
織江はむっちりとした色白の肌を見せつけるように煙草を消した。
「で、涼ちゃん、あんたのほうの話も聞きたいわね。あんたがこの『ソフィア』に飲みに来るときは、必ず、やっかいな相手と関わり合っているんだから。愚痴をこぼすだけならいいけど、化け物を連れてこられちゃかなわないのよ」
「まあ、ちょっと、こないだの出張で、引っかかっていることはある」
おれは濃い目のオレンジジュースをひと口飲んだ。
「ここから先は大人の話だからな。若造、お前は出てったほうが……」
身体を回したとき、おれは『壁』を感じた。
手をついた。動かない。見えない壁が、おれと織江たちの間にありやがる。
「くそっ。どうもすっきりしないと思っていたが……!」
「なにをふざけてるのよ、涼ちゃん」
織江が呆れたようにいった。
「ふざけているわけじゃない」
おれは答えた。
「化け物を連れてきちまったみたいだ。こいつは明らかに、『ぬりかべ』だ……!」
2
話は一週間前にさかのぼる。おれは、九州の博多にいた。
「見てください。……おい、佐藤くん!」
とあるビルの地下室。榊という老守衛は、部屋の隅にいる垢だらけの男にサラミソーセージを放った。そいつが佐藤らしい。男はサラミソーセージを受け取ると、皮をむいてがつがつと食らった。
おれがうなずくと、榊は男のほうに歩いて行った。
足が急に止まった。
榊は手を伸ばした。手は中空で止まった。榊は手を、パントマイムの壁の演技でもするかのように動かすと、おれにいった。
「こうなんです」
おれはうなずくと、榊と同じように、男に向かって歩いた。
榊と同じ地点で、足が止まった。
手を伸ばす。見えない壁を感じた。壁は手を伸ばすと上の方まで続き、下を探ると床まで届いていた。
おれは壁の横の広がりを調べた。壁は部屋を分断するかのように横へ伸びていた。手で触った感じでは、穴や出口は見つからなかった。
榊は重々しくいった。
「ぬりかべです。閉じ込められた、佐藤くんを助けていただきたい」
こうまでリアルに壁を感じたら、おれも認めないわけにはいかなかった。
福岡県遠賀郡に伝わる伝承に、夜道を歩いていると、急になにかの壁に突き当たったかのように、前にも横にも一歩も進めなくなる、というものがある。それが、「塗壁」という現象の本来の意味だ。柳田國男の本の記述にある。
遠賀郡でこそないが、この博多のビル街の一角でそれに遭遇するとは、退魔師としても初めての経験だ。
おれは掃除用具入れからあらかじめ取り出しておいた箒の柄をを使って、壁と思われる場所の下を払ってみた。伝承によれば、それにより壁は消えるという。箒の柄は、見えない壁を突き抜けて、地下室の床の埃に、扇形の跡を残した。
「無駄ですよ、わたしらもやってみました」
榊老人はいった。
「すでに他人がやったことでも、やれることはなんでも試してみるのがおれの商売でね」
おれは壁のある場所を探ってみた。壁はそこにあった。歩いて行くのをはばむ、見えない壁は健在であるらしい。
「無生物は通り抜けるようだな。通り抜けるのは、無生物だけかい?」
おれは老人にいった。
「どうもそのようです。モルモットを放してみましたが、壁のところを越えることはできないようでした」
おれは唸った。
「前に読んだフレドリック・ブラウンの短編では、意識を失ったかどうかに壁を越えられるか越えられないかの差が……」
「試しました」
榊老人は疲れ切った口調でいった。
「こちらからあちらにロープを投げて、佐藤くんに自分の足に縛り付けてもらい、寝ている間にこっちから引っぱってみたのですが、だめでした。壁に当たると、足がありえない角度で……」
おれは黙ってうなずいた。彼らも馬鹿ではないし、無為に甘んじているわけでもない。やるべきことはきちんとやっているらしい。ここまで詰将棋の詰めの手順をしっかりやられていると、おれとしても、楽といっちゃ楽だ。
壁を見て、しばし黙考した。
道具はそれほど持ってきてはいないが、手持ちの分量を考えれば、まあ、いけるだろう。
「荒っぽくなるが、かまいませんか」
おれはアタッシュケースに手をかけた。
「荒っぽくって……なにをするんです?」
「押してもだめなら引いてみな、ってことはよくありますよ。この場合、引いてもだめなら押してみな、ですがね」
目をぱちぱちしている老人を残し、おれは部屋を出た。そのまま回り込み、隣の掃除用具入れの扉を開けた。ずいぶんと汚い小部屋だ。臭いに顔をしかめながら、アタッシュケースのふたを開いた。
壁の材質も、厚みも、おれの意図することをやるには障害にならない。
真っ白なプラスチック爆弾を取り出し、細いひも状にして壁に貼り付けた。TNT火薬がたっぷりと、プラスチックに練り込んであり、高度な爆発力がある。ポケットから、頑丈な金属ケースに入れた雷管を取り出し、プラスチック爆弾に突き刺し、時限装置のスイッチを入れた。火薬には火をつけても燃えるだけだが、雷酸水銀その他の、よく破裂する起爆薬を使って、一気に連続的に爆発を起こすと……。
おれはできる限り素早く掃除用具入れを出た。
5……4……3……。
ゼロまで数えた時、乾いた爆発音がした。
おれは掃除用具入れに入り直し、今吹き飛ばした壁を蹴飛ばして穴を開けると、そこから佐藤を救出した。
「OK。すみましたよ。佐藤くんはかなり衰弱しているようです。医者に見せるべきですね」
おれの言葉を聞いているんだかいないんだか、榊老人は、恨みがましい目で、大穴の開いた壁を見ていた。
「……よくあること、なんですか?」
「よくあることです」
おれは嘘をついた。おれだって、数学者のいう「エレガントな解法」が欲しいが、それが手に入らなかったら、コンピュータで総当たりでチェックし、力技で強引に、定理を証明せざるを得ないじゃないか。
知り合いの退魔師から買ってきた魔祓いの札を部屋に貼り付け、おれの仕事は完了した。
……はずだったのだが。
3
おれは、バーの地下室で、手を見えない壁に突っ張ってみた。
動かない。
「どうも、困った事態になったようだ」
おれは顔をしかめて、織江と若造とバーテンダーに説明した。
織江たちは手を使って、壁のある位置を確かめていた。どうやら、おれとバーテンダーは、完全に入り口から分断されてしまったらしい。また、織江と若造も同様に、この地下室に閉じ込められてしまったらしかった。
