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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ80位 マリオネットの罠 赤川次郎

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     高校生の頃古本屋でこの小説を買い、読んでいたら、部活の後輩に「あれ、ポールさんって、赤川次郎なんかも読むんですか?」といわれてしまったのが懐かしい。マイナーなマニア向けSFとマイナーなマニア向け冒険小説とマイナーなマニア向け謎解きミステリしか読まないと思われていたのだろうか。しかたないだろ、赤川次郎のこの作品も「東西ミステリーベスト100」に入っていたんだから。それにしてもやたらと少女趣味なサスペンスだな、と思って読んでいたら強烈なサプライズ・エンディングにのけぞってしまった覚えがある。赤川次郎、ナメてかかったらやられるな、と実感したのだが、だからといってしらみつぶしに読むまではハマらなかった。世の中にはまだまだマイナーなマニア向け作品がいくらでもあったのである。

     それから25年ぶりに再読。「真犯人」を知っていて読んだわけだが、常に読者の一歩先に奈落を作ってはらはらさせるサスペンスの呼吸を、赤川次郎はよく心得ているな、と再確認した。そして最後のサプライズ・エンディングにさしかかったわけだが、サプライズであるのも道理だ。このエンディング、伏線がない。

     いや、伏線らしきものはあるのだが、その伏線をそうと気づくためのデータが、エンディングの後に供給されるのだから、謎解きのしようがない。読者が作者と知恵の勝負をするというより、「びっくりさせる」ことのほうを優先している感が強い。「死者の学園祭」でも、筒井康隆が読んで「伏線」というものが存在しないことにびっくりしていたが、たしかに、赤川次郎の白状するところの「ミステリを書くとき、犯人は決めていません。そのまま書き始め、結末が見えたら、そこでいちばん意外そうな人物を犯人にするんです」という創作のスタイルも、あながち謙遜や韜晦だけじゃないな、と思えてくる。

     まあ、読んでいる間だけ至福だったら、エンターテインメント作者というのはそれでいいのであって、そういう意味では赤川次郎のサスペンスは、まさに教科書に載せたくなるようなものだと思う。この「マリオネットの罠」のように、サプライズ・エンディングが読後20年を経ても頭に残っているような作品は、赤川次郎としてはむしろ残念な部類に入るのではないか。理想的には、読み終えた瞬間に、太い吐息とともに、これまで読んだことをすべて忘れるような小説が赤川次郎の目指すところではないのか。

     そういう小説は、やはり、この辺りの位置になんとなくランクインするのがいいのではないか。夏樹静子とはまた別の、サスペンスの名手として、それくらいの評価は必要だろうと思われるのである。もっとも、その膨大な冊数の作品と、べらぼうな額の印税を考えると、評価はそれだけで充分だろうと考えたくなる気持ちもわからないではないが……。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくりょう島~ひゃくの鳴く夜は怖ろしいさん

    え? あらすじ?

    「色々あった。」(©清水義範)


    内田康夫は、たぶん物語つきの観光ガイドとして読めば面白いんだと思いますが、誰がそんなもん読むんや、であります。

    NoTitle

    >わたしだってベストセラー作家の本くらい読むし(笑)
    信じません!(爆)
    信じてほしかったら、『蜜蜂と遠雷』のあらすじを原稿用紙2枚以内にまとめよ!
    ていうか、ベストセラーをとっさに『蜜蜂と遠雷』くらいしか浮かばない自分に笑いました(^^;

    >内田康夫の小説は、あれはミステリじゃなくて「季の文学」です
    あ、そうだったの!
    枕草子好きだから、読んでみよっかなー(爆)
    • #19991 ひゃくりょう島~ひゃくの鳴く夜は怖ろしい 
    • URL 
    • 2019.03/24 16:22 
    •  ▲EntryTop 

