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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ66位 写楽殺人事件 高橋克彦

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     大学の頃、鬱のどん底にいたときに、図書館で借りて読んだ。とてもつまらなかった覚えがある。それ以来、高橋克彦の浮世絵ものは敬遠してきた。あれから20年。久方ぶりの再読である。はたしてどうか。

     本書のいちばんの魅力は、なんといっても、浮世絵と江戸時代、そして埋もれた「秋田蘭画」と呼ばれる絵の流派についてのすさまじいペダントリーであろう。謎の浮世絵師「東洲斎写楽」とは何者なのか、について、高木彬光の「成吉思汗の秘密」などとは比較にすらならない精緻を極めた議論が行われる。その過程は確かに読み応えがあるのだが……いまひとつピンとこないのだ。せめて図版のひとつくらいはほしいものだ。現代ではネットがあるから好きに見られるが、昔この本を読んだ人たちは画集を横において読んだのだろうか。

     などと思って読んでいたら、途中から、話が妙な展開を見せ始める。そして最終章で、思わずうなってしまった。高橋克彦、こう来るのか、という、反則すれすれ、いや、反則そのものの豪快な真相。こりゃ、確かに、乱歩賞の審査員はたまげたことだろう。虚実のあわいというやつを、これほどまでに見事に表現しきった例もほかにはあるまい。歴史ミステリが歴史ミステリであること自体を人質に取ったようなアクロバティックなひねりが用意されているのである。さすがだ。

     とまあ、こうは思ったわけではあるが、なんとなく、ミステリとしては、文体がどこかとっつきづらい。若書きということもないだろう。作者の高橋克彦が、持論を開陳するときの気持ちよさを感じながら書いていることがよくわかってしまうので興ざめしてしまうのではないかと思う。そのいい例が、「竜の柩」の1巻であろう。あれは作者が盛り上がっていることはわかるのだが、読んでいて苦痛でしかなかった。

     ちなみに、講談社文庫版では、おなじみ中島河太郎先生が解説を書いているのだが、これがもう、『老害』としか言えない解説で、割ってはいけないネタをもうポンポン割りまくる。もしかしたら中島先生、これ以上『ミステリで解説を先に読む人』を生み出さないためにわざとやっていたのかな。

     個人的な評価だが、高橋克彦の入門用として最適な本は、伝奇SFの「総門谷」だろう。作者が絵空事のSFとして割り切って書いているので、妙な自説を開陳されることもなく、陰謀SFとして事件がスピーディーに起き、読んでいて飽きないのだ。ストーリテラーとしての高橋克彦の良さがよく出ているB級SFの佳品だと思う。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    総門谷は面白いですよね。総門の正体はああ、あれか、とびっくりできますし。Rの阿黒編以降は明らかにやりすぎですけど。

    権田先生もすごかったからですからねえ。まあでも、一番の「確信犯」の極悪人は、「藤原宰太郎」先生であることはもはや言をまたない(笑)

    NoTitle

    私は高橋克彦は好きですが
    やはり『総門谷』の人です。
    でも写楽殺人事件は楽しく読んだ記憶があります。

    中島河太郎さんのくだり、大笑いです。
    今となっては権田萬治さんとどっちがどっちだったかあいまいですが。
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