「『ソフィア』の壁の手前にも、壁を感じます。外部との連絡が難しいようでは、その、博多の事件と同じ手は使えないらしいですね、風渡さま」
バーテンダーが、ちっとも動じていない声でいった。小説なら、バーテンダーが動じていないのは、実はこいつが犯人だからで、頭脳明晰なおれは見事な推理でそれを指摘するのだが、長いつきあいで、おれはこのバーテンダーが単に「元からそういうやつ」であることをよく知っている。この男なら、東日本大震災の震源地にいても、まったく動じないでシェーカーを振ってギムレットでも作っているはずだ。しかもとびきりうまいやつを。
「そうだな。応援を呼ぶなら携帯を使えばいいが、二次災害を招く危険がある。それよりは、ここで四人が飢えて死んだ方がまだ外部への影響が少ないだけましだろう」
この落ち着きは見習わなくてはいけない。おれも動じていない声を作り、淡々と事実だけを述べた。
「その前に、やってほしいことがある」
織江と若造が、ごくり……と息を飲むのがわかった。
「腹が減ったので、何か軽食をこしらえてくれ」
織江と若造が、ずっ……とこけそうになるのが背中越しによくわかった。吉本新喜劇の、なんとかいう芸人が「ごめんくさい」とかいった直後みたいに。誰だったっけ。
「なにを考えてるんですか、なにを!」
立ち直ったのか、若造がわめいた。吉本新喜劇では、誰がやる係だったろうか。
「うるさいな。おれは単に腹が減ったから何か作ってくれと言っただけじゃないか」
バーテンダーは淡々とした口調で答えた。
「今の時間では、パスタのようなものしかできませんが……」
「じゃあ、パスタでいい。トマトソースだ。だからといって気取るんじゃないぞ。どこの喫茶店でも出るような、ごくありふれたナポリタンみたいな感じに仕上げてくれ」
「かしこまりました。風渡さま。パスタ自体は、あいにくと、生パスタしか用意してございませんので、そこはお許し願いたく存じます」
「生パスタを用意していたことで、料理人が謝ったのを見たのは、ぼく、初めてかもしれない……」
若造が弱々しい声でいった。
その間も、おれが何もしていなかったわけではない。おれはこの状況から抜け出す方法を、一心不乱に考えていた。今日は武器を詰め込んだアタッシュケースを持ってきていない。胸のホルスターにはグロックがあるが、この得体のしれない敵相手に、拳銃で何ができるというんだ。
バーテンダーは小鍋に湯を沸かしてパスタを茹で、冷蔵庫から作り置きのトマトソースを取り出し、茹で上がったパスタとオリーブ油で簡単に炒めてあえると、皿に盛ってフォークとともに出した。
バーの中に、酒の風味を殺さない程度にではあるが、甘酸っぱいトマトの香りが広がった。修行の足りない塚原喜八郎だろうか、ごく、という声が聞こえた。
「日本風トマトソースパスタでございます」
「きみの美学からして、ナポリタン、などとは口が裂けてもいいたくないのはわかる。しょうがない、妥協しよう。ジャポネーゼ、どまりで我慢することにする」
「恐れ入ります」
バーテンダーは軽く一礼し、その後、軽く自分のこめかみを拳でたたいた。
「わたくしとしましたことが、うかつにも忘れ物をするところでございました」
バーテンダーは冷蔵庫から、タバスコと、パルメザン・チーズを取り出した。
「うむ」
おれはうなずいた。タバスコと粉チーズなしで、何のジャポネーゼだというのだ。
おれはまず、パルメザン・チーズの円筒形の容器のふたを回して開けると、真っ赤なスパゲティの上にびっしりと振った。それから、タバスコの赤く小さなふたを外し、わずかな酢の香りがするこの辛味調味料を、親の仇みたいにチーズの上から振りかけた。
後はワイルドにチーズとソースとパスタを心ゆくまでフォークで混ぜ、パスタを巻き取って口に運ぶだけである。
おれはひと巻きしたパスタを口に入れた。
バーテンダーの腕は確かだった。アルデンテからやや軟らかめに茹でたパスタに、甘く酸っぱいトマトソースがよく絡んでいる。その甘酸っぱさと並立する、タバスコのがんと来る辛さ。アクセントとなるチーズのつぶつぶ。
「やるじゃないか、日本風」
「恐れ入ります」
そうだ。日本の誇る『洋食』という文化が磨き上げたトマトソースこそ、日本の民族の味の神髄があふれている食い物なのである。あるときはチキンライスとして主食となり、あるときは肉の旨味を引き出すソースとしてハンバーグステーキを彩り、少年少女の心にエキゾチシズムをかきたてながらも、その内情は完全なまでの「日本」。それこそが、日本が国際化するうえで培ってきた知恵なのだ。このトマト味を口にした瞬間、すべての日本人は小学生の子供に還るのであり、しみじみと幸せを感じるのだ。
タバスコ。これが牡蠣を食べるためのソースとして作られたことをおれは知っている。だが、それはあくまでも西洋人が牡蠣を食する場合の話だ。日本人にとって、このタバスコは常にトマトとともにあった。この辛味と酸味がトマトの旨味をこれ以上ないくらい引き出してくれることを「知っている」以上、何で原理原則にとらわれなければならないのか。宗教的原理主義者でもあるまいし。ここにチーズが絡んだとき、舌は重層的なシンフォニーに震撼しながら、われわれの頬をゆるませるのだ。
おれは黙々と食事をした。
「ふう」
おれはバーテンダーに笑いかけた。
「うまかった」
「恐れ入ります」
「あのう……」
塚原喜八郎が口を挟んできた。
おれは満足な食事を終えたときの食後という至福の時間を邪魔されたことに腹を立てながらも、至福の時間を味わったがゆえの鷹揚さをもって塚原の問いに答えた。
「なんだ」
「この『ぬりかべ』の状態から抜け出る方法、何か考えついたんですか?」
ふふふ、と織江が笑った。
「食べ物を食べている時の涼ちゃんに知性のひらめきを期待しちゃダメよ。食べ物は涼ちゃんに取っちゃエンジンオイルで、エンジンを動かすには必要不可欠なものだけど、涼ちゃんがフル回転するには、ここからエンジンを組み立てて、ローからセカンドにギアを上げて、トップまで持っていかないと、巡航速度にすらなりゃしないわ」
おれはぼやいた。
「人の脳味噌を出来の悪いマニュアル車みたいにいうな」
まあ、織江の言う通りなのだが。
しかし、人を……。
待てよ?
