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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ75位 Wの悲劇 夏樹静子

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     映画になっているのは知っていたし、薬師丸ひろ子が絶叫するのは嫌というほどテレビのCMで見た。だからつまらないんだろうなと思って長いこと読まなかった。イヤな中学生である。浪人中、古本屋で買って、試験会場から帰る上越新幹線の中で読んだ。意外と面白かったが、同時に、「どこがエラリー・クイーンの『悲劇』シリーズに対するオマージュやねん」と思ったのも事実であった。イヤな浪人生である。あれから四半世紀ぶりに再読。

     本書の読みどころは、見事なまでの夏樹静子のミスリードぶりであろう。あまりに正々堂々としているため、「普通の二時間サスペンス」に思えるが、真相はまさに読者の斜め上から不意打ちとして降ってくるのであり、よほどミステリを読みなれた人間でないと、作者のたくらみは見抜けないのではないか。「ひねりを加えた普通のサスペンス」にしてあること自体が作者のたくらみのもっとも図々しいところなのだ。

     と激賞したのはいいが、結末のつけかたまで「普通の二時間サスペンス」路線を踏襲しなくてもいいだろう、と思えるのも事実。もしここの着地をうまくやっていたら、2012年度版でもベスト100は無理でも200位までには入れたのではないかと思えるくらいだ。そういった面で、「惜しい」作品ではある。

     これだけ根性の座った球を投げてきながら、ここが夏樹静子という作家の限界ではなかろうかと思えてしまうのが残念だ。それでも、本格ミステリファンは読んで損はない一作である。

     なんでも、映画版は、映画マニアの皆様方にたいへん評判らしいと聞いて、気乗りはしないものの見てみることにした。冒頭15分で、「ああ、自分は見る映画を間違えたな」と思った。見るのが苦痛なほどとは言わないが、ミステリファンの神経を逆なでしてくるような映画である。劇中劇よりもメインとなる事件のほうが偽装工作がぞんざいで、しかも唐突に真相が発覚するってなんなのだ。そもそも、警察、なにやってたんだ、と腹が立つことおびただしい。メインの事件のほうも夏樹静子に偽装工作と発覚理由を書いてもらえばよかったのに、とミステリファンとしては痛切に思う。

     夏樹静子から本作のたくらみを聞いたとき、フレデリック・ダネイは驚愕したそうだが、リップサービスだろうなあ。それに、この小説、『悲劇』シリーズじゃなくて、カトリーヌ・アルレーの「わらの女」へのオマージュないしリスペクトだと思ったほうがあれやこれやと腑に落ちることばかりなんですけど……。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくあられさん

    つまらないです。

    売れているのは、あれは「難しい謎解きを読まなくてすむ」小説だからです。

    要するに観光小説なのです。

    NoTitle

    >へえ、じゃあ、内田康夫の……
    ていうか、内田康夫ってどうなの?
    面白いの?
    ていうか、ていうか、何であんなに売れてるの?

    Re: 22ひゃく事件さん

    「ミステリ読むのが好きなんです」

    「へえ、じゃあ、内田康夫の……」

    とか言われるのがいちばん困る男(^^;)

    NoTitle

    >ふっ、自分の教養が怖い。
    いやー、かねがね、その教養の深さと見識の高さには一目も二目もおいてまして…(スリスリ)ってw

    >(←いや誰でも知っている歌だ(笑))
    「音楽を聴くのが趣味」と言っておいて、「ビートルズって聴いたことがないんです」とのたまう人が普通にいる時代だからなー(^^;

    Re: チョコレートひゃく個!さん

    ふっ、自分の教養が怖い。(←いや誰でも知っている歌だ(笑))

    Re: miss.keyさん

    ミステリファンには、原作くらいの「控え目さ」でちょうどいいんですよ。

    でも、そのままテレビドラマにすると、ほんとに二時間サスペンスにでもしないとどうしようもない作品であるのも事実(笑)

    NoTitle

    >雪は昼間までに雨へと変わるだろう~♪
    ブリッツさんが、そげな歌を知ってたのが一番驚いただ(笑)
    • #19904 チョコレートひゃく個! 
    • URL 
    • 2019.02/17 16:38 
    •  ▲EntryTop 

    本家見てびっくり

     昔々の話、テレビドラマで「Wの悲劇」を流していた。暇だったので見てた私。しかし記憶のストーリーと全然合わない。主人公の女優も出てこない。おかしい、本当にこれ「Wの悲劇」?そう、実は角川映画の「Wの悲劇」こそが原作無視の似非Wの悲劇だったのだ(笑)。後でそのことを知った私の感想は・・・原作つまんねー。ソレデイイノカ。

    Re: miriさん

    「早春物語」、見たことなかったのでググったら、赤川次郎原作なのに「原作のミステリー性は消え」ってw 何のために赤川次郎原作にしたんだw いやー映画産業、ムチャクチャやりますなあ。澤井監督にしたら「Wの悲劇」なんか、良心的な方だったんですな(^^;)

    「素晴らしき戦争」今度こそ録画を成功させたいです。前にテレビでかかったのは、15年くらい前ですから、ほんと「一期一会」ですね(^^;)

    こんばんは☆

    >冒頭15分で、「ああ、自分は見る映画を間違えたな」と思った。

    私は原作を知らないので、そして若い時に見たので
    とても楽しく見られて、
    (内容が変だと分かるようになった)今でも好きな映画です(笑)。

    当時、赤川次郎をよく読んでいて
    「早春物語」が好きだったんですが
    映画を見たら、一番大事な人物が居なくて
    全然違う話になっていて、ビックリ仰天しました。
    ものすごくショックでした!

