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