4
「ど、どうしたんですか、風渡さん」
「黙ってろ」
「騒ぎたくもなりますよ。ずっとふさぎ込んでいたかと思ったら、急に首の後ろに手なんか回して……」
「黙ってろといってるんだ!」
おれは首の後ろ、ちょうど延髄のあたりを中心に親指と人差し指を動かしていた。デリケートな作業なのだ。塚原喜八郎なんかに騒がれたら、指先の調子が狂う。
目に汗が染みた。
ここらへんのはずなのだが。あとわずか。1ミクロン……?
手ごたえ!
おれは爪を立てると、首筋からそいつを引っこ抜いた。
「ああ……」
織江がぽんと手を叩いた。
「そうか、『ぬりかべ』っていうのは、そういう現象だったのね……!」
「その通りだ。織江、あんたの想像している通りで、たぶん、合ってる」
おれは額の汗をぬぐった。
「バーテンダーさん、キンチョールあるかい」
「コックローチでしたら」
「なんでもいいから貸してくれ」
コックローチのスプレー缶を受け取ったおれは、指でつまんだそいつにシュッと吹きかけた。
「風渡さま、その虫が?」
「ぬりかべの本体さ」
おれは首筋に潜り込んでいた2ミリくらいの虫をテーブルに乗せ、グラスでもってふたをした。
「疲れた」
だが、まあ、やることだけはやらなくてはならないだろう。おれは椅子から立ち上がると、バーテンダーを後ろ向きに立たせて、指で幼虫を見つけ、抜いた。次は織江と塚原喜八郎のもとへ向かう番だ。もうおれにとって見えない壁はない。
「結局、その虫だったのね、すべての元凶は」
織江はそういったが、おれは首を振った。
「違う。すべての元凶は、おれたちの想像力さ。人間の想像力を、この虫が何万倍にも増幅させて、あたかもそこに壁があるかのように思わせていたんだ。後は、おれたちが勝手に作った壁に、おれたちが勝手に閉じ込められていただけさ。何のことはない」
おれは指先に神経を集中させ、織江の首筋を探った。
「菊地秀行の『エイリアン魔獣境』って本を読んだことあるかい。あれで、痛覚の及ばないところに針型爆弾を突きさされた主人公の八頭大がピンチに陥るシーンが出てくる。この虫も、それと同じさ。人間の首筋に降り立ったら最後、通常の痛覚や触覚の及ばないところに潜り込むんだ。普通にしてたら百年経っても見つかるまい」
塚原喜八郎は、ああ、といった。
「だから、黙り込んでいたんですね。風渡さん、あなたは、通常では気付かないような肉体の異常を、精神を集中することで感覚を増幅し、感知しようとしていたんだ」
おれはうなずいた。
「あの小説のヒーローである八頭は、指を首に突き刺して、針の位置を特定して引っこ抜く。たしか、首の分子間に指の分子を潜り込ませる、とかいう理屈付けがされていたな。おれにはそんなことはできないが、せいぜい真似事だけでもしなくちゃならん。感覚を鋭敏にする方法については、『リグ・ヴェーダ』の神秘主義的解釈を重んじる一派に伝わる、ヨガの奥義を記した文献に、詳細に記載されている。なにせインドの半分頭が狂ったような神秘家が書いた文章だから、そんなものを真面目に読むのはおれくらいだがね。隠喩と暗喩だらけで、インドの言葉に明るくても、まともに読めた文章じゃないからな」
「でも……風渡さん、あなたはそれを読んだんだ!」
「自分の身が助かるのに役に立つのなら、そのくらい喜んで読むさ。異物のだいたいの位置はそれでつかんだが、実際に引っこ抜くのはもっとたいへんだ。ごくわずかな産卵管しか外に出ていないんだからな。そこをつまむのには、爪の先をミクロン単位で動かす必要があった。つまんだだけじゃまだ足りない。虫の本体がちぎれないように、力加減を按配して抜かなければならない。原子融合してもいいから、指先を首に突っ込みたかったね。ほんと、神経を使うよ、まったく」
おれは織江の首から、綿埃のような奴を引き抜くと、コックローチを噴霧した。
織江がそれを不思議そうに見た。
「何も見えないわよ。幼虫かしら」
おれはうなずいた。
「あまりにも小さいからな。おれも指をミクロン以下の単位で動かさないとわからなかったくらいだ。おそらく、そんな小さい身体のときに空気に乗って浮遊して人間や動物の体内に寄生し、そこで成長するんだろう。コップの中で死んでいる、最初に捕まえたあの虫は、おれの中で一週間生活していたわけだから、その間に2ミリまで成長したんだろうな。幼虫の場合は、それこそ見つかるわけがない」
おれは白目をむいている塚原喜八郎にいった。
「ほら、お前も抜いてやるから、素直に首を出せ」
「いわれなくても出しますよ」
後ろを向かせて、またミクロン単位の指先での調査の後で、おれは塚原喜八郎の首からも幼虫を抜いた。
おれは指先でつまんだそれに、コックローチをひと吹きした。
「これで大丈夫だ。もう壁はない」
「抜いてもらったのはありがたいんですけど……」
やっぱりまだ違和感があるのか、首をぐにぐに曲げたり伸ばしたりしていた塚原喜八郎がおれに尋ねた。
「でも、やっぱりちょっと納得がいかない部分がいくつかあるんですが。だって、お話では、博多での佐藤さんは、足をロープで引っぱられても壁を越えられなかったんでしょ」
「それは問題の前提が間違っているな。あれは、足をロープで引っぱった『人間』のほうが虫にやられていたんだよ。ロープで引っぱられた佐藤さんが壁に当たるんじゃないか、と想像してしまった時点で、佐藤さんの足がありえない方向に曲がったと引っぱる人間が錯覚してしまい、その結果、心理的にロープを引っ張ることができなくなってしまったのさ。もし、佐藤さんの足のロープを引っ張ったのがロボットだったら、事件にも何にもなっていなかったことだろうな」
「なるほど」
塚原喜八郎はうなずいた。
「でも、ぼくたちがこの『ソフィア』で顔を合わせてから、ほとんど時間は経ってませんよ。そんな短時間に爆発的に感染者が拡大する寄生虫の幼虫、そんなに簡単に見つかるんですか? 現に、風渡さんは自分の首に寄生したやつを取り除くのに、あんなに苦労していたんでしょ。それのもっと小さいやつを取り除くなんて……」
「できないと思うか?」
おれはにやりと笑った。
「そういうときは、できる、ということにしとくもんだぜ。この虫は想像力を増幅させるんだ。江戸時代の人間は、怪奇なことや不思議なことは、それなりの頻度で起こるものだし、それなりの頻度で消えるものだ、ということを信じていた。だから、ぬりかべ現象も、それなりの時間が経てば消える、ということを信じることができたんだ。今の人間は、科学の発展で、原因には結果がついてくるし、それは関数に何かの数字を代入すると、それなりの結果が出てくるようなもので、そう簡単に変わるようなものではない、という教義を信じている。壁の下を棒で払ったくらいで、壁が消える『わけがない』と信じるくらいにな。きみが、おれが寄生虫を取り除けなかったと考えるのは勝手だが、もし……」
「いや、風渡さんは、プロの超A級退魔師ですよ。虫を取り除くくらい、朝飯前にできますよ。あは、はは……」
塚原喜八郎は顔色を青ざめさせていた。
事件の話はこれでおしまいだ。人が見えない壁に閉じ込められたという話はあれ以降聞かないし、「ソフィア」のある地下室も、ごく普通に人が出入りしている。
だが、この虫は普通の人間には感知されるわけがないのだ。もし、あまりにも多数の人間にこの寄生虫が蔓延しているとしたら。もし、その多数の人間が、ある一定の「想像」に流れるとしたら……。
おれは今日の新聞を見た。移民問題について、嫌悪感丸出しのアジテーションをする文章を、なんとかいう記者が書いていた。
もし、アジテーションがある閾値を超えてしまったら……日本人は、日本の中に壁を作って、外へ出られなくなってしまうのではないだろうか?
