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    ゲーマー!(長編小説・連載中)

    1985年(4)

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     四月が来た。入学式の日である。

     修也は志望中学の体育館にいた。感慨は何もなかった。ただ、これから続くであろう、なにひとつ期待の持てない季節に対してため息をついただけである。

     修也は中学生活については、ほとんど何も考えていなかった。生来の極楽とんぼというべきか、そのときになったらどうにかなるだろう、というスタンスでいたのである。

     そのくせ極度なまでの人見知りである修也が、まともな流行曲や漫画週刊誌などの話題に通じているわけもなく(何しろまともにパソコン雑誌を追いかけようとすると、それだけでかなりの出費になるのであるし、さらに修也は、雑誌を立ち読みする暇があるなら、その間におもちゃ売り場に行ってゲームの棚を飽きず眺める、という方向に傾きがちな少年だった)、話題といえばゲームのことしかないのであった。

     修也のいわゆる「ズレ具合」は授業初日から露見することになった。歴史の授業ではとんちんかんな答えをし(「歴史といって、きみは何を考える?」「はい。白瀬矗中尉の大和雪原到達とかです」「何を考えてるんだお前は」)、数学でも似たようなとんちんかんな答えをし、英語では小テストの全問題についてピリオドを落とし、クラス全員から「あいつはバカだ」的視線で見られるという、いわゆる「中学デビュー」を大失敗したのである。

     救いというべきか、何というべきかわからないのは、生来の極楽とんぼに生まれついている修也にとっては、他人からそういう視線で見られることに、なんらの痛痒も覚えていなかったことであろう。おそらく、修也にとって、クラスメートなどは、「どうでもよかった」のだ。修也には、それよりもはるかに重大なことが会った。

     修也が向かったのは図書館であった。中高一貫教育をひとつの売り物としていたこの学校では、当然ながら図書館も中高合同であった。

     修也はそこにずらりと並ぶ娯楽小説に驚いた。当時はヤングアダルト小説の勃興期であり、高千穂遥が、夢枕獏が、菊地秀行が、朝日ソノラマ文庫で暴れ放題に暴れていた時代であった。

     修也は、菊地秀行の「エイリアン怪猫伝」という小説を手にとってパラパラめくった。

     修也はそのままカウンターへ行き、その本を借りた。

     菊地秀行の「エイリアンシリーズ」は、トレジャー・ハンターの八頭大を主人公とするSFバイオレンスアクション冒険小説である。ソノラマ文庫でのデビュー作「魔界都市「新宿」」でこそ、主人公は品行方正な冒険をしていたが、作を重ねたこのエイリアンシリーズでは、バイオレンスとアクションだけでなく、菊地秀行の本領のもうひとつである「エロス」の部分もたっぷりと盛り込まれていたのである。

     修也はSF的ファンタジー的ホラー的な小道具を使った「なんでもあり」の様相を呈しながら、ホラーとエロスとバイオレンスの限りを尽くして登場人物だけではなく小説自体が暴れまわるような菊地秀行のこの世界にどっぷりはまり込んでしまった。殺すことが不可能なのではないかと思われるようなおそるべき化け猫宇宙人に対して、鮮やかなどんでん返しが決まるクライマックスシーンを読んだころには、耽溺していたといってよい。

     その日から、修也の図書館への日参が始まった。

     類は友を呼ぶ、という言葉がある。昼休みに図書館へ来るような人間というものは、しだいに固定化してくるのであった。

     それは、パソコンを持っていたFであったり、Iであったり、Kであったりした。

     ある日、修也は切り出した。

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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    お久しぶりです。お元気してましたか?

    もし図書館がなかったら、中学生活を保健室登校で過ごしていたんじゃないか、と思うことがよくあります。

    だから善良なオタクを守るためにも学校図書館の予算は確保せねばならないのです。削減、とか言ってる政党はバカです。(`・ω・´)キリッ

    NoTitle

    少しお久しぶりです。
    確かに懐かしい。
    中学生のときに、ライトノベルのコーナーがあって。
    それを借りて、それからライトノベルを読むのが習慣になる。
    趣味を得る場所として、学校はとても良い場所だと思います。
    図書館も。

    Re: 椿さん

    菊地秀行も夢枕獏も、「無理して読むもの」ではないので別にいいのではないでしょうか(^^;)

    ちなみにわたしが最初に読んだ菊地秀行作品は、「幻夢戦記レダ」のノベライズだったなあ(笑)

    NoTitle

    修也くん、中学生に! おめでとう!
    ホラーやバイオレンスがちと苦手なので、その辺りはあまり読み込まなかったのですよなあ……。今になると、もうちょっと読んでおけば良かったかなと思います。
    新しい友達と、さらなるゲームの深みに進んでいくのでしょうか。
    続きも楽しみにしております。
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