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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ84位 蘇える金狼 大藪春彦

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     大学のころ読んだ。気分が落ち込んでいたせいか、けっこう面白かった覚えがある。しかし、「野獣死すべし」が想像以上の「俺TUEEEE!」小説で、ストーリーとは別な意味でオモシロい怪作だったので、いま読み返して面白いかどうか……とりあえず覚悟を決めて読んでみた。

     感想。面白い。大藪春彦、「野獣死すべし」とは天地の開き、というくらいに小説がうまくなっている。まあ結局はこの小説も「俺TUEEEE」小説ではあるのだが、話にメリハリもあるし、文章が読みやすくなっているし、登場人物は生き生きしてるし、「エンターテインメント」としてきちんと整っているではないか。「野望編」「完結編」結構楽しんで読んでしまった。同時代の生島治郎と比べても、遜色ない面白さである。

     というか、この「蘇える金狼」を読んだ後では、「歴史的意義」以外のどんな理由で「野獣死すべし」が31位に入ったのかまったくわからない。質量ともに、逆だろ、逆! としかいいようがない。オールドファンには「野獣死すべし」が登場したときの「インパクト」のほうが強かったのではないかとも思うが、純粋に面白いミステリを投票するという観点からは、それはどうなのか、と思えてならない。

     ちなみに角川文庫版の解説を書いているのが森村誠一で、2010年代の今から見れば、実に「高度経済成長時代のミステリ界」を代表するような心憎いチョイスである。まさに適任といえるだろう。

     この大藪春彦の小説でも、森村誠一の小説でもそうだが、サラリーマンの熱狂的な支持を受けたのは、両者とも、「社会は腐敗しまくっているが、何らかの方法であがき続ければ、多大な犠牲を払いながらも、そんな腐敗した社会に対していささかのうっぷん晴らしができる」という隠れたメッセージがあるからだろう。それに対して、現在のサラリーマンに受けているラノベは、まず、「社会の不公正に対して戦うすべはないし、不公正は社会を動かすのに必要悪なのだ」という認識のもと、読者は「何の努力もしないで体制側に立って好き勝手すると、めぐりめぐってみんながハッピーになる」という、まあ実にすばらしいメッセージを与えてくれる。現にそういうのが売れているのだから仕方がない。

     森村誠一と大藪春彦の精神は、もはやミステリの中でも生き残れないのかもしれない。あるのは、いかに美しく「過去の遺産を蕩尽して生きるか」でしかないのだろう。ブラックロータスの花を噛みながら夢を見て生きている、そんな生活でもするしか、現代の日本人にはストレスを発散する方法がないのかもしれない。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくしょん大魔王さん

    宗教と哲学の違いですが、

    「論理を進めていくうえで『どう表現しても「神秘体験」としかいいようのない言語化不可能な体験』が介在する思想」は宗教です。

    例えば、仏教は、「哲学」と思われるかもしれませんが、その論理を突き詰めると「悟り」という、「神秘体験としかいいようのない言語化不可能な体験」が入ってくるので、宗教です。

    また、タレスは、「万物は水だ」といいましたが、それは宗教的体験に基づくものではなく、タレスがいっさいの「神的」なものに頼らずに、論理と理性で考えた末、「水だ」という結論に達したので、それは「哲学」です。

    もちろん、哲学から宗教ができることもありますし、宗教から哲学ができることもあります。世間で言われる「宗教哲学」というのは、本人もしくは教祖の体験した『神秘体験』を、徹頭徹尾論理をもって言語化しようという試みそのものです。聖アウグスチヌスなんてその中でも最大の人ですね。

    だから、神秘的な「救い」を求める人が哲学をやると、幻滅しか待ってないと思いますよ。それか哲学書を漁ったすえにグノーシス主義に行きつくかのどちらかですね。

    笠井潔は、響く人には響くタイプの作家であり思想家なんですよ。特に、左翼的な思想に非常なシンパシーを抱く人間には、あの人の見てきた学生運動から新左翼の勃興と没落、そして凄惨なリンチ殺人事件に至るまでの光景と、そこから導き出される「ニヒリズム」にめちゃくちゃ惹かれるのです。現にわたしなんかそれゆえに哲学科なんかを志願しちゃったくらいですから。

    それを「左翼だから」という理由だけで揶揄して思想全体を総否定にかかる現代ミステリ界に絶望して「このミス」を読むのもやめちゃいましたからねえ。いろいろと思うところはありますな。