その前に、おれは新聞を畳んで飯を食いに出かけるがね。
第三話 ぬりかべ
1
「なるほど、ここでお見かけしたんですね。道理で見覚えがあると思った」
晩酌タイムに聞きたい声ではなかった。おれは酒の入ったグラスを前に、憮然とした表情でいた。飛んで来た蚊をぴしゃりと潰し、巌のような顔でグラスを磨いている、バーテンダーの後ろに並んだ酒瓶を見た。
「あんたたち、いつのまにそこまで深い知り合いになったのよ」
このバー、「ソフィア」のマダムの織江が、おれも名前を知らない外国煙草をくゆらせながら、面白そうにいった。怪しげで驕慢で色気過剰の女を演じさせたらかなうものがない。
「いいじゃない、涼ちゃん。なにも、つがってるところを覗かれたわけじゃないんだしさ」
いや。おれは怨念の籠った目で、バーのドアを開けて入ってきたサラサラヘアの美青年、あからさまにひ弱な若造、塚原喜八郎のやつをにらみつけた。
「だけど、意外ですね。風渡さんはもっと……」
デリカシーのかけらもない塚原は、訳知り顔で大きくうなずいた。
「もっと、辛口のお酒を召し上がるものだと思ってました」
うるさい。
おれは、アレキサンダーをぐっと飲んだ。ブランデー、クレーム・ド・カカオ、生クリームをシェイクして作る、極甘口のカクテルである。
「おれだって、たまにはこういうのを飲むんだ。昔のアメリカ映画『酒とバラの日々』で、リー・レミック演じる品行方正を絵に描いたような社長秘書のカーステンを、恐ろしいアル中患者へと転落させてしまう第一歩となったカクテルの名作だ。人生経験の少ないお前にはわかるまい」
無表情でいる名前も知らないバーテンダーをよそに、織江のやつは明らかに面白がった調子で、塚原の耳元にささやいた。
「ああいってるけどね、ここへ来るときは毎回、甘めのカクテルなのよ。意外とあの人、甘党なの。オンザロックとか飲んでいる時は、たいてい、見栄ね」
くそ。覚えてやがれ。
「マダム、おれの趣味嗜好はどうでもいいが、どうしてこいつがおれの晩酌タイムを狙ったかのようにここにいるんだ」
「『ぴゅしす』の同人なのよ、この子」
「『ぴゅしす』? ああ、そういえば、マダムが前にいってたな。なんだか童話かなにかのサークルを主催しているとかなんとか……」
「少女小説です」
塚原喜八郎はきっぱりとした口調でいった。
「メルヘンと恋愛の世界を原稿用紙に描き出す、それがぼくの仕事です」
「お前の仕事は駅の立ち食いそば屋の店長だろう」
「それがね」
織江は灰皿で煙草をもみ消した。
「どういうわけか、勤めていたそば屋がつぶれて、今は浪々の身なんだって」
「ふん」
「どういうわけ」があったかについてはよく知っているおれは、カクテルを飲み干した。
「で、こいつは、どんなメルヘンと恋愛の少女小説の原稿を持ってきたんだ」
塚原喜八郎は、鞄をごそごそやると、おれにA5サイズのタブレットを差し出した。
「読みます?」
おれは拝読することにした。
画面を操作し、タイトルをざっと見た。
『いきおくれプリンセスがホモ王子に輿入れいたしましたっ!!』
おれは塚原喜八郎の顔を見た。再びタブレットの画面に映ったタイトルを見た。もう一度塚原喜八郎の、賞賛の言葉への期待に満ち満ちた顔に目を戻してから、おれはタブレットを塚原喜八郎に返した。
「いや……いい。そんな話読むと、悪酔いを起こしそうだ」
「自信作なんだけどなあ……」
「どうせ、最初の3ページまではみっちり書いてあるけれど、そこから先はずっと白紙なんだろ?」
おれはグラスを返すと、バーテンダーにいった。
「濃い目のスクリュードライバーをくれ。ウォッカは抜きでな」
織江はげらげら笑った。
「オレンジジュースを頼むのにもこうも回りくどいんだから、男ってめんどくさいわね!」
「ふん。店の雰囲気に貢献してやってるんだ。で、どうなんだ、そいつの原稿は」
織江は二本目の外国煙草に火をつけた。
「3ページで途切れ、後は真っ白。涼ちゃん、見事な推理よ。どうしてわかったの?」
「前に読ませてもらったお前のところの同人誌、全部『第一話』だけで、『第二話』がなかったじゃねえか。そこから類推しただけだ。おい若造」
おれは塚原喜八郎にいった。
「さっさと帰って4ページ目以降を書くか、ここで黙って酒を飲むかしたらどうだ。こんな婆さんにつきあっていると、精気どころか尻子玉まで抜かれちまうぞ」
「婆さんだなんて、ひどいわよ」
織江はむっちりとした色白の肌を見せつけるように煙草を消した。
「で、涼ちゃん、あんたのほうの話も聞きたいわね。あんたがこの『ソフィア』に飲みに来るときは、必ず、やっかいな相手と関わり合っているんだから。愚痴をこぼすだけならいいけど、化け物を連れてこられちゃかなわないのよ」
「まあ、ちょっと、こないだの出張で、引っかかっていることはある」
おれは濃い目のオレンジジュースをひと口飲んだ。
「ここから先は大人の話だからな。若造、お前は出てったほうが……」
身体を回したとき、おれは『壁』を感じた。
手をついた。動かない。見えない壁が、おれと織江たちの間にありやがる。
「くそっ。どうもすっきりしないと思っていたが……!」
「なにをふざけてるのよ、涼ちゃん」
織江が呆れたようにいった。
「ふざけているわけじゃない」
おれは答えた。
「化け物を連れてきちまったみたいだ。こいつは明らかに、『ぬりかべ』だ……!」
2
話は一週間前にさかのぼる。おれは、九州の博多にいた。
「見てください。……おい、佐藤くん!」
とあるビルの地下室。榊という老守衛は、部屋の隅にいる垢だらけの男にサラミソーセージを放った。そいつが佐藤らしい。男はサラミソーセージを受け取ると、皮をむいてがつがつと食らった。
おれがうなずくと、榊は男のほうに歩いて行った。
足が急に止まった。
