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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ98位 殺しへの招待 天藤真

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     天藤真の代表作のひとつというわけで、「大誘拐」を読んだ直後に古本屋で手に入れ、期待して読んだ。高校生のころである。その時の感想では、「こんなものか」だった。それほど感心もしなかったように思う。それ以来、現在まで25年間読んでいない。実にひさしぶりに再読。

     いま読んでみると、実にきついブラック・ジョークが炸裂するミステリだった。天藤真のユーモア・ミステリの代表作に上げる人もいるそうだが、こんなきついジョークで笑える人間の気が知れない。「牧歌的ユーモア」と評した「東西ミステリーベスト100」の解説担当者に至っては何を考えているのか、である。たしかに「大誘拐」は誰でも笑える万人向け作品だったが、本書「殺しへの招待」はかなりマニア向けの作品である。なんにしろ底意地があまりにも悪すぎる小説なのだ。

     角川文庫版の解説でジャプリゾなどのフランスミステリとか「クライム・クラブ」的な作品だといわれていたが、むしろ読んだ印象としては、タイトルは上げられないがクリスティの「あれ」の現代的な再解釈という感じを強く受けた。結末のどんでん返しも「あれ」を強く意識しているだろう。初読時も思ったが、ひどい人間不信もあったもんである。

     それにしても、細かいところまで実に丹念に考えられたミステリであり、「トリックの非現実性と不可能性」をいうのは野暮の骨頂だ。思うに、「トリックの非現実性」については作者もよく知っており、その非現実性を非現実的でないものと読者あるいは日本に納得させるために数段階にわたる予防線的なトリックを講じている。その芸術的なまでの技の冴えは一読の価値がある。特に、この小説の開幕を告げる、謎の人物からの手紙だが、「なぜわざわざ手紙を出さなければならなかったのか」の理由なんて、常人の考えうる範囲を超えている。たしかに必然的な理由があるのだが、こんなこと考えつくなんて、天藤真、悪魔みたいな脳髄の持ち主だ。

     大学の図書館に角川文庫版の天藤真が全冊揃えてあったので、「大誘拐」と本書に限らず、天藤真はよく読んだ。日々精神の安定を失い、地獄の底をさまようような気分になっていたときに、地獄にもいささかの笑いと安らぎはあると思わせてくれる「鈍い球音」などの人間味あふれるミステリの数々はいい気分転換になった。それにしても、ライフワークとしての大長編小説の序章として発表された長編「炎の背景」の続きが出る前に作者の天藤真自身が急逝してしまったのは残念であるなあ……。完成していたらミステリ界でも屈指の、波乱万丈の恋愛ドラマになっただろうになあ。
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    ~ Comment ~

    Re: 面白半分さん

    「大誘拐」のようなおおらかなユーモアだけが天藤先生じゃない、ということです。ブラックジョークそのものの異様な感覚を見せることも天藤先生の魅力の一つで。

    短編「重ねて四つ」とかも好きですね~。

    NoTitle

    天藤真のイメージとは異なる作品なんですね。
    これも面白そうです。
    どこまでブラックなのか試したい

    Re: ひゃくぺりあぁ ~決して一人では見ないでくださいさん

    天藤真は基本的に「ハズレ」を書かない作家で、そのアベレージは驚異的に高いですからね。

    超大型の場外ホームラン級傑作の「大誘拐」ばかりが取りざたされてますが、どれを読んでも面白いですよ。

    NoTitle

    >天藤真はよく読んだ
    一冊も読んだことないですねー。
    ていうか、アマゾンがなかったら、名前さえ知らなかった作家の1人ですね(^^;

    しっかしよく読みまくってますねー(^^)/
    • #20306 ひゃくぺりあぁ ~決して一人では見ないでください 
    • URL 
    • 2019.08/04 16:00 
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