    ちなみに、「群衆の悪魔」は読んだけどそういう話でもなかったような。なにぶんそうとう前に読んだので忘れてるけど……。

    つくば市で何か会談をやるとしても、誰も常磐線なんか使いやしねえ(笑) いまではつくば市の大動脈はつくばエクスプレスで、土浦とは何の関係もないところを走ってる(笑) テロリストが常磐線土浦駅からバスに乗って30分かけてつくばに行くようだったら、それだけでメチャクチャ目立ちますな(笑) それなら自家用車使うしなあ(笑) ツチウラは田舎なのよとほほ……。

    NoTitle

    全然関係ない話ですけど。
    哲学と宗教の違いって何なんです?
    社会の中の位置付けではなく、純粋に個人に対する役割という意味での違いってことなんですけど。

    ふと思うんですけど、昨今、ミョーに哲学というものが流行っている気がするんです。
    それっていうのは、つまりみんな平和でヒマで。なんかしてみよーと“嗜み”みたいな感じで哲学に手を出してみる…、みたいな流れなのか?(ある意味、江戸時代の化政文化での町人の手習い的な)
    ではなく、今の理由のわからない閉塞感の時代の中、ある種の救いを見出せないか(生きやすくするorやり過ごせやすくする為)と、すがる思いで哲学に求めているのか?
    ていうか、「テツガクって、なぁーんかカッコいいっていうかー。哲学を語っちゃうと頭が切れる人って感じするよね」的な(^^ゞ
    そういうノリなのか?

    でー、哲学ついで(いや、ついでなのかはよくわからないんだけどw)。
    笠井潔って、(ブリッツさんとしては)どうなんです?
    個人的には、屁理屈まみれの本格物(シリーズ物で変な探偵も出てくるみたいだしw)ってイメージだったんですけど、『群衆の悪魔』って本を見て、ちょっと興味がわいたんですよ。
    群衆の悪魔だけに、大衆の悪意みたいなものをテーマに書いてあるんであれば、あの厚さだけに読みがいがあるかなーなんて(^^ゞ

    いつもお願いばかりで申し訳ないですが、ぜひよろしく(^^)/

    で、もう一つ全然関係ない話。
    そういえば、来月のG20、つくば市で何か会議をするらしいですね。
    てことは、今そっちは警官がやたらいたりで、ピリピリして大変とか?
    早いトコ無事終わるよう祈ってます('ω')ノ
    • #20111 ひゃくしょん大魔王 
    • URL 
    • 2019.05/12 17:01 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 俺たちにひゃくはないさん

    サボリ通報しますた(`・ω・´)キリッ

    ※今日は図書館の開館日です

    NoTitle

    >絶対思われてる
    実は私、土浦市立図書館で司書してます(爆)
    • #20103 俺たちにひゃくはない 
    • URL 
    • 2019.05/06 16:58 
    •  ▲EntryTop 

    Re: ピテカントロプス・ひゃくレトスさん

    絶対思われてる(笑)。

    そのうち土浦市立図書館労働組合かなんかからこのブログに苦情でもくるんとちゃうか(笑)

    NoTitle

    >百舌の叫ぶ夜
    個人的には、原作はさすがに古すぎかなぁーって印象でした(^^ゞ
    ま、ドラマにハマっちゃったんで(爆)
    ドラマのイメージで読んだのがいけなかった、というのはあると思います。
    逢坂剛は、私も数冊しか読んでなくって。
    面白かったのは面白かったんだけど、イマイチ印象が残ってない、みたいなイメージです(^^ゞ

    >もしかしたら人間を特定
    あ、またアイツ来たよ。すっげぇ古い本、牛久の図書館から取り寄せさせられたり、面倒くさいんだよな。アイツ…
    とか思われてるかも(^^;
    • #20088 ピテカントロプス・ひゃくレトス 
    • URL 
    • 2019.04/30 16:28 
    •  ▲EntryTop 

    Re: さらば愛しきひゃくよさん

    逢坂剛の「百舌の叫ぶ夜」から始まる「百舌シリーズ」はいつか読むつもりでいます。でもなんか、波長が合わない作家なんだよなあ。読めばハマると思うのに、なんでかなあ。「カディスの赤い星」面白かったけど、まともに読んだのはあれくらいだしなあ。

