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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ94位 ぼくらの時代 栗本薫

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     これは中学生のころ、学校の図書館で読んだ。栗本薫の作り出した二大名探偵、栗本薫と伊集院大介とが合同して事件を解決する「猫目石」という長編を読んだ後で、名探偵栗本薫のシリーズをもっと読みたかった、というのがその理由である。それで読んでみたわけであるが、そのときはそれほど感銘は受けなかったと思う。キーになる部分以外は内容のほとんどを忘れてしまったのをいいことに再読。

     読んでみたが、たしかに、歴代の乱歩賞の中でも面白い部類に入る、よくできた作品である。アリバイ崩しもあれば、密室もあり、小説全体のストーリーで仕掛けた大技も決まっていて文句はない。しかし、この作品、まあ、問題点も数限りなくあるのも事実だ。

     最大の問題点は、この事件を引き起こしたやつらに、「まったくといっていいほど共感ができない」ところであろうか。冷静に考えると、この事件の筋書きを書いて実行に踏み切ったやつらが、キャラクターの設定から乖離していて、どう見ても「異常」としか思えないのである。どうやればこんなやつらに共感できるのか見当すらつかないが、栗本薫の筆致は、彼らに対して共感を迫ってくる。そこでタイトルの「ぼくらの時代」という言葉が深い意味を持ってくるという趣向だが、正直なところ、そんな趣向なんぞ犬にでも食われてしまえ、だ。作中人物のいうとおり、下手をしたらこの小説の語り手である栗本薫をはじめとする、ロックバンド「ポーの一族」の三人だって、「本物の殺人を犯していたかもしれない」のである。このモラルの崩壊ぶりを簡単に「世代の違い」で割り切ってしまっていいものだろうか、と思わざるを得ない。

     もちろん、名探偵栗本薫のシリーズでは、後の作品になるにしたがって、この「ぼくらの時代」に描かれたような、ブレーキの壊れ方は見せなくなって、ごく普通の「名探偵」として機能するようになるのであるが、うん、やっぱりこの作品は栗本薫の全作品を考えた上でもそうとう異色だ。栗本薫の小説を読むうえでは、「最初」に読んでおかないとダメな小説であろう。

     中学校生活の中で、図書館にある「栗本薫シリーズ」と「伊集院大介」シリーズを全部読み終えた後、図書委員だったわたしは司書にかけあって、無理やり「グイン・サーガ」を出ている分だけ全巻と、「魔界水滸伝」を出ている限りの全巻を図書館に入れさせた。その結果として、もちろん、大ハマりし、級友数人と、グインがどうだとかイドがどうだとか、安西雄介がどうだとか北斗多一郎がどうだとかいうディープな会話を繰り広げることになったのであるが、高校に入るとつきものが落ちたように栗本薫を読むのをやめ、もっとマニアックな小説を読みふけるようになるのであった。南無。
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    ~ Comment ~

    Re: ひゃくとの遭遇(いきなり、第三種!) さん

    まあ無理していま読むタイプの小説ではないのも事実なので、お気に召したら……としか(笑)

    少なくとも山小屋に拉致して椅子に縛り付けて無理やり読ませたくなるような小説ではないです(笑)

    NoTitle

    >そうした視点に立ってもそうとう不気味な一面
    先週、ブリッツさんのブログを読んで、無性に読みたくなって、アマゾンを見てたんだけど、ふいに読みたくなくなっちゃったんだよね。
    レビューを見てたら、なんとなく中身が想像出来ちゃった、みたいな感じ?
    でも、その一文を見たら、やっぱり読んでみたくなったなぁ~(^^ゞ
    • #20252 ひゃくとの遭遇(いきなり、第三種!) 
    • URL 
    • 2019.07/15 16:10 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 面白半分さん

    この事件を伊集院大介が解決していたらどうなっていたのだろうか、とときどき考えるけど、駄作にしかならないだろうな、と思うので、この事件は薫くんの事件でいいんだと思いますが、それでも冒険したなあ栗本薫。表紙からしてミスディレクションのカタマリですからねえ……。

    Re: 椿さん

    評論家中島梓としてはある意味笠井潔以上に過激なことも発言してる人ですからね栗本先生。実作でも、長編「レダ」とかすごいですよ。すごすぎて、中学時代に読みかけて、読むのをあきらめた(^^)

    グイン・サーガは入門用として適しているかもしれませんね。いちおう、クライマックスまで書いてるし、登場人物のインモラルさが尋常でない「トワイライト・サーガ」とか、本編である「宇宙戦争編」を書かないままに未完で終わってしまった「魔界水滸伝」よりはおすすめだと思います。中学時代にマリウスとオクタヴィアが結ばれるまで読んだところでギブアップしたけどね(笑)

    Re: ドラキュラひゃく爵さん

    まさに栗本薫こと中島梓の評論は「カウンターカルチャー」そのものであるので、わかるっちゃわかるけど、本書に登場する人物たちは、そうした視点に立ってもそうとう不気味な一面がありますからなあ。

    モラルというより「倫理」というか。

    虚無は深い…。

    NoTitle

    私もですね、「まったくといっていいほど共感ができない」が先にきてしまったのです。
    あくまでも本作内での話とわかっているのですが、
    以降栗本薫を避けてしまっています。(”以前”は読んでいないのでアンソロジーで読む以外は知りません)

    NoTitle

    グイン・サーガはめちゃくちゃ読みましたが、薫くんシリーズはノータッチでしたね……。
    栗本さんの作品は何というかとんがり方がすごいので、ついていける作品とついていけない作品があります。新しい本に手をつけるのに結構勇気がいる。

    今になると、グイン・サーガって栗本さんの作品の中で一番穏健だったんじゃないかと思います。

    NoTitle

    読んだけど、どんな話だったか全然憶えてない。
    表紙は憶えているのに。

    >このモラルの崩壊ぶりを簡単に「世代の違い」で割り切ってしまっていいものだろうか
    内容を全く憶えていないのにどうこう言うのも何だし、また栗本薫も子供の頃に見ていたイメージしか知らないので、あくまで想像で書くんですけど。
    たぶんカウンターカルチャーの強い影響下にある世代なんですよね、著者も登場人物も。
    なら、既存の価値観を打破することこそがカッコイイみたいな時代だったわけで、そこにモラル云々言っても意味ないような気がするけどなぁ…(^^ゞ
    それこそ、そこにセ●クスが語られてなければ文学や映画と認めてもらえないみたいな時代じゃないですか。
    いや、イメージとして(笑)
    社会に暴力に対する許容度だって、全然違うわけで、というかバブル期以降の衣食完全に足りてる時代とその前では、モラルとか礼儀とか全然違うというのもあるんじゃないですかね。
    いや、だからって、その時代を肯定しているわけではなく。また、今だってモラルとか社会性というのは相当おかしなことになっているわけですけどね。
    ていうか、それより何よりどんな話だったか読んでみたいって思いました(^^)/
    • #20210 ドラキュラひゃく爵 
    • URL 
    • 2019.07/07 12:11 
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