映画の感想
「惑星ソラリス」見た
図書館から借りてきた「Wの悲劇」を見て、脚色のあんまりさにガッカリした。青春映画としては面白いのかもしれないがミステリ映画としてはダメだな、と、もうどうにでもなれ、という思いで、原稿を書く際のBGVとするつもりで「惑星ソラリス」をかけた。
BGVどころか。テレビにかじりつくようにして見入ってしまった。こんな面白いSF映画、見たことない。
成功のポイントは、やはり、「海」を驚異のSFXで撮らなかったことにあるだろう。まあ、これについては、「撮れなかった」という技術的な面もあるのかもしれないが、「2001年宇宙の旅」的な、ハードな「見世物的」なところは薄い。その代わりとして、疲れた中年男を主人公にして、いかにもビンボーな廃棄基地における密室劇にしたところが、この映画を「永遠の古典」にしていると思う。
そこから始まる「人間とは何か」と「疲れた中年男の恋愛ドラマ」が実にもう濃厚で、前半三分の一を回ったところからは退屈なんぞしている暇がなかった。セリフの一言一言が意味深で、ある程度の呼吸さえ飲み込めば実に心地よい悪夢世界を楽しめる。
ほんと、レムの「ソラリスの陽のもとに」ってこんなに面白い話だったっけ、って、図書館で確かめたくなったほどだ。タルコフスキーの脚色にレムは怒ったそうだが、タルコフスキーも、エッセンスとポイントはきちんと押さえていると思う。
たしかに「2001年」と比較されるだけの傑作である。途中差しはさまれる日本の映像はまあ、「ご愛敬」みたいなものだ。
ソ連映画と敬遠している人がいたら、これはむしろ「クトゥルフ神話」のSF的側面を映像化できた代表的傑作、と思って見ることをおすすめしたい。
いやあこれはすごい。いいもの見させてもらいました。
BGVどころか。テレビにかじりつくようにして見入ってしまった。こんな面白いSF映画、見たことない。
成功のポイントは、やはり、「海」を驚異のSFXで撮らなかったことにあるだろう。まあ、これについては、「撮れなかった」という技術的な面もあるのかもしれないが、「2001年宇宙の旅」的な、ハードな「見世物的」なところは薄い。その代わりとして、疲れた中年男を主人公にして、いかにもビンボーな廃棄基地における密室劇にしたところが、この映画を「永遠の古典」にしていると思う。
そこから始まる「人間とは何か」と「疲れた中年男の恋愛ドラマ」が実にもう濃厚で、前半三分の一を回ったところからは退屈なんぞしている暇がなかった。セリフの一言一言が意味深で、ある程度の呼吸さえ飲み込めば実に心地よい悪夢世界を楽しめる。
ほんと、レムの「ソラリスの陽のもとに」ってこんなに面白い話だったっけ、って、図書館で確かめたくなったほどだ。タルコフスキーの脚色にレムは怒ったそうだが、タルコフスキーも、エッセンスとポイントはきちんと押さえていると思う。
たしかに「2001年」と比較されるだけの傑作である。途中差しはさまれる日本の映像はまあ、「ご愛敬」みたいなものだ。
ソ連映画と敬遠している人がいたら、これはむしろ「クトゥルフ神話」のSF的側面を映像化できた代表的傑作、と思って見ることをおすすめしたい。
いやあこれはすごい。いいもの見させてもらいました。
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~ Comment ~
ある日突然、あなたは偽者だから消えてくださいませ言われても納得がいかない
ソラリスってなんや。ソラオソロシス
どうも此の映画見てると、ソラリスは人類の事を「理解」していてその上で試しているっぽい印象を受けるのですよね。でもですよ、人類がソラリスなんて訳ワカメを理解できないなら、ソラリスだって人類なんて意味不明なものの事なんて判る訳が無い。そもそも、海全体が生命であったなら、生まれてこの方「他の存在」なんて認識すらした事が無かったろうし、「自分でない存在」なんて理解できる訳が無い。知能が高いとか低いとかではなく、概念があったのかね。人間の記憶から創造された物も、ソラリスが何かの考えが有ってやった事なのか、呼吸をしたら息が吸われ吐かれる的な極自然な現象でしかなかったのか、すら判らない。更に言うならば、ソラリスは人類と言う「存在」を認識してたのかね。