    たぶん土浦市立図書館の職員の誰か、このブログ絶対読んでると思う(笑) 新規の図書の入り方とか、DVDの入り方とか見てるとそう思う(笑) もしかしたら人間を特定されているかもしれん(笑)

    NoTitle

    >図書館のDVD棚を見たら発見してしまって
    図書館に置いてあるんだ!w

    >特命係長只野仁
    ブリッツさんから、そんな最近(?)のTVドラマが出てくるとは驚きだ!(^^ゞ
    最近でいうなら(といってももう何年か前だけど)、「MOZU」!
    あれ、最近のTVドラマとしては面白かったですよ。70年代テイストで。というか、仮面ライダーテイスト?(爆)
    まー、最初に風呂敷広げるだけ広げておいて、後半なんじゃそりゃ!?な展開(ま、そこはTVドラマw)ではあるんだけど、結構ワクワク見てましたよ。
    ちなみに、映画版は見ちゃダメなヤツなので絶対見ないよーに(爆)
    • #20068 さらば愛しきひゃくよ 
    • URL 
    • 2019.04/21 15:53 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 面白半分さん

    謎解きミステリの対極にあるような作品だけど、疲れた時に読むのにはいいですよ大藪春彦(笑)

    でも当たりはずれもそうとうあるような作家みたいですね。晩年の作品なんか「トンデモ本」扱いされてたからなあ(^^;)

    Re: ひゃくとか、バカとか、まぁその類さん

    動く標的は「野獣死すべし」ですね。図書館のDVD棚を見たら発見してしまって、借りるかどうか真剣に考慮中(笑)

    「蘇える金狼」は、どっちかといったら「傷だらけの天使」というよりは「特命係長只野仁」の元ネタといった方が近い……かもしれん(笑) ベクトルは正反対だけど、冴えないサラリーマンの男が実はスーパーマンってやつですから(笑)

    NoTitle

    大藪春彦ですか。全く読んでいません。

    少年自分の映画のスポットCMで”見てはいけないもの”
    という印象がずっと残ってしまったままなんでしょう。

    でも「唇に微笑、心に拳銃」2巻は買ってます。でも積ん読

    NoTitle

    本は読んだことないんで、映画のイメージが強いかな。松田優作の変な髪型を真っ先に思い出す、みたいな。
    あと、♪うっごくひょぉ~てき~ 狙いをつけぇ~てぇ~はこれでしたっけ?(^^ゞ

    ハードボイルドとか、たぶん言葉だけは知ってたと頃だと思うけど、大藪晴彦はエッチなシーン目的で読んだ西村寿行とイメージが重なるんだよね(笑)
    ただ、TVで(期待して)見た映画はそれほどでもなかったから、そういう作風じゃないんでしょうね(^^;

    今週の月曜の夜中だったかな?TV番組表を見ていたら、「傷だらけの天使」とあったんで録画してみたら、妙に面白くって。
    これにしてもそれにしても、東京の風景が殺風景でやたら汚なくって、どっか殺伐としるあの空気感がすごく懐かしかったですね。
    といっても、その頃は東京なんてそんなに行かなかったけど(^^ゞ
    ただ、あの頃はもうシラケの時代だから。(この小説がいつ書かれたかはともかく映画やTVの頃は)“そんな腐敗した社会に対していささかのうっぷん晴らしができる”というよりは、もっとみんなお気楽に生きていたような気がするかな?(^^;
    ただ、60年代末のカウンターカルチャーの余波は残っていたから。今の「長いものには巻かれてろ(というか、もはや巻かれているのが当たり前で巻かれていることすら忘れている)」じゃない、どこか反抗の精神はあったような気はします。
    とはいえ、今と比べると、不満はいっぱいあったけど、それでもわけのわからない希望みたいなものを誰もが持っていたという時代だったような気がします。

    >あるのは、いかに美しく「過去の遺産を蕩尽して生きるか」
    過去の遺産は大きいのは大きいんだけど、最近は大災害が頻発したから、もはやかなり残り少なくなっちゃってるんでしょうね。
    このままいったらニッポン人は海外に出稼ぎ労働にいくしか働き口がなくなるような気がするんだけど、ま、そのギリギリくらいには寿命が来るかな?なんて('ω')ノ
    • #20048 ひゃくとか、バカとか、まぁその類 
    • URL 
    • 2019.04/14 16:08 
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