不快(壊れた文章)
生殺与奪
生きるも死ぬも自分の自由にはなりはしないのはわたしには当然の事実だったし、大方の人間がそうであろうとも思う。わたしは幼児期から青年期における成長過程において、「両親はいつでもわたしの養育をやめようと思えばやめられる」という強迫観念にとらわれてきたし、青年期後期からいま現在に至るまで、「両親はいつでも紙切れと署名とハンコひとつでわたしを精神病院に放り込んで二度と外へ出さないでおくことが可能である」という強迫観念にとらわれている。これはもう、わたしの内面にあっては否定しようのない「事実」なのだ。そしてわたしは、そんな両親との「共依存」状態に入っているため、飛び出して外へ行くということができない。わたしは麻薬中毒患者のように、週末には実家に帰っている。それならそれで家族の愛情を感じることができればいいのだが、わたしにとってはそこには「猜疑心」しか存在しない。「隙を見せたら精神病院」それがいまのわたしの行動の基準になっている。もし、わたしがいまの実家に不満を漏らせば、わたしは精神病院の大部屋へ送られてしまうのではないか。わたしはそれが怖い。隙を見せず、顔色をうかがい、「自分が両親の完全なコントロール下にありますよ」という擬態を続けなければならない。そして、「両親の完全なコントロール下」にあることは、この擬態を何十年とやってきたことにより、すでにわたしの骨肉となっている。「共依存」は深まるばかりであり、発展的解消すら望めない。わたしが何度となく自殺を試みてはやめてきた理由もそれだ。「万が一助かったら、その時は完全に精神病院の大部屋へ放り込まれて二度と出て来る可能性はない」という予測が立つからだ。それはわたしにはひとりでいるよりも、家族といるよりもきつい精神的拷問である。わたしは隙を見せるわけにはいかないのだ。このような完全な精神的な袋小路から出るチャンスをわたしはつぶしてしまった。その最後で最大のチャンスが、大学生活だった。わたしはそのとき大学の講義をまじめに受けようとはせずに、積極的にドロップアウトして両親との共依存を断ち切るべきだったのだ。わたしは中途半端に大学の講義を受け、中途半端な成績を取り、そしてなにもかも中途半端な形でドロップアウトした。その中途半端さのツケをいまだに払い続けている。積極的にドロップアウトすれば、死ぬも生きるも完全にわたし一人の問題であり、わたしはひとりでホームレスになってその不幸を愉しみながら死んでいたのではないか。野垂れ死んで無縁仏になっていたほうが、死んだ後も両親と同じ墓に入るよりはよほどマシだったのではないか。そんな気がするくらい、わたしの「共依存」の闇と内面的な憎悪は深い。たまに、法学部に入っていたらどうだったか、と考えることがある。両親は法学部から地方公務員になるのがわたしにとって幸せな選択だったはずだ、というが、こんなところで地方公務員になったら、「共依存」は解消されるどころかより根深くなるだけではないか。地方公務員になり、結婚し、子供ができたら、そう考えると、わたしはおぞけを覚える。共依存=猜疑=恐怖=恐怖=恐怖。それならばわたしひとりだけの責任さえ負えばいいほうがまだしも精神の澄明さをたもつことができるのではないか。別の考え方もできる。法学部に入れば、わたしはドロップアウトする大義名分を手にすることができたのではあるまいか。わたしは大手を振って中退し、世を恨みながら自分の不幸の中で幸福を得ていたのではないか。「共依存」がわたしをゆっくりと蝕む。だからわたしは狂っているのではないか。もしわたしがわたし自身の生殺与奪の権を取り返したとき、わたしはいったい自分に何をするのだろうか。わたしは世の中がより狂気に染まっていくことを願っているのではないだろうか。そして願いは、いずれ数粒の真っ白い青酸カリのタブレットとして現実のものとなるのではないか。わたしは錠剤を冀う。
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NoTitle
この共依存的なものは、自分の母親にあたる女がこれに近い精神状態だと思われます
ええ、こうはなりたくない、っていうのが自分の人生の原動力の1つでもあったりします
幼少期から、面従腹背・面背腹背・面従腹従をその時々で使い分けてきたので、自分は当時精神的に常に疲弊してたのを思い出しましたw
今は、良いは良い、ダメはダメって言っちゃうようになったので、この手の疲弊はなくなりました
ええ、こうはなりたくない、っていうのが自分の人生の原動力の1つでもあったりします
幼少期から、面従腹背・面背腹背・面従腹従をその時々で使い分けてきたので、自分は当時精神的に常に疲弊してたのを思い出しましたw
今は、良いは良い、ダメはダメって言っちゃうようになったので、この手の疲弊はなくなりました
Re: ダメ子さん
そんな、わたしがドグラ・マグラを読んで夜中に「けけけけ」とか笑いながらこういう壊れた文章を書く人間に見えますか?(答:見える(笑))
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Re: blackoutさん
正直、自分でもアンフェアだな、と思いますわたしという人間。でもこればかりはやめろいわれても無理だしなあ。