    Re: miriさん

    赤川次郎、読めば面白いし、できも古今の名作に引けをとらないことはわかってるんです。だけど、この手の世界に足を突っ込むと、

    「この作家は売れているから嫌い」という一種のバイアスがかかってきて(笑) ミステリファンの間では、森村誠一とか西村京太郎とかもそのクチで不当な扱い受けてます。

    ミステリファンのくせにアガサ・クリスティーを読まない、とかね(笑) 

    判官びいきというかなんというか、めんどくさいんですよミステリおたくって(^^;)

    映画でいえば「アカデミー7部門受賞! 全米が泣いた傑作!」よりも「ヨーロッパの小さな映画祭での審査員特別賞受賞作」の方を見ることを優先してしまうやつとか(笑) 深夜アニメの新作は残らずチェックするのにジブリアニメや「エヴァンゲリオン」は死んでも見ないやつとか(笑)

    落語で、そばには目がない食通と言われていた男が死の床で、「一度でいいから、そばをどっぷりつゆに浸して食いたかった」っていって息を引き取るって小噺があるけど、それですね(笑)

    われながら、ヒネたオタクって度し難いですな(笑)

    Re: 八つひゃく村さん

    わたしだってベストセラー作家の本くらい読むし(笑)

    読めば面白いことはわかるんですけどね。こういう世の中をナナメに見てる人間にとっては、西村京太郎と並んで、なかなか手を出しにくい作家ではあります。

    ちなみに、内田康夫の小説は、あれはミステリじゃなくて「季の文学」です。

    Re: miss.keyさん

    何度読んでも新鮮なエンターテインメントというのはある意味エンターテインメントの理想形ですね。鬼平とか剣客商売とか(笑)

    三毛猫ホームズについては施川ユウキの「バーナード嬢曰く」でも似たようなことを登場人物がいってましたなあ。ちなみに自分にはあの漫画の登場人物のひとり、神林しおりがまるで自分のように感じられて(笑)

    Re: 面白半分さん

    読めば面白いことはわかってるんですよ。稀代のテクニシャンで、そのテクニックをテクニックとして感じさせない天分の持ち主だと思います。それであの量産ぶりですからねえ。

    ……クリスティーを読まないマニアと同一の心理ですな(笑)

    冗談は置いといて、本書は華麗で出来がいいサスペンスですよ。サプライズエンディングぶりでは、凡百の作品が束になってもかないませんな。ご一読をお勧めします。

    Re: 椿さん

    三毛猫ホームズも幽霊シリーズも三姉妹シリーズも読めば面白いことはわかってるんですが、それでもマニアが投票やると、上がってくるのはこういう作品だという(笑)

    まあそれはさておき、本書はサプライズエンディングがビシッと決まった華麗なサスペンスの秀作です。椿さんのミステリとも共通する要素多いと思うので(今の作品読んでると)、未読ならぜひご一読をお願いします(^^)

    おはようございます☆

    ある時期までの赤川次郎を(デビュー作以降)全部読んでいたんですが、
    読まなくなって、子育ての間に全部忘れてしまって(笑)

    それは映画も同じなのですが、映画はその多くを再見しているんですが
    小説とかは目の事もあってなかなか難しいです。

    でも、この作品は、ネットで調べて思い出しました。
    特にあの恐ろしかった1シーンは、書いてあった文章がそのまま
    目に浮かんだくらいです(笑)。

    >理想的には、読み終えた瞬間に、太い吐息とともに、これまで読んだことをすべて忘れるような小説が赤川次郎の目指すところではないのか。

    赤川次郎ってポールさんやお友達の皆さまから見ると
    面白くない作家なんでしょうか?

    私が読んでいた頃は
    (まだ赤川さんが会社も辞めていなかった時期もあったように記憶しています)
    評価もわりと高かったように思います。

    持っていた本はもう今は1冊もないけど
    あの頃読んでおいて良かったとも思えるんです。。。


    .

