FC2ブログ

    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ76位 伯林―一八八八年 海渡英祐

     ←「スター☆トゥインクルプリキュア」2話まで見る →「ちいさな独裁者」見た
     中学生生活を3年もやっていて、単にミステリとSFとTRPGにばかりうつつを抜かしていたわけではない。きちんと勉強もやっていた。受験戦争に勝ち抜き、わたしはI県でも県民揃って認めるトップクラス進学校の公立高等学校に合格した。そんなわたしが入学して最初にやったことは、図書室へ行き、面白そうなミステリを借りることであった。このことからもわかるように、受験戦争くらいで、ミステリファンがミステリを読むのをやめるわけがないのである。その時借りたのがこの本「伯林―一八八八年」だった。借りた理由としては、この「東西ミステリーベスト100」に載っている小説で、まだ読んでないもののうち、最初に目に留まったのがこれだったから、ということでしかない。

     というわけで読んでみたが、ミステリとSFとTRPGばかりに夢中で、明治文学も森鴎外も読んでいなかったわたしは「地味な作品だな」と思っただけであった。当然、内容なんて忘れている。30年ぶりに再読。

     結論だが、これはすごい。大傑作だ。こんなすごい歴史ミステリが76位で現在絶版品切れでいいのか、と心底思う。登場人物、舞台設定、トリック、プロット、もう最高だ。質的にこれと同等なものを探すとしたら、山田風太郎の短編「黄色い下宿人」くらいしか思い当たらない。長編では皆無である。

     しかし作者の海渡英祐もたいへんだ。本書で江戸川乱歩賞を獲ったのはいいとして、これと同ランクの作品をコンスタントに求められたら、普通はつぶれる。寡作ながらも多ジャンルにわたって質の高い作品を発表し続けることができた、というだけでも、作者の作家としての才能がよくわかる。さらにいってしまえば、作家としてのキャリアすべてを費やしても、本書と「同ランクの」作品はついぞ書くことができなかったらしい。全作品が絶版品切れ状態であり、その事実にもう悔しくて仕方がない。

     とにかく、歴史ミステリファンと、森鴎外ファンは、アマゾンのプレミアなど度外視してでも入手して読むべし。作者の二重三重のたくらみと、哀切極まるエンディングは、絶対に満足いくものだと思う。満足いかなかったとしたら、たぶんあなたにはミステリという文学そのものが合っていないのだろう。

     しかし、作者の海渡英祐が作家を目指すきっかけになったのが、よりによって高木彬光「成吉思汗の秘密」の資料集めからですか。よくもあんなゲテモノのようなミステリから、このような芸術的な歴史ミステリが生まれたもので。何が影響してどうなるかなんて、人間にはわからないものでありますなあ。
    関連記事
    スポンサーサイト



    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    【「スター☆トゥインクルプリキュア」2話まで見る】へ  【「ちいさな独裁者」見た】へ

    ~ Comment ~

    Re: ひゃくあられさん

    内田康夫が被害者になるのだったら誰でもいいな(笑)

    NoTitle

    山村美紗と西村京太郎コンビのSM探偵なんてどう?(^^;

    Re: 22ひゃく事件さん

    探偵役は高木彬光だなw あの人、松本清張には恨み骨髄だったらしいからw いや、高木彬光はワトスン役にして、名探偵は高木の愛弟子の海渡英祐とかどうだw

    NoTitle

    >「松本清張が犯人のミステリ」を書けばイケるんとちゃうか(笑)
    あっ!そこは思いつかなかった(笑)
    ていうか、犯人かよ!(爆)

    >誰が書くんや(笑)
    犯人はともかく、探偵役なら阿刀田高とか書いてそうな?

    Re: 椿さん

    おお、お読みになられましたか。

    哀愁漂う結末なんて、もう、しびれますよね。

    明治文学と鴎外ファンにはぜひ読んでほしいミステリであります。

    (でも個人的に鴎外には小説に専念して医療からは手を引いてほしかったと思うミリタリーファン(^^;))

    NoTitle

    本が来たので読みました! 家事もろもろ放り出して一気読みしてしまいました!
    トリックも面白かったですが、鷗外のキャラクターと憂愁あふれるロマンスがとても良くて。1888年のプロイセンという舞台がまた本当に秀逸で。
    面白い本を教えてくださって、本当にありがとうございました!

    Re: チョコレートひゃく個!さん

    ストーリーは読んでのお楽しみで。


    赤川次郎はともかく、日本だったら、乱歩が探偵のミステリはけっこうあるようだから(思い出せないけど)、ここは一発、

    「松本清張が犯人のミステリ」を書けばイケるんとちゃうか(笑) 誰が書くんや(笑)

    Re: 面白半分さん

    まあ、この何年かは、古本屋にもそう並んではいない作品でしたからねえ……読まれないで忘れ去られるに任せるには惜しい佳作だと思います。

    NoTitle

    >「伯林―一八八八年」
    タイトルは知ってた。なぜ知っていたのか知らないが、知っていた。
    でも、海渡英祐って作者名は初めて聞いた。
    そうか。「伯林―一八八八年」の作者って、海渡英祐という人だったんだ。
    それはともかく、どんな話なの?(^^;
    ていうか、森鴎外が探偵役のミステリー小説があるなら、あとウン十年もしたら赤川次郎が探偵役のミステリー小説とかも書かれるんだろうか?
    でー、その場合、やっぱり猫はでてくるんだろうか?(笑)
    • #19903 チョコレートひゃく個! 
    • URL 
    • 2019.02/17 16:33 
    •  ▲EntryTop 

    NoTitle

    森鴎外が探偵役ってところで記憶がないので
    読んでいないんだろうなあ。
    ただ東西ミステリーベスト100に載ってたことは記憶にあります。

    Re: 椿さん

    なにしろ探偵役が森鴎外ですからねえ。史実との絡め方もすばらしいです。今調べたら文庫が1円から出物があるみたいですな。わたしも買おうかな(床が抜ける……(笑))

    NoTitle

    毎度ながらポールさんの書評が面白そうで、ついポチって来てしまいましたですよ。
    歴史ミステリ良いですよね。届くのが楽しみです。
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【「スター☆トゥインクルプリキュア」2話まで見る】へ
    • 【「ちいさな独裁者」見た】へ