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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ83位 三重露出 都筑道夫

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     高校生の頃、毎日のように通っていた古本屋で発見して読んだ。それほど感銘もしなかったのを覚えている。自分好みの話のはずなんだがなあ。どうしてかなあ……と思いながら図書館にあった光文社文庫版を再読。

     読んで思ったのだが、この小説のタイトル「三重露出」は、まさに「言い得て妙」のタイトルだった。これ以上書くとネタバレになるのでよしておくが、この小説、アホなことばかりやっているようで、実はものすごく「苦い」小説なのである。日活が小林旭主演でこの小説の「アホなところ」だけを切り取って映画にしたそうだが、さもありなん、だ。これを原作通りにやったら、出来上がるのはものすごく苦い、フランス映画みたいなものになるだろう。

     いろいろと考えると、都筑道夫の小説で、「誰もが納得するハッピーエンド」な話ってないような気がする。特に、「名作」と呼ばれているものはだいたいそうだ。85年版には「なめくじ長屋」を除けば「猫の舌に釘をうて」「三重露出」「誘拐作戦」とあるが、いずれも「面白うてやがて悲しき」小説だ。都筑道夫の都会的感性がそうした小説を書かせるのだろうか。2012年版にランクインしていた「なめくじに聞いてみろ」も、結末のあまりのペシミズムに、高校生当時読んで愕然とした覚えがある。

     本質的に「不幸に考えたがる人」なのかもしれないが、そういうイメージが少ないのは、都筑道夫の有する「ミステリにおける超絶技巧のテクニック」がすごすぎるからだろう。初期作品など、毎回毎回、どうしてこんな変なことを考えつくのか、という話ばかりだ。それも、単に変なことを考えつく作家は山ほどいるが、都筑道夫の場合、「どうしてこんな書くのに手間ばかりかかる変なことばかり思いつくのか?」としかいいようのない作品ばかりなのである。方向性は違うが、同様の「シャレでは済まないような努力」をするのは日本でも泡坂妻夫くらいしか思いつかない。

     やっぱり、社会派が影響力を持っていた当時は、都筑道夫が好きなタイプのミステリは、肩身が狭かったんだろうな、とでも考えるしかなさそうだ。そんな中で存在感をアピールするためには、たとえマニア向けと思われようが凝り過ぎだと思われようが、「超絶技巧がなぜ超絶技巧なのか」をわからせるために、超人的なパフォーマンスを「実演」するしかなかったのだろう。それからウン十年、世の中は都筑道夫の理想とするミステリの方へいくらか近づいたことは明らかだ。だがその過程で、都筑道夫の超絶技巧を、「会場でギターを破壊する」ようなプレイにばかり走る名前だけ新本格派が駆逐してしまったようなのは何とも皮肉というか。無常だなあ。
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    ~ Comment ~

    Re: blackoutさん

    まあ、たしかに、過激なパフォーマンスは面白いが、「定番」にしちゃダメじゃん、と……。毎回ギターを壊すパフォーマンスしてたら、喜ぶのは初心者だけで、通の客は飽きるぞ、と(^^;)

    ちなみにおれはアラフィフじゃー!

    Re: 夜ひゃくら見物さん

    人間ならば逆境でアピールできてなんぼでしょう、どんな仕事でも……。

    いまはミステリ氷河期SF氷河期以前に、カンブリア爆発みたいにラノベ爆発が起きてますから、ウン十年後がどんな評価するかはうーむ(^^;)

    NoTitle

    20代から30代前半ぐらいまでは、人寄せパンダ的なものなんて氏ねばいいのに、マジF**Kって思ってましたが、ここ数年は、人寄せパンダでも、確固たるポリシーがあってやってるなら別にどうでもいいや、って思うようになりましたね

    たぶん、何年経っても、この手のものがなくなることはないと思いますし、そういうのに飛びつくヤツばっかじゃないとも思いますし

    きっと余計なノイズに惑わされないようになったかも、ですがw
    歳のせいだろうか…(自分、一応アラフォーですw)

    NoTitle

    >「なめくじ長屋」を除けば
    「なめくじ長屋」も(ドラマの主人公だった)枝雀が死んじゃったって意味で悲劇になっちゃったなぁ…。

    >これを原作通りにやったら、出来上がるのはものすごく苦い
    ふーん。
    なんか、ちょっと興味出てきた。

    >そんな中で存在感をアピールするためには
    そう考えると、作家なんてもんは逆境でアピールできてナンボ!なのかもしれませんね。

    >「会場でギターを破壊する」ようなプレイにばかり走る
    ま、人寄せパンダとしてそういうのもあっていい、というのはあるんでしょうけどねー(^^;
    とはいえ、その手を出せば売れると売る出版社も出版社だし。
    また、そういう出版社が出した至れり尽くせり商品をありがたがって、ファン同士で盛り上がっている消費者も消費者ですよね。
    ま、たぶんウン十年後。その頃、SNSとかネット掲示板があるのかどうかは知りませんけど、「2000年代の初めごろはミステリー小説氷河期だったから…」と、ミステリー小説を読み始めた中高生が書き込んでるんじゃないですかね。
    今の新本格ファンがそうであるように(^-^)
    • #20031 夜ひゃくら見物 
    • URL 
    • 2019.04/07 16:29 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 面白半分さん

    いや、「人気がある」んでしょう。

    「猫の下に釘をうて」と「三重露出」は光文社から2003年に、「誘拐作戦」は2001年に創元から再刊されてます。

    マニアがそれっと買って、「古本屋の百均棚にはあまり出回らない状態」というところでしょうね。

    それに、ぶっちゃけた話、今の若いミステリマニア予備軍は、

    古本屋を歩くよりはと、「kindle」で読んでいるらしいですし……。

    NoTitle

    「猫の舌に釘をうて」「三重露出」「誘拐作戦」はブックオフには全然でてきません。とすると再版自体も少なかったって事なんでしょうか。
    すっかり忘れ去られた作品になってしまったら寂しいですね
    「退職刑事」や昔の角川文庫のショートショート系はいまだ見かけますが。

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