    それ以降、私は、映画は映画
    原作は原作と、見るようにしています。

    どちらも出来が良いという事もたまにはあるでしょうけど
    もう今はほとんど読書をしなくなったので(笑)
    今後はそういう心配はあまりないですね(笑)。

    ポールさんも映画は映画としてお楽しみいただけると幸いです。
    多分、原作をお好きなら映画を見ないのが正解かもですね?(笑)

    「素晴らしき戦争」ですが、再放送もあるし
    ゆっくりとお待ちしていますので
    ご都合の良い時にご鑑賞くださいね~♪


    .

    Re: 建ひゃく記念日さん

    角川映画も嫌いってわけじゃないんですけどね(^^;) アニメの「幻魔大戦」なんて、映画館に見に行きましたもん。「ハルマゲドン接近」以外すべてのカードを隠してCM打つのはずるいですな。サントラほしいけどバカみたいな高値で……。

    ここだけの話ですが、ラストは犯人と一対一になって物陰に刑事が隠れてます(笑)

    85年から2012年までに何冊のミステリが出たと思うんですか! 200位に入れたら、それだけでもミステリ史上屈指の名作ですよ!(^^;)

    朝方は振ってましたが、「雪は昼間までに雨へと変わるだろう~♪」ってなわけで、仕事から帰ってきたらすでに溶けて流れて跡形もありませんでした(^^)

    NoTitle

    >だからつまらないんだろうなと思って
    角川映画の原作はCMが流されすぎたことでかえって安っぽいイメージになっちゃって敬遠しちゃったというのはありますよね。
    横溝正史なんて、映画も含めて絶対ツマンナイんだろうなと思っちゃったしなー。
    今見ると『悪魔の手毬歌』の映画も、最後のひょうひょうと寂しい感じなんてホントいいもんなー。
    『悪霊島』も全体的には???だけど(というか、あれは原作が悪いのかwww)ラストのレット・イット・ビーが流れるシーンはよかったもんなー。
    ていうか、『悪霊島』は岩下志麻のあの演技に尽きるのか?(^^;

    >薬師丸ひろ子が絶叫
    当時、渡辺典子の方がファンでしたね(爆)
    全然関係ないですけど、三田寛子。
    今よくTVに出ているけど、当時こんなに残る人だとは夢にも思わなかったなー(笑)
    そういえば、原田知世はいまだカフォオレで残ってるよね(^^)/

    >結末のつけかたまで「普通の二時間サスペンス」路線
    もしかして、ラストは断崖絶壁とか?(爆)

    >これだけ根性の座った球を投げてきながら
    そんなこと言われると読んでみたくなるじゃないか!(笑)

    >ベスト100は無理でも200位までには入れたのではないか
    それは何?大したことはないってこと!?

    >ミステリファンとしては痛切に思う
    あれはミステリファンのための映画ではなくて、薬師丸ひろ子のファンのための映画です(笑)

    >「わらの女」へのオマージュないしリスペクトだと思ったほうが
    そんなこと言われるとますます読んでみたくなっちゃうじゃないか!(^^;

    そっちは雪どうでした?
    こっちは朝からサラサラ降っていて、結構粉雪っぽかったんでこれは積もるかなーと思っていたら、逆に一昨日の分まで溶けちゃったって感じです。
    しかし、イヤんなりますよね。関東の東側ばっかだけ降って。
    癪に障るから、来週末は関東の西側で大雪が降るよう、2人で祈りましょう(爆)
    • #19889 建ひゃく記念日 
    • URL 
    • 2019.02/11 18:22 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 面白半分さん

    そう、それです。(^-^)

    手垢のついた古いネタか…と思わせておいてそれがすべて陽動作戦、という作りはやはりベテランですね。

    Re: 椿さん

    映画は、この小説が「劇中劇」として使われていて、真相もばっちり描かれていて、その真相と映画の本筋が何の関係もない、という、「角川め名前だけが欲しかったのか」映画ですから、別に普通に監督と脚本が劇中劇の事件も考えてくれたら、普通にアイドル映画として楽しめたのになあ、と思うと残念でした。(ミステリファンとしては)

    夏樹静子の本作はそれだけで完結した良作ですのでぜひお読みください~。

    NoTitle

    読んだかどうかあやふやです。

    消化物をどうにかする時間誤認のトリックってこれでしたか?

    NoTitle

    > 嫌というほどテレビのCMで見た。だから……
    すごくわかります(笑) 「たたりじゃ」とか「あの帽子」とかもそうなんですが、CM でおなかいっぱいになりすぎちゃうところがあって、結局映画にも原作にも手が出ないみたいなところが。「八ツ墓村」だけは後で読んで、すごく面白かったですけれど。

    「Wの悲劇」も、ポールさんの感想からも面白そうですし気になるんですけどいつ手に取ることになるかなあ(^-^;
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