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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ60位 招かれざる客 笹沢左保

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     かねてより名前は聞いていたが、なんとなく敬遠していた作品で、読んだのは大学に入ってからである。当時はサークルの人間関係でつまづいたり、いきなり難しい哲学の演習に遭遇したり、浪人時に計画していた本格的な思弁SF長編はまったく書けなかったり(余談だがそれから20年して長編はこのブログで「幻想帝国の崩壊」として完成した。人間、なにごともはやばやと諦めないものである)と、「こんなはずじゃなかった」のどん底にいて、ものすごく暗い気分であった。そして、そんな気分のときに笹沢左保など読むものではないのである。「木枯し紋次郎」をはじめとする歴史ものや、この「招かれざる客」「空白の起点」などのミステリで終始一貫しているのが、作者の徹底的なまでの「人間不信」である。もう何を読んでもこれが徹底していて、大抵の作品で、悪党は根性のひん曲がった悪党であり、悪党に虐げられた善人は、実は裏ではそんな悪党よりも二枚も三枚も上手の悪党なのだ。ここまでひどい人間不信は、比べるものとしたら山田風太郎のそれくらいしかない。この小説の、完全に「問題編」と「解決編」が分離された、ちょっととっつきの悪い構成も相まって、読んだわたしの精神状態は地獄の底のように落ち込んでしまった。

     以来、20年以上を経ての再読である。精神安定剤のせいでいくらかマシになった精神状態で読んでみるとどうであろうか。

     読んでわかったが、この本の構成は失敗である。問題編と解決編を分離した理由はよくわからないが、与えられたデータをもとに読者に推理させるためには、推理しなくてはいけない要素と変数が多すぎて、推理パズルとしては成立しないのである。成立したとしても解決に至れるのはよほどのマニアだけであろう。むしろ、最初から、後半の主人公であるヒューマンな刑事の視点ひとつに絞って、ハードボイルドミステリのように話を進めて行ったほうが読みやすくて面白かったのではないかと思う。

     トリックの至れり尽くせりについては、笹沢左保、サービス過剰もいいところだ。不可能犯罪あり、密室あり、アリバイ崩しあり、しまいには暗号の謎と、動機の謎までくっついてきて、動機の謎が解明したときの、これまでの物の見方がネガとポジのようにひっくり返る瞬間は、謎解きミステリファンだけが味わえる興奮をたっぷりと堪能させてくれるだろう。高木彬光の名探偵、神津恭介なら、「非ユークリッド」と評するかもしれない。

     というわけで、意外と面白かったが、これがミステリの代表作とされてしまうのは笹沢左保にとって気の毒な気がする。ある意味、佐野洋よりも中距離ヒッターかもしれないなあ……。むろん、「木枯し紋次郎」というホームランは除いてだけど。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    古本屋で売ってるの見たことないですから、これはもう電子書籍で読むしかないのではないかと思います。

    やってくれてますよ笹沢左保。よくこんなこと考えつくなあ、であります。模倣作が多くてすでに陳腐化してるトリックですが、この段階で思いついてたのはすごい。

    NoTitle

    問題編と解決編がある構成と書かれてもピンと来てないので
    これは未読かもしれません。

    ただ笹沢作品は何作か読んでいてあまりの”本格”さに驚きました。
    どうもこの「招かれざる客」はやりすぎミステリの体のようですね。
    これは読みたい。
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