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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ68位 眠りなき夜 北方謙三

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     谷弁護士ものを最初に読んだのは、本書の続編の「夜が傷つけた」が最初。中学の図書館でのことである。そこでトム・コリンズというカクテルを知り、北方謙三の小説世界に触れた。読んだ感覚としては、「面白いけれど素直に乗れない」というものだった。

     その後、「東西ミステリーベスト100」で、この「眠りなき夜」のことを知り、高校に入ってから、古本屋で買って、読んでみた。その時の感想も、似たようなものだった。「面白かったけれど、印象が薄くて、いまいち乗れない」

     それから25年。ずいぶんと久しぶりの再読である。内藤陳が解説で熱のこもった文章を書いていることから、読めばそれなりに面白いことはわかっている。しかも日本冒険小説協会大賞受賞作だ。つまらないわけがない。

     読んだ。そして現在の読後感も、「面白かったけれど、印象が薄くて、いまいち乗れない」。この68位という順位は、「落ち着くべくして落ち着いた位置」であるように思える。道具立てはそれなりに派手だし、プロットも二転三転して面白い。しかし、どうしても、「檻」や「逃がれの街」といった傑作に比べると、落ちる、と思わざるを得ないのである。

     たぶん、比較する対象が対象なのだろう。まず、この「眠りなき夜」は、シチュエーションでいえば、船戸与一の「山猫の夏」であるが、道具立ての派手さでは、いくら頑張っても、「山猫の夏」に勝てない。なにしろあっちは拳銃やライフルにくわえて、火炎瓶をくっつけたばかでかい弓、などという卑怯なまでに意表を突いてくる道具で死屍累々の状況を作っていくのであるから、使えても拳銃がいいとこ、後は肉弾戦の北方謙三小説では分が悪いのである。かといって、人間描写で勝負しようとすると、北方謙三らしからぬ一人称ハードボイルド小説であるこの本では、「一人称小説を書くために生まれてきたようなハードボイルド小説作家」である志水辰夫の諸作にかなわないのである。そんなわけで、「面白いのだがどうも煮え切らない」。

     もし、これが、「檻」のような三人称で書かれたハードボイルドだったら、評価もまた変わって来ただろうが、そうなると本書は「檻」と比較されることになる。そして、「檻」はハードボイルド作家としての北方謙三の「到達点」であるのだ。いくら「眠りなき夜」ががんばっても、「到達点」には届きようがない。

     そう考えると「間の悪い」不幸な小説であるなあ。面白いのに……。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    いろいろとサイトを覗いていたら、わたしのほかにも、この「夜が傷つけた」でミステリに出てくる酒について興味をもつようになったという人がいて妙にうれしかった。

    それだけ、「夜が傷つけた」のトム・コリンズはうまそうなんですよね。小説ほど凝ったトム・コリンズは普通つくらないそうですけど。

    本書は面白いけれど、北方謙三と冒険小説ブームに乗ってランクインした感は強いですね。人気投票らしいといっちゃらしいんですが。

    NoTitle

    北方謙三でトム・コリンズというカクテルを知る

    ちょっと流用したいフレーズです。

    本作も「夜が傷つけた」も読んでいませんけど。
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