榊は手を伸ばした。手は中空で止まった。榊は手を、パントマイムの壁の演技でもするかのように動かすと、おれにいった。
「こうなんです」
おれはうなずくと、榊と同じように、男に向かって歩いた。
榊と同じ地点で、足が止まった。
手を伸ばす。見えない壁を感じた。壁は手を伸ばすと上の方まで続き、下を探ると床まで届いていた。
おれは壁の横の広がりを調べた。壁は部屋を分断するかのように横へ伸びていた。手で触った感じでは、穴や出口は見つからなかった。
榊は重々しくいった。
「ぬりかべです。閉じ込められた、佐藤くんを助けていただきたい」
こうまでリアルに壁を感じたら、おれも認めないわけにはいかなかった。
福岡県遠賀郡に伝わる伝承に、夜道を歩いていると、急になにかの壁に突き当たったかのように、前にも横にも一歩も進めなくなる、というものがある。それが、「塗壁」という現象の本来の意味だ。柳田國男の本の記述にある。
遠賀郡でこそないが、この博多のビル街の一角でそれに遭遇するとは、退魔師としても初めての経験だ。
おれは掃除用具入れからあらかじめ取り出しておいた箒の柄をを使って、壁と思われる場所の下を払ってみた。伝承によれば、それにより壁は消えるという。箒の柄は、見えない壁を突き抜けて、地下室の床の埃に、扇形の跡を残した。
「無駄ですよ、わたしらもやってみました」
榊老人はいった。
「すでに他人がやったことでも、やれることはなんでも試してみるのがおれの商売でね」
おれは壁のある場所を探ってみた。壁はそこにあった。歩いて行くのをはばむ、見えない壁は健在であるらしい。
「無生物は通り抜けるようだな。通り抜けるのは、無生物だけかい?」
おれは老人にいった。
「どうもそのようです。モルモットを放してみましたが、壁のところを越えることはできないようでした」
おれは唸った。
「前に読んだフレドリック・ブラウンの短編では、意識を失ったかどうかに壁を越えられるか越えられないかの差が……」
「試しました」
榊老人は疲れ切った口調でいった。
「こちらからあちらにロープを投げて、佐藤くんに自分の足に縛り付けてもらい、寝ている間にこっちから引っぱってみたのですが、だめでした。壁に当たると、足がありえない角度で……」
おれは黙ってうなずいた。彼らも馬鹿ではないし、無為に甘んじているわけでもない。やるべきことはきちんとやっているらしい。ここまで詰将棋の詰めの手順をしっかりやられていると、おれとしても、楽といっちゃ楽だ。
壁を見て、しばし黙考した。
道具はそれほど持ってきてはいないが、手持ちの分量を考えれば、まあ、いけるだろう。
「荒っぽくなるが、かまいませんか」
おれはアタッシュケースに手をかけた。
「荒っぽくって……なにをするんです?」
「押してもだめなら引いてみな、ってことはよくありますよ。この場合、引いてもだめなら押してみな、ですがね」
目をぱちぱちしている老人を残し、おれは部屋を出た。そのまま回り込み、隣の掃除用具入れの扉を開けた。ずいぶんと汚い小部屋だ。臭いに顔をしかめながら、アタッシュケースのふたを開いた。
壁の材質も、厚みも、おれの意図することをやるには障害にならない。
真っ白なプラスチック爆弾を取り出し、細いひも状にして壁に貼り付けた。TNT火薬がたっぷりと、プラスチックに練り込んであり、高度な爆発力がある。ポケットから、頑丈な金属ケースに入れた雷管を取り出し、プラスチック爆弾に突き刺し、時限装置のスイッチを入れた。火薬には火をつけても燃えるだけだが、雷酸水銀その他の、よく破裂する起爆薬を使って、一気に連続的に爆発を起こすと……。
おれはできる限り素早く掃除用具入れを出た。
5……4……3……。
ゼロまで数えた時、乾いた爆発音がした。
おれは掃除用具入れに入り直し、今吹き飛ばした壁を蹴飛ばして穴を開けると、そこから佐藤を救出した。
「OK。すみましたよ。佐藤くんはかなり衰弱しているようです。医者に見せるべきですね」
おれの言葉を聞いているんだかいないんだか、榊老人は、恨みがましい目で、大穴の開いた壁を見ていた。
「……よくあること、なんですか?」
「よくあることです」
おれは嘘をついた。おれだって、数学者のいう「エレガントな解法」が欲しいが、それが手に入らなかったら、コンピュータで総当たりでチェックし、力技で強引に、定理を証明せざるを得ないじゃないか。
知り合いの退魔師から買ってきた魔祓いの札を部屋に貼り付け、おれの仕事は完了した。
……はずだったのだが。
3
おれは、バーの地下室で、手を見えない壁に突っ張ってみた。
動かない。
「どうも、困った事態になったようだ」
おれは顔をしかめて、織江と若造とバーテンダーに説明した。
織江たちは手を使って、壁のある位置を確かめていた。どうやら、おれとバーテンダーは、完全に入り口から分断されてしまったらしい。また、織江と若造も同様に、この地下室に閉じ込められてしまったらしかった。
「『ソフィア』の壁の手前にも、壁を感じます。外部との連絡が難しいようでは、その、博多の事件と同じ手は使えないらしいですね、風渡さま」
バーテンダーが、ちっとも動じていない声でいった。小説なら、バーテンダーが動じていないのは、実はこいつが犯人だからで、頭脳明晰なおれは見事な推理でそれを指摘するのだが、長いつきあいで、おれはこのバーテンダーが単に「元からそういうやつ」であることをよく知っている。この男なら、東日本大震災の震源地にいても、まったく動じないでシェーカーを振ってギムレットでも作っているはずだ。しかもとびきりうまいやつを。
「そうだな。応援を呼ぶなら携帯を使えばいいが、二次災害を招く危険がある。それよりは、ここで四人が飢えて死んだ方がまだ外部への影響が少ないだけましだろう」
この落ち着きは見習わなくてはいけない。おれも動じていない声を作り、淡々と事実だけを述べた。