    NoTitle

    >部活の後輩に「あれ、ポールさんって、赤川次郎なんかも読むんですか?」といわれてしまった
    その部活の後輩の気持ち、よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーく、わかるっ!
    同志と言いたい気分だ!(^^ゞ
    ていうか、ブリッツさんのブログを開いて「赤川次郎」の文字を目にした瞬間、全く同じことをつぶやいてしまったわい!(笑)

    >マイナーなマニア向け〇〇〇しか読まないと思われていたのだろうか
    違うんかい!?(^^;

    >世の中にはまだまだマイナーなマニア向け作品がいくらでもあった
    赤川次郎はマイナーでもないし、マニア向けでもないと思うぞ
    ~(笑)

    赤川次郎、ナメてかかったらやられるな
    あまり読んだことないんですけど、「意外にスゴっ!」なのあるらしいですよね。
    赤川次郎、私の初体験はあれ、『幽霊列車』。
    といっても、小説ではなくてドラマの方。
    当時やっていた土曜の夜のサスペンスドラマで、たまたま見たんです。
    主人公の2人、刑事役が田中邦衛、女子大生役が浅茅陽子で。 ←古っ(^^;
    いや、その当時でも浅茅陽子が女子大生?って、無茶苦茶違和感でしたけどね(笑)
    でも、最後の最後。浅茅陽子…、じゃなかった女子大生が刑事の部屋に入るなり、すっぽんぽんになって刑事の布団に飛び込むシーンにコーフンしまくっちゃって(爆)
    いやー、いいお尻…、じゃかった、いいドラマだったぁー(^^;
    (内容は憶えてないけどw)

    >サスペンスの呼吸を、赤川次郎はよく心得ている
    そうそう。そういうところが売れた(る?)理由なんでしょうね。
    ちなみにですけど、(こんなこと言うと怒られるかもしれませんが)例の『サイモン・アーク』を読んでいて思い出したのが、赤川次郎でした。
    もしかしたら、読んでいろいろ参考にしていたのかもしれませんね。

    >犯人は決めていません。そのまま書き始め、結末が見えたら、そこでいちばん意外そうな人物を犯人にするんです」という創作のスタイル
    へー、そうなんだ。
    あ、赤川次郎、好きかも!(^^;
    今更読んでみようかな?

    >読み終えた瞬間に、太い吐息とともに、これまで読んだことをすべて忘れる
    あー、ブリッツさん。それは核心をついているかも!
    でも、あれ。ブリッツさんが大嫌い(らしい)な、内田康夫もそれこそその類の小説を書く人なんじゃないの?
    ま、内田康夫は読んだことないからわからないんだけど(^^;

    >膨大な冊数の作品と、べらぼうな額の印税
    今も書いているんですかね?
    ま、何冊かしか読んでいない作家なんですけど、今の「新本格」だけが正しいミステリー小説と思っている(かどうかは知りませんけどw)人が、赤川次郎を「昭和のミステリー小説」的に小バカにしているのを見るとなぜかやたらとムカつく、そんな作家ですよね(笑)

    三毛猫ホームズ

     むかーし三毛猫ホームズシリーズ?を読みましたな。でもなーんにも残ってないのです。子供だったからなのか、心に残るものが無かったからなのか、たまたま読んだ作品が大量消費型の使い捨て作品だったのか。
     しかしポールさん、よく本を読んでいらっしゃる。すごい。

    NoTitle

    赤川次郎さんは殆ど読んでいないのですが
    たまにアンソロジーとかに収録されている短編をよむと
    あまりの切れ味に驚いてしまったことが何度もあります。

    長編読むならマリオネットの罠からいってみよう

    NoTitle

    赤川次郎さん、けっこうたくさん読んだのですがこの本は未読です。何でって、考えるまでもなくシリーズものを優先して読んでいたからだろうなあ。
    あれだけの多作・量産型の作家さんでありながら、一冊一冊がそれなりに楽しかったというのは思えばすごいなあと。(大傑作! というのではないけれど払ったお金分は楽しませてくれた)

    そうそう、けっこう少女趣味なところがある作家さんですよね。結局一番お気に入りな赤川作品は「午前0時の忘れもの」というミステリではない、かなりリリカルな本だったりします……。
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