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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ89位 薔薇の女 笠井潔

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     これを読んだのは、高校生の時のキャンプか何かのときだったように思う。当時、わたしの通っていた高校は、どういうわけか「修学旅行」というものが存在しなかった。どうやら先輩方が何かしでかしてしまったせいらしいのだが、何をしたのか恐ろしくて聞く気にはなれない。まあ、集団でバスに乗ったとき、図書館で借りたこの「薔薇の女」のハードカバーを携えていった覚えがあるので、たぶんそういうときではないだろうか。「バイバイ・エンジェル」と「サマー・アポカリプス」のあの衝撃が生々しい中で読んだので、それほど関心はしなかったように思う。さて、それ以来の再読だ。いくらか記憶は残っているが、はたして面白いか否か。

     感想であるが、まず、「ミステリ」としては面白い。残虐な連続殺人と、動機の謎とアリバイ崩しというポイントをきちんと押さえているので、エンターテインメント作品として読んでいて退屈はしなかった。だが、「笠井潔作品」となると、それだけでは足りないのだ。やはり、「現代思想の突き当たっている解決しがたい問題」とか、「その問題点を指摘した大思想家」とがっちり四つに組んで哲学的、思想的に戦ってくれないと、面白くないとはいわないが、全体的に散漫な印象を受けてしまうのである。そういった意味で、本書は、「戦う相手が絞り切れていない」うらみがあるのだ。「バイバイ・エンジェル」での「テロリズム」という敵や、「サマー・アポカリプス」における「シモーヌ・ヴェイユ」、そしてなんといっても笠井潔の本格ミステリにおける質量ともに最大の作品「哲学者の密室」における「ナチズム」と「マルティン・ハイデガー」のような「強大」で「わかりやすい相手(思想的にわかりやすい、ということではないのがつらい)」と丁々発止をやってくれないと困るのである。さらにいってしまうと、「オイディプス症候群」の「ミシェル・フーコー」や「吸血鬼と精神分析」の「ジャック・ラカン」のような相手と戦われても、なじみが薄いからやはり散漫になってしまうのはきつい。80年代か、遅くとも90年代に書かれていればまた違ったのだろうけれど。そういう意味で、笠井潔という人物はどうあがいても「20世紀」の思想家であり、ミステリ作家であった。別に「20世紀」の人間であって悪いことはない。20世紀という時代が引き起こして問題で、今すぐにでも解決しなくてはいけない未解決の問題は山ほどあるし、解決のめどすら立たない問題も山ほどあるのだから。

     それとは別に、本書では、笠井潔は、島田荘司の「占星術殺人事件」を意識していたんだろうな、と思えるところがあって実にほほえましい。占星術以上のインパクトのあることをやろうと考えたのか、笠井潔のほうはマジで「あれ」をやってしまうのがすごいというかなんというか。テーマ的にやらないわけにいかなかったんだろうけど、少々やりすぎじゃないのかな笠井先生。面白いからいいけれど。
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    ~ Comment ~

    Re: ♪人生ひゃくありゃ九もあるさぁ~さん

    笠井潔はミステリ界隈での逸話とか、奈須きのことラノベへの接近とか、自分の思想に対する反論への対応とか見てると、そうとう不器用で見栄張りなくせに自己アピールが下手で、他人の視線に対して過敏で、ギャグをやろうとするとすべりまくる、「不器用なオタク」でしかないことがわかってきて、それが「テロルの現象学」でのクールな新進思想家のイメージとズレているのがなんとも……(^^;)

    まあパーフェクトな人間なぞおらん(^^;)

    NoTitle

    >笠井潔は、島田荘司の「占星術殺人事件」を意識
    作家というと、なんか偉い人のように思っちゃうけど、所詮は自分やその辺の人と同じ人ってことなんでしょうね(^^ゞ
    確かに、いろいろ読んでいると、他の(同じような)作家を意識して書いたのかなーとか、いろんな虚栄心とか。
    そういうのが見えてくる時があって、なんかクスっとしちゃいますよね。
    • #20156 ♪人生ひゃくありゃ九もあるさぁ~ 
    • URL 
    • 2019.06/09 15:45 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 面白半分さん

    まあ高校生がやることですし、タバコを吸ったか酒を飲んだか、くらいのことでしょうなあ。

    ちなみにわたしの二代ほど前の先輩は、学園祭実行委員会の打ち上げで酒を飲んでいたところを新聞にフォーカスされて謹慎をくらったそうであります。

    NoTitle

    修学旅行がなかったというのが衝撃です。
    先輩方は何やらかしたんでしょうかねえ
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