「その前に、やってほしいことがある」
織江と若造が、ごくり……と息を飲むのがわかった。
「腹が減ったので、何か軽食をこしらえてくれ」
織江と若造が、ずっ……とこけそうになるのが背中越しによくわかった。吉本新喜劇の、なんとかいう芸人が「ごめんくさい」とかいった直後みたいに。誰だったっけ。
「なにを考えてるんですか、なにを!」
立ち直ったのか、若造がわめいた。吉本新喜劇では、誰がやる係だったろうか。
「うるさいな。おれは単に腹が減ったから何か作ってくれと言っただけじゃないか」
バーテンダーは淡々とした口調で答えた。
「今の時間では、パスタのようなものしかできませんが……」
「じゃあ、パスタでいい。トマトソースだ。だからといって気取るんじゃないぞ。どこの喫茶店でも出るような、ごくありふれたナポリタンみたいな感じに仕上げてくれ」
「かしこまりました。風渡さま。パスタ自体は、あいにくと、生パスタしか用意してございませんので、そこはお許し願いたく存じます」
「生パスタを用意していたことで、料理人が謝ったのを見たのは、ぼく、初めてかもしれない……」
若造が弱々しい声でいった。
その間も、おれが何もしていなかったわけではない。おれはこの状況から抜け出す方法を、一心不乱に考えていた。今日は武器を詰め込んだアタッシュケースを持ってきていない。胸のホルスターにはグロックがあるが、この得体のしれない敵相手に、拳銃で何ができるというんだ。
バーテンダーは小鍋に湯を沸かしてパスタを茹で、冷蔵庫から作り置きのトマトソースを取り出し、茹で上がったパスタとオリーブ油で簡単に炒めてあえると、皿に盛ってフォークとともに出した。
バーの中に、酒の風味を殺さない程度にではあるが、甘酸っぱいトマトの香りが広がった。修行の足りない塚原喜八郎だろうか、ごく、という声が聞こえた。
「日本風トマトソースパスタでございます」
「きみの美学からして、ナポリタン、などとは口が裂けてもいいたくないのはわかる。しょうがない、妥協しよう。ジャポネーゼ、どまりで我慢することにする」
「恐れ入ります」
バーテンダーは軽く一礼し、その後、軽く自分のこめかみを拳でたたいた。
「わたくしとしましたことが、うかつにも忘れ物をするところでございました」
バーテンダーは冷蔵庫から、タバスコと、パルメザン・チーズを取り出した。
「うむ」
おれはうなずいた。タバスコと粉チーズなしで、何のジャポネーゼだというのだ。
おれはまず、パルメザン・チーズの円筒形の容器のふたを回して開けると、真っ赤なスパゲティの上にびっしりと振った。それから、タバスコの赤く小さなふたを外し、わずかな酢の香りがするこの辛味調味料を、親の仇みたいにチーズの上から振りかけた。
後はワイルドにチーズとソースとパスタを心ゆくまでフォークで混ぜ、パスタを巻き取って口に運ぶだけである。
おれはひと巻きしたパスタを口に入れた。
バーテンダーの腕は確かだった。アルデンテからやや軟らかめに茹でたパスタに、甘く酸っぱいトマトソースがよく絡んでいる。その甘酸っぱさと並立する、タバスコのがんと来る辛さ。アクセントとなるチーズのつぶつぶ。
「やるじゃないか、日本風」
「恐れ入ります」
そうだ。日本の誇る『洋食』という文化が磨き上げたトマトソースこそ、日本の民族の味の神髄があふれている食い物なのである。あるときはチキンライスとして主食となり、あるときは肉の旨味を引き出すソースとしてハンバーグステーキを彩り、少年少女の心にエキゾチシズムをかきたてながらも、その内情は完全なまでの「日本」。それこそが、日本が国際化するうえで培ってきた知恵なのだ。このトマト味を口にした瞬間、すべての日本人は小学生の子供に還るのであり、しみじみと幸せを感じるのだ。
タバスコ。これが牡蠣を食べるためのソースとして作られたことをおれは知っている。だが、それはあくまでも西洋人が牡蠣を食する場合の話だ。日本人にとって、このタバスコは常にトマトとともにあった。この辛味と酸味がトマトの旨味をこれ以上ないくらい引き出してくれることを「知っている」以上、何で原理原則にとらわれなければならないのか。宗教的原理主義者でもあるまいし。ここにチーズが絡んだとき、舌は重層的なシンフォニーに震撼しながら、われわれの頬をゆるませるのだ。
おれは黙々と食事をした。
「ふう」
おれはバーテンダーに笑いかけた。
「うまかった」
「恐れ入ります」
「あのう……」
塚原喜八郎が口を挟んできた。
おれは満足な食事を終えたときの食後という至福の時間を邪魔されたことに腹を立てながらも、至福の時間を味わったがゆえの鷹揚さをもって塚原の問いに答えた。
「なんだ」
「この『ぬりかべ』の状態から抜け出る方法、何か考えついたんですか?」
ふふふ、と織江が笑った。
「食べ物を食べている時の涼ちゃんに知性のひらめきを期待しちゃダメよ。食べ物は涼ちゃんに取っちゃエンジンオイルで、エンジンを動かすには必要不可欠なものだけど、涼ちゃんがフル回転するには、ここからエンジンを組み立てて、ローからセカンドにギアを上げて、トップまで持っていかないと、巡航速度にすらなりゃしないわ」
おれはぼやいた。
「人の脳味噌を出来の悪いマニュアル車みたいにいうな」
まあ、織江の言う通りなのだが。
しかし、人を……。
待てよ?
4
「ど、どうしたんですか、風渡さん」
「黙ってろ」
「騒ぎたくもなりますよ。ずっとふさぎ込んでいたかと思ったら、急に首の後ろに手なんか回して……」
「黙ってろといってるんだ!」
おれは首の後ろ、ちょうど延髄のあたりを中心に親指と人差し指を動かしていた。デリケートな作業なのだ。塚原喜八郎なんかに騒がれたら、指先の調子が狂う。
目に汗が染みた。
ここらへんのはずなのだが。あとわずか。1ミクロン……?