謎が謎呼ぶ殺人事件。総ては作者が投げっぱなしのまま終わってしまっただよ。
どうも此の映画見てると、ソラリスは人類の事を「理解」していてその上で試しているっぽい印象を受けるのですよね。でもですよ、人類がソラリスなんて訳ワカメを理解できないなら、ソラリスだって人類なんて意味不明なものの事なんて判る訳が無い。そもそも、海全体が生命であったなら、生まれてこの方「他の存在」なんて認識すらした事が無かったろうし、「自分でない存在」なんて理解できる訳が無い。知能が高いとか低いとかではなく、概念があったのかね。人間の記憶から創造された物も、ソラリスが何かの考えが有ってやった事なのか、呼吸をしたら息が吸われ吐かれる的な極自然な現象でしかなかったのか、すら判らない。更に言うならば、ソラリスは人類と言う「存在」を認識してたのかね。
謎が謎呼ぶ殺人事件。総ては作者が投げっぱなしのまま終わってしまっただよ。
Re: 大海彩洋さん
レムは何冊か読みましたが、レムのいいたいこともよくわかるんですよ。あの人は頭が良すぎて、「わけのわからないものがどう考えるのかよくわかったうえでそれを書いたところ読む人間にはわけがわからない小説」ばかり書くんですから。あの人、ユーモアものも得意で、今は絶版になってますが「宇宙創世記ロボットの旅」という連作短編集と、「ロボット物語」という短編集は、読んでいてゲラゲラ笑えるSFなんですが、そこに登場するロボットたちが、いったいどういう思考の果てにそうした行動をするのかが、作者のレム以外にまったくわからないという代物で、いやはや、頭いいだけではノーベル文学賞は取れない、ということをわからせてくれますな(^^;)
あの人の長編の大半では、出てくる異星種族とは「コミュニケーション自体が成立しない」、もしくは「未来人との間ですらコミュニケーションが成立しない」ので、タルコフスキーが「ソラリスの海とのコミュニケーションが成功に一歩近づいた! よかったね! ハッピーエンド!」という形に落ち着けてしまったのは許せないでしょうなあ……。
睡眠時無呼吸症候群ですが、ほんとにおれはあとどれくらい生きられるんだろう、と思うくらいにCPAP療法器と冷戦状態にあります(笑) なんとかCPAP療法器とコミュニケーションを成立させて、朝までぐっすり寝たいのですが(^^;)
あの人の長編の大半では、出てくる異星種族とは「コミュニケーション自体が成立しない」、もしくは「未来人との間ですらコミュニケーションが成立しない」ので、タルコフスキーが「ソラリスの海とのコミュニケーションが成功に一歩近づいた! よかったね! ハッピーエンド!」という形に落ち着けてしまったのは許せないでしょうなあ……。
睡眠時無呼吸症候群ですが、ほんとにおれはあとどれくらい生きられるんだろう、と思うくらいにCPAP療法器と冷戦状態にあります(笑) なんとかCPAP療法器とコミュニケーションを成立させて、朝までぐっすり寝たいのですが(^^;)
NoTitle
うん、私は原作も、タルコフスキーの映画も、それぞれとして好きです。でも、タルコフスキーのマニアックなファンとしての私は、やっぱり映画の方がいいな。SF映画である一方、濃厚な精神世界を見事に映像で描ききっていました。
タルコフスキーが好きすぎて、学生時代にイタリアを放浪中、地図だけを頼りにローカル電車とバスを乗り継いで撮影現場を見に行った大海です^^; よく生きて帰ってきたなぁ、私。もちろん、日本人は全く見かけませんでしたし、観光客皆無でした。
あ、ポールさん、その後睡眠時無呼吸はいかがですか。CPAPが割とスムーズに導入できたとのことで、よかったなぁと思いました。なかなか上手く装着できない人も多いそうですものね。
くれぐれもお大事に!
