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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ77位 大いなる幻影 戸川昌子

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     高校生の時に古本屋で入手して読んだ。サプライズエンディングが見事に決まっていて、面白かったのを覚えている。25年ぶりに再読。ちょっと期待大。

     お金を節約したかったので図書館に取寄せを頼んだのだが、牛久市の図書館からやってきたその本は、昭和39年発行の講談社ロマン・ブックス版だった。当時の価格で230円というところに時代を感じる。牛久市立図書館、物持ちがいいなあ。土浦市立図書館だったら、まず廃棄処分ものだからなあ。

     で、読んだのだが、素直に面白い作品だった。二重三重に張り巡らされた伏線の妙を楽しむタイプの小説である。犯人の計画が進行するにつれ、あれにもこれにも意味があったのか、と思わせるテクニックは、シャンソン歌手の書いた処女長編とはとても思えない。人間模様の異常性とねじくれた動機については、「新本格の隠れ原点」と評価しても何ら嘘ではないレベルである。江戸川乱歩賞受賞もこれなら納得だ。

     ……とはいうものの、もしかしたらこれは「戸川昌子入門編」でしかないのではないか、と思えるのも事実。戸川昌子が本領を発揮するのは、短編「黄色い吸血鬼」のようなどろどろした、ニーチェのいうところの人間のデュオニソス的側面が全開になっている作品であり、本書のような、犯人のメカニカルなシステムが時限爆弾のように進行していく話はむしろ脇道らしいのである。

     入手困難だそうだが、無理をしてでも出版芸術社の「ふしぎ文学館」シリーズにある「黄色い吸血鬼」あたりを読んでおくべきかもしれないな、と思った。

     あと、本書を読んでいてつい頭に浮かんだのが、うちのブログと長いことつきあってくれている「小説ブログ『DOOR』」の主宰者で、わたしが勝手に『戦友』だと考えているlimeさんの一連のサスペンス小説である。

     limeさんには一時期小泉喜美子をプッシュしまくったが、むしろあの人のサスペンス小説の世界には、小泉喜美子や高村薫のような理性的で冷徹な視点のほかにも、戸川昌子や皆川博子のどろどろした視点も組み入れるとより新しい世界が広がるのではあるまいか。頼まれもしないのにそんなことを考えてしまうのであった。うーむ、自分の小説も書けてないというのに……我ながら修行が足りぬようである。反省して怠惰な自分の脳細胞に鞭をくれて小説を書くのであった。これもひとつの戸川昌子的世界というやつか。おれは病んでるのだろうか。かくて歪んだ精神の男は今日も読書で徹夜するのであった。とほほ。
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    ~ Comment ~

    Re: limeさん

    サスペンスチックな青春エンタですか……。
    パッと思いつくのが、梶龍雄の「海を見ないで陸を見よう」「ぼくの好色天使たち」「灰色の季節」というところですが、まず、時代背景が戦中から終戦後まもなく、といううえに、どれもこれも入手困難でアマゾンでもバカみたいに高いプレミアがついているという代物なのですが、内容的にはもうPCを質に入れてもいいから読め、というレベルの青春ミステリの傑作ですので、もし何かの都合で再刊されたら読んでみてください。損はさせないぜ。

    ちなみに自分の最近書くものは、昔あったユーモアがどんどん影を潜めて、「ホラーミステリ」を突き抜けて「ホラー」になってしまっていると投稿用の草稿を見せた友人がいってたので、このままホラーを書いてやろうと思ってます。あかんわおれ(^^;)

    Re: 面白半分さん

    三段構えの真相といい、嫌になってくるようなその動機といい、うまいですよね。結末のどんでん返しもびしっと決まって、うならされました。

    ほんとうまいもんですよ。恐ろしい作家ですな戸川昌子。キャラクター設定は別にして、陰にトリックとプロットを考えるミステリマニアのブレインがいたんじゃないかと邪推したくなる(笑)

    NoTitle

    戦友と思ってもらって、すごく光栄です。
    (いつでも名前だしてもらってOKですよ)

    最近は、ミステリーというより、サスペンスチックな青春エンタなんてものを書きたくなってしまったダメなミステリ好きです。
    戸川昌子さんは存じ上げないんですが、皆川博子さんは、ちょっと怖いもの見たさで読んでみたいなと思っています。
    超短編は読んだこと有って、あのヒンヤリゾワゾワする感じがけっこう好みでした。
    とはいえ、年々、ライトなものが読みたくなってきてるのも事実で……。
    ドロドロは、リアルだけでお腹いっぱいになっちゃってるんですよね。ミステリ好き失格です。
    読みたいものを書くスタンスは変わってないから、やっぱり年々、各ジャンルも変っていくんだろうな……と思います。
    ポールさんは、変化ありますか?

    NoTitle

    読んではいるものの、仕掛けの部分は思い出せないのですが
    残り数ページでどう決着をつけるのか。おう見事に決まった、
    という記事を読後に残していました。
    新本格の隠れ減点というのもわかる気がします

    それにしても昭和39年発行の本とは牛久もやりますなあ


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