手ごたえ!
おれは爪を立てると、首筋からそいつを引っこ抜いた。
「ああ……」
織江がぽんと手を叩いた。
「そうか、『ぬりかべ』っていうのは、そういう現象だったのね……!」
「その通りだ。織江、あんたの想像している通りで、たぶん、合ってる」
おれは額の汗をぬぐった。
「バーテンダーさん、キンチョールあるかい」
「コックローチでしたら」
「なんでもいいから貸してくれ」
コックローチのスプレー缶を受け取ったおれは、指でつまんだそいつにシュッと吹きかけた。
「風渡さま、その虫が?」
「ぬりかべの本体さ」
おれは首筋に潜り込んでいた2ミリくらいの虫をテーブルに乗せ、グラスでもってふたをした。
「疲れた」
だが、まあ、やることだけはやらなくてはならないだろう。おれは椅子から立ち上がると、バーテンダーを後ろ向きに立たせて、指で幼虫を見つけ、抜いた。次は織江と塚原喜八郎のもとへ向かう番だ。もうおれにとって見えない壁はない。
「結局、その虫だったのね、すべての元凶は」
織江はそういったが、おれは首を振った。
「違う。すべての元凶は、おれたちの想像力さ。人間の想像力を、この虫が何万倍にも増幅させて、あたかもそこに壁があるかのように思わせていたんだ。後は、おれたちが勝手に作った壁に、おれたちが勝手に閉じ込められていただけさ。何のことはない」
おれは指先に神経を集中させ、織江の首筋を探った。
「菊地秀行の『エイリアン魔獣境』って本を読んだことあるかい。あれで、痛覚の及ばないところに針型爆弾を突きさされた主人公の八頭大がピンチに陥るシーンが出てくる。この虫も、それと同じさ。人間の首筋に降り立ったら最後、通常の痛覚や触覚の及ばないところに潜り込むんだ。普通にしてたら百年経っても見つかるまい」
塚原喜八郎は、ああ、といった。
「だから、黙り込んでいたんですね。風渡さん、あなたは、通常では気付かないような肉体の異常を、精神を集中することで感覚を増幅し、感知しようとしていたんだ」
おれはうなずいた。
「あの小説のヒーローである八頭は、指を首に突き刺して、針の位置を特定して引っこ抜く。たしか、首の分子間に指の分子を潜り込ませる、とかいう理屈付けがされていたな。おれにはそんなことはできないが、せいぜい真似事だけでもしなくちゃならん。感覚を鋭敏にする方法については、『リグ・ヴェーダ』の神秘主義的解釈を重んじる一派に伝わる、ヨガの奥義を記した文献に、詳細に記載されている。なにせインドの半分頭が狂ったような神秘家が書いた文章だから、そんなものを真面目に読むのはおれくらいだがね。隠喩と暗喩だらけで、インドの言葉に明るくても、まともに読めた文章じゃないからな」
「でも……風渡さん、あなたはそれを読んだんだ!」
「自分の身が助かるのに役に立つのなら、そのくらい喜んで読むさ。異物のだいたいの位置はそれでつかんだが、実際に引っこ抜くのはもっとたいへんだ。ごくわずかな産卵管しか外に出ていないんだからな。そこをつまむのには、爪の先をミクロン単位で動かす必要があった。つまんだだけじゃまだ足りない。虫の本体がちぎれないように、力加減を按配して抜かなければならない。原子融合してもいいから、指先を首に突っ込みたかったね。ほんと、神経を使うよ、まったく」
おれは織江の首から、綿埃のような奴を引き抜くと、コックローチを噴霧した。
織江がそれを不思議そうに見た。
「何も見えないわよ。幼虫かしら」
おれはうなずいた。
「あまりにも小さいからな。おれも指をミクロン以下の単位で動かさないとわからなかったくらいだ。おそらく、そんな小さい身体のときに空気に乗って浮遊して人間や動物の体内に寄生し、そこで成長するんだろう。コップの中で死んでいる、最初に捕まえたあの虫は、おれの中で一週間生活していたわけだから、その間に2ミリまで成長したんだろうな。幼虫の場合は、それこそ見つかるわけがない」
おれは白目をむいている塚原喜八郎にいった。
「ほら、お前も抜いてやるから、素直に首を出せ」
「いわれなくても出しますよ」
後ろを向かせて、またミクロン単位の指先での調査の後で、おれは塚原喜八郎の首からも幼虫を抜いた。
おれは指先でつまんだそれに、コックローチをひと吹きした。
「これで大丈夫だ。もう壁はない」
「抜いてもらったのはありがたいんですけど……」
やっぱりまだ違和感があるのか、首をぐにぐに曲げたり伸ばしたりしていた塚原喜八郎がおれに尋ねた。
「でも、やっぱりちょっと納得がいかない部分がいくつかあるんですが。だって、お話では、博多での佐藤さんは、足をロープで引っぱられても壁を越えられなかったんでしょ」
「それは問題の前提が間違っているな。あれは、足をロープで引っぱった『人間』のほうが虫にやられていたんだよ。ロープで引っぱられた佐藤さんが壁に当たるんじゃないか、と想像してしまった時点で、佐藤さんの足がありえない方向に曲がったと引っぱる人間が錯覚してしまい、その結果、心理的にロープを引っ張ることができなくなってしまったのさ。もし、佐藤さんの足のロープを引っ張ったのがロボットだったら、事件にも何にもなっていなかったことだろうな」
「なるほど」
塚原喜八郎はうなずいた。
「でも、ぼくたちがこの『ソフィア』で顔を合わせてから、ほとんど時間は経ってませんよ。そんな短時間に爆発的に感染者が拡大する寄生虫の幼虫、そんなに簡単に見つかるんですか? 現に、風渡さんは自分の首に寄生したやつを取り除くのに、あんなに苦労していたんでしょ。それのもっと小さいやつを取り除くなんて……」
「できないと思うか?」
おれはにやりと笑った。
「そういうときは、できる、ということにしとくもんだぜ。この虫は想像力を増幅させるんだ。江戸時代の人間は、怪奇なことや不思議なことは、それなりの頻度で起こるものだし、それなりの頻度で消えるものだ、ということを信じていた。だから、ぬりかべ現象も、それなりの時間が経てば消える、ということを信じることができたんだ。今の人間は、科学の発展で、原因には結果がついてくるし、それは関数に何かの数字を代入すると、それなりの結果が出てくるようなもので、そう簡単に変わるようなものではない、という教義を信じている。壁の下を棒で払ったくらいで、壁が消える『わけがない』と信じるくらいにな。きみが、おれが寄生虫を取り除けなかったと考えるのは勝手だが、もし……」
「いや、風渡さんは、プロの超A級退魔師ですよ。虫を取り除くくらい、朝飯前にできますよ。あは、はは……」
塚原喜八郎は顔色を青ざめさせていた。
事件の話はこれでおしまいだ。人が見えない壁に閉じ込められたという話はあれ以降聞かないし、「ソフィア」のある地下室も、ごく普通に人が出入りしている。
だが、この虫は普通の人間には感知されるわけがないのだ。もし、あまりにも多数の人間にこの寄生虫が蔓延しているとしたら。もし、その多数の人間が、ある一定の「想像」に流れるとしたら……。
おれは今日の新聞を見た。移民問題について、嫌悪感丸出しのアジテーションをする文章を、なんとかいう記者が書いていた。
もし、アジテーションがある閾値を超えてしまったら……日本人は、日本の中に壁を作って、外へ出られなくなってしまうのではないだろうか?
その前に、おれは新聞を畳んで飯を食いに出かけるがね。
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Re: 椿さん
ジャポネーゼいうのは、単にこの主人公の風渡がシャレで呼んでいるだけですから(笑) 真の意味でのパスタのジャポネーゼは、タラコスパゲティじゃないのかな、と思わないでもない。イタリア人いわく、ナポリタンは許せるけど、タラコスパゲティは許せない以前に、どうしてそのような堕落した発想になるのか理解しがたい代物らしくて(笑)
書いていると、ホラーとかミステリーとかいう以前に、もう忘れたい自分の「SF者」ぶりがあふれ出てきて、しょせんは血塗られた道か、と(笑) 次の飯テロはカレーライスかな(笑)
書いていると、ホラーとかミステリーとかいう以前に、もう忘れたい自分の「SF者」ぶりがあふれ出てきて、しょせんは血塗られた道か、と(笑) 次の飯テロはカレーライスかな(笑)
Re: blackoutさん
いやこないだの天蕎麦のかき揚げよりもこっちのほうが赤い。
なにせトマトソースなもので(笑)
ぬりかべについては、いろいろとわたしの精神の深層分析をやると面白いかもしれない(笑)
人間社会以前にわたしの内面のメタファーかもしれませんぜ(笑)
なにせトマトソースなもので(笑)
ぬりかべについては、いろいろとわたしの精神の深層分析をやると面白いかもしれない(笑)
人間社会以前にわたしの内面のメタファーかもしれませんぜ(笑)
Re: 面白半分さん
80年代のエンターテインメント界を語るには外すことのできない菊地秀行先生ですが、ソノラマの「トレジャー・ハンター」シリーズが一番面白かったような気がします。
でも、登場するギミックが今となってはどうかなあ。なにせインターネットが存在せず、コンピュータが非力な時代のSF冒険小説ですから。
個人的に好きなのは、「エイリアン魔獣境1・2」と、「エイリアン怪猫伝」ですね。このシリーズはどれもアクションと奇想天外な小道具と濡れ場とあっと驚くアイデアがこれでもかとばかりにてんこ盛りで読んでほんとにスカッとします。中学の図書館にあって夢枕獏のキマイラと一緒にむさぼるように読んだっけ。
でも、登場するギミックが今となってはどうかなあ。なにせインターネットが存在せず、コンピュータが非力な時代のSF冒険小説ですから。
個人的に好きなのは、「エイリアン魔獣境1・2」と、「エイリアン怪猫伝」ですね。このシリーズはどれもアクションと奇想天外な小道具と濡れ場とあっと驚くアイデアがこれでもかとばかりにてんこ盛りで読んでほんとにスカッとします。中学の図書館にあって夢枕獏のキマイラと一緒にむさぼるように読んだっけ。
NoTitle
まさか建物内にこもって集団じさつするカルトもこの虫のせい?
わ…私にもついてないかな…モゾモゾ
で…でも日本は世界4位の移民大国だから…
とそれはいいとして私はチーズの前にタバスコをかけてしまってました
わ…私にもついてないかな…モゾモゾ
で…でも日本は世界4位の移民大国だから…
とそれはいいとして私はチーズの前にタバスコをかけてしまってました
- #19422 ダメ子
- URL
- 2018.06/04 18:16
- ▲EntryTop
NoTitle
今度はパスタで来ましたか!
ナポリタン、いやジャポネーゼは子供の頃から大好きなんですよ。洋食いいですよねえ。作って食べようかなと思ったけど、粉チーズを切らしているのでした。ぐぬぬ。
ぬりかべはこう来ましたか。これは思いもかけない決着でした。
この手のホラーは個人的に心霊よりゾクゾクします。
しかしここまで麺しばりということは、次回の飯テロはどうなっていくのでしょうか(笑) それとも日本食しばりなのかな?
ナポリタン、いやジャポネーゼは子供の頃から大好きなんですよ。洋食いいですよねえ。作って食べようかなと思ったけど、粉チーズを切らしているのでした。ぐぬぬ。
ぬりかべはこう来ましたか。これは思いもかけない決着でした。
この手のホラーは個人的に心霊よりゾクゾクします。
しかしここまで麺しばりということは、次回の飯テロはどうなっていくのでしょうか(笑) それとも日本食しばりなのかな?
NoTitle
しかし、今回のジャポネーゼ、こないだの天ぷらそばのかき揚げと同じくらい赤い気がしますなw
辛味成分がふんだんに使われているのも共通点かなとw
上手く言えないですが、このぬりかべ、個人的には結構深い隠喩が潜んでる気がしました
これは、自分と他者の間に不必要に作る、物理的じゃなくて精神的な壁なのかなと
辛味成分がふんだんに使われているのも共通点かなとw
上手く言えないですが、このぬりかべ、個人的には結構深い隠喩が潜んでる気がしました
これは、自分と他者の間に不必要に作る、物理的じゃなくて精神的な壁なのかなと
NoTitle
『エイリアン魔獣境』って読んだことないんですけど
そこら辺からイメージ広げた作品なんですね。
それも読んでみたくなりました
そこら辺からイメージ広げた作品なんですね。
それも読んでみたくなりました
- #19417 面白半分
- URL
- 2018.06/02 18:36
- ▲EntryTop
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Re: ダメ子さん
ダメ子さんの周りにそれぞれ一癖ある人たちが集まるのも、もしかしたら……(笑)