ゲーマー!(長編小説・連載中)
1985年(3)
というわけで修也の初めてのコンピュータRPG体験は惨憺たるものに終わったわけだが、それでもゲームに対する情熱は消えたわけではなかった。ベーマガには毎号のように新しいペーパーアドベンチャーが載っていたし、新しいRPGの記事が次々と紹介されていた。本屋へ行けばゲームブックが山積みされていた。黎明はまさに昇る太陽と変わった。アドベンチャーだとかRPGだとか名がつけばどんなクソゲーでも飛ぶように売れ、ゲームブックと名がつけば、どれだけパラグラフ管理がいいかげんで誤植だらけで、なおかつそこらのライターがひと晩で書き上げたような代物でも、出せばベストセラーになる時代だったのである。
修也はNの家でファミコンのコントローラーを操作していた。
「うまく動かないよ、このヘリコプター」
修也がプレイしていたのは、ハドソンが満を持して発表した、アクションゲーム「バンゲリングベイ」であった。進んでも進んでも果てがない広大なマップを、ヘリコプターで探索しながら、敵の工場を爆撃して破壊するという、プレイヤーの自由度が非常に高い、当時としては野心的なゲームである。
野心的なのはいいのだが、このゲームには、「独特なヘリコプターの操作方法」という、いささかのとっつき悪さがあった。修也も、それに悪戦苦闘していたのである。
Nは笑った。
「練習すればできるようになるさ」
修也からコントローラーを受け取ったNは、なめらかかつ優雅にヘリコプターを操り、猛禽のように工場に襲いかかると、激烈なる爆撃により工場を破壊した。
「すごいなあ」
修也はなんとなく腹が立った。2プレイヤー用コントローラーを手にして、マイクに叫んだ。「ハドソン、ハドソン」
呼びかけに答えるかのように飛行機の大群がやってきた。Nはにやりと笑うと、コントローラーを目まぐるしく操作し、たちまちのうちに飛行機を全機撃墜してしまった。
「すごいなあ」
修也は、今度こそほんとうに心からそういった。
「こんなこと……」
Nは、リセットボタンを押すと、修也にいった。
「合格したんだって?」
「うん」
修也は答えた。極楽とんぼの気があった修也には、まだ自分が合格したことの意味がピンとこなかった。
「また……中学に入っても、また遊びに来てくれる?」
「うん」
修也は答えた。
Nはどこか大人びた表情を見せた。
「次、なにをやる?」
「あ、あれやろうよ。『エキサイトバイク』。やってみたかったんだ」
「いいよ」
Nはカセットを挿し変えた。
画面には、モトクロスのバイクが映し出された。
修也はジャンプとウイリーを使って、コースをクリアしようとしたが、坂を上り切れなかったり、コースアウトしたりで、さんざんな目に遭った。
「コースを作ってみようか」
Nが切り出した。
「え? できるの?」
できた。一定の範囲内でならコースのパーツを組み合わせることで、オリジナルのコースを作ることが可能なのである。
修也は見栄えのするジャンプ台を山ほど入れた。Nは呆れたようにいった。
「すごいコースだな」
二人は顔を見合わせて大笑いした。
修也はNの家でファミコンのコントローラーを操作していた。
「うまく動かないよ、このヘリコプター」
修也がプレイしていたのは、ハドソンが満を持して発表した、アクションゲーム「バンゲリングベイ」であった。進んでも進んでも果てがない広大なマップを、ヘリコプターで探索しながら、敵の工場を爆撃して破壊するという、プレイヤーの自由度が非常に高い、当時としては野心的なゲームである。
野心的なのはいいのだが、このゲームには、「独特なヘリコプターの操作方法」という、いささかのとっつき悪さがあった。修也も、それに悪戦苦闘していたのである。
Nは笑った。
「練習すればできるようになるさ」
修也からコントローラーを受け取ったNは、なめらかかつ優雅にヘリコプターを操り、猛禽のように工場に襲いかかると、激烈なる爆撃により工場を破壊した。
「すごいなあ」
修也はなんとなく腹が立った。2プレイヤー用コントローラーを手にして、マイクに叫んだ。「ハドソン、ハドソン」