タルコフスキーが好きすぎて、学生時代にイタリアを放浪中、地図だけを頼りにローカル電車とバスを乗り継いで撮影現場を見に行った大海です^^; よく生きて帰ってきたなぁ、私。もちろん、日本人は全く見かけませんでしたし、観光客皆無でした。
あ、ポールさん、その後睡眠時無呼吸はいかがですか。CPAPが割とスムーズに導入できたとのことで、よかったなぁと思いました。なかなか上手く装着できない人も多いそうですものね。
くれぐれもお大事に!
Re: miriさん
ケルヴィンを演じたあの俳優さん、なんかまさに「ロシア人」って顔をしているように思えるのはなぜだろう……それも「ロシアの平民」って顔に見える。
ハリー役の女優さんも美しかったなあ……。
ハリー役の女優さんも美しかったなあ……。
NoTitle
> ほんと、レムの「ソラリスの陽のもとに」ってこんなに面白い話だったっけ、って、図書館で確かめたくなったほどだ。タルコフスキーの脚色にレムは怒ったそうだが、タルコフスキーも、エッセンスとポイントはきちんと押さえていると思う。
レムさんは、やはり最後らへんのことなどを怒っていたそうです。
昨年「100分で名著」でそんなこと言っていました。
それも面白い番組でした(未読なので)。
> 成功のポイントは、やはり、「海」を驚異のSFXで撮らなかったことにあるだろう。
私もそう思います。
今現在ではダメです、この時(のソ連)だからこそって感じですよね~!
>疲れた中年男を主人公にして、いかにもビンボーな廃棄基地における密室劇にしたところが、この映画を「永遠の古典」にしていると思う。
>そこから始まる「人間とは何か」と「疲れた中年男の恋愛ドラマ」が実にもう濃厚で、前半三分の一を回ったところからは退屈なんぞしている暇がなかった。
あの俳優さんが良いのですよね~!
鑑賞直後はいまいちと思わないでもなかったけど、
今思えば、あの俳優さんが良かったです。
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レムさんは、やはり最後らへんのことなどを怒っていたそうです。
昨年「100分で名著」でそんなこと言っていました。
それも面白い番組でした(未読なので)。
> 成功のポイントは、やはり、「海」を驚異のSFXで撮らなかったことにあるだろう。
私もそう思います。
今現在ではダメです、この時(のソ連)だからこそって感じですよね~!
>疲れた中年男を主人公にして、いかにもビンボーな廃棄基地における密室劇にしたところが、この映画を「永遠の古典」にしていると思う。
>そこから始まる「人間とは何か」と「疲れた中年男の恋愛ドラマ」が実にもう濃厚で、前半三分の一を回ったところからは退屈なんぞしている暇がなかった。
あの俳優さんが良いのですよね~!
鑑賞直後はいまいちと思わないでもなかったけど、
今思えば、あの俳優さんが良かったです。
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- #19549 miri
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- 2018.08/06 18:52
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Re: miss.keyさん
「両者とも『知性』は過剰に持っているものの、あまりに異質すぎてどちらがどちらを『理解』することもできない」というどうしようもないコミュニケーション不全の状況。
そういうところがこの映画では意図的に回避されていたので、レムは腹を立てたんだろうと思います。
タルコフスキーは「ストーカー」ではストルガツキー兄弟とももめた模様で、ボリス・ストルガツキーはエッセイでは「自分たちの作品を題材にした映画は何本かあり、うち一本は世界的な評価を受けている」と語るだけにとどめているので、ストルガツキー兄弟が映画をどう思っていたのかはよくわかりません。
SF作家とはそりがあわなかったのかなタルコフスキー監督。