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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ94位 石の下の記録 大下宇陀児

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     大学在学中、どうしても見つからず、読むのを半ばあきらめていた本である。病気中退して実家に帰り、通っていた本屋で再刊された双葉文庫版を見つけて即座に購入して読んだ。感想はひとこと、「期待外れ」であった。どうにも地味でつまらないのである。それから20年ぶりに、気乗り薄のまま再読。

     再読してみた感想であるが、期待をまるでしていなかったせいか、意外と面白かった。そもそも、初読時は、「読み方」が間違っていたのである。あのときは、高木彬光「白昼の死角」の先駆的作品、として読んでしまったのだ。同じ「光クラブ」と学生高利貸をネタにした話でも、あの「悪の魅力」をギラギラさせながら語られる波乱万丈のピカレスク・ロマンとはまるで違う話なのである。その意味で、作者の大下宇陀児が、自分を「社会派」ではなくて「人間派」と呼んでいるのは正しい。この「石の下の記録」という話は、愚直なまでの「青春ドラマ」とみなすべきなのだ。戦後の混乱期に、不良学生たちが人生に悩みながら、ことごとく道を踏み外して悲惨な末路を迎える、裏バージョンの「青い山脈」みたいなものなのである。

     そう考えて読むと、この小説はリーダビリティの高い、優れた風俗小説であり、きちんとしたミステリであり、「刑事ドラマの元祖」でもある。過渡期の作品ゆえの面白さという面ももちろんあるが、それ以上に、終戦時に自殺を考えたほどの「戦前人」である作者の大下宇陀児が、戦後のアプレ世代に対して感じていた、反感と批判と、一種の憧憬というものが小説から透けて見える。それがなんともいえず「いい味」になっているのだ。第四回日本探偵作家クラブ賞は、仲間びいきだけで獲ったものではないのである。

     かといって、これを現代に読む意味があるかといわれれば、疑問なのも事実だ。これまで上げてきた要因にビビッとくるような人間でもない限り、本書は「古くさい」「お説教じみた」「謎のダイナミックさに欠ける」作品でしかあるまい。正直、この94位という位置も、「評価しすぎ」のような感じを覚える。大下宇陀児という作家を語るには外せない作品であることは間違いないが、いま語っても仕方のない作家であるのも事実なのだ。

     温故知新をしようとするミステリマニアでもない限り、あえて手を出す必要もないだろう。「人間派」としての大下宇陀児の問題意識と手法は、松本清張の諸作や大岡昇平の「事件」を通じて、宮部みゆきに至るまで脈々と受け継がれている。そちらを読んだほうが現代の読者には得るものが多いはずだ。「石の下の記録」は戦後ミステリの偉大なひとつの里程標ではあるが、あくまでも「里程標」にすぎないのではないかとわたしには思えてならないのである。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    大下先生も芸風が広いわりに、「これと言った傑作」に恵まれてない人ですよね。木々高太郎みたいに「傑作が短編に集中」してるわけでもないし、ましてや佐野洋みたいに「打率三割から崩れない安打製造機の中距離ヒッター」という評価があるわけでもないし、ほんと、なぜこの「石の下の記録」がベスト100にランクインしたのか、不思議です(と言ったら失礼だけど……)

    Re: ひゃく事千里を走るさん

    ビッグネームの一人なのになあ。

    でも、今から読むべき人とも思えないのも事実。好事家向きに全集を編纂するべき人ですね。

    NoTitle

    おおしたうだる!
    私は日本推理作家協会賞受賞作全集で読みました。
    何となく覚えています

    NoTitle

    >大学在学中、どうしても見つからず、読むのを半ばあきらめていた本
    私はあきらめる以前に、そんな作家も著作も知らんぞぉ(^^ゞ

    個人的に、最近はアマゾンを見て、古本で100円以上以上したら、そんな本はこの世に存在しない!と思うことにしています。
    今見たら200いくらだったんで、当然ありません(笑)
    • #20180 ひゃく事千里を走る 
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    • 2019.06/23 14:19 
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