呼びかけに答えるかのように飛行機の大群がやってきた。Nはにやりと笑うと、コントローラーを目まぐるしく操作し、たちまちのうちに飛行機を全機撃墜してしまった。
「すごいなあ」
修也は、今度こそほんとうに心からそういった。
「こんなこと……」
Nは、リセットボタンを押すと、修也にいった。
「合格したんだって?」
「うん」
修也は答えた。極楽とんぼの気があった修也には、まだ自分が合格したことの意味がピンとこなかった。
「また……中学に入っても、また遊びに来てくれる?」
「うん」
修也は答えた。
Nはどこか大人びた表情を見せた。
「次、なにをやる?」
「あ、あれやろうよ。『エキサイトバイク』。やってみたかったんだ」
「いいよ」
Nはカセットを挿し変えた。
画面には、モトクロスのバイクが映し出された。
修也はジャンプとウイリーを使って、コースをクリアしようとしたが、坂を上り切れなかったり、コースアウトしたりで、さんざんな目に遭った。
「コースを作ってみようか」
Nが切り出した。
「え? できるの?」
できた。一定の範囲内でならコースのパーツを組み合わせることで、オリジナルのコースを作ることが可能なのである。
修也は見栄えのするジャンプ台を山ほど入れた。Nは呆れたようにいった。
「すごいコースだな」
二人は顔を見合わせて大笑いした。
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ご意見など

~ Comment ~
NoTitle
修也くん合格したのですね、でもNくんとの友情の行方は……(気になる)
運動神経がなさすぎる自分はこういう系のゲームはさっぱりなのですが、コースを作ったりできたのですね。
ジャンプ台満載コース楽しそうですね。クリアは難しそうですが(笑)
運動神経がなさすぎる自分はこういう系のゲームはさっぱりなのですが、コースを作ったりできたのですね。
ジャンプ台満載コース楽しそうですね。クリアは難しそうですが(笑)
Re: ECMさん
マスターシステムというとセガですね。わたしはセガのコンシューマ機はあまり触ったことがありませんでした。「北斗の拳」が出たころに2、3回くらいかな。難易度があまりにも高すぎて、シンはおろかハートすら倒せないありさまでしたから。
そこらへんのこともいずれ書くと思います。
そこらへんのこともいずれ書くと思います。
NoTitle
究極タイガーならTOWNS版をやったことはあります。
バンゲリングベイはプレイしたことないし、ファミコンでなくマスターシステムしか持っていなかったしなぁ。
バンゲリングベイはプレイしたことないし、ファミコンでなくマスターシステムしか持っていなかったしなぁ。
Re: miss.keyさん
あったなタイガーヘリ。やったことないけど。
ヘリが主役のゲームでは、わたしは学研のLSIゲーム「スーパーコブラ」に一時期ハマって、何周もしてして10000点取ってスコアカウンターが一回りして我に返りました(笑)
だけどアーケードのスーパーコブラは難しすぎた。「スクランブル」より難しい。あんなのどないして攻略せえいうんじゃ(汗)
ヘリが主役のゲームでは、わたしは学研のLSIゲーム「スーパーコブラ」に一時期ハマって、何周もしてして10000点取ってスコアカウンターが一回りして我に返りました(笑)
だけどアーケードのスーパーコブラは難しすぎた。「スクランブル」より難しい。あんなのどないして攻略せえいうんじゃ(汗)
バンゲリングベイぃぃぃぃぃぃ
爆弾投下しても命中判定がタイト過ぎてさっぱり当たらない。あのコントロール仕様も癖がありすぎてサッパリ攻略できなかったげな。時に、タイガーヘリ(アーケード版)知ってます?弾除けが猛烈に熱かった。
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Re: 椿さん
あの頃のファミコンはまさに毎日jが新しいゲームの実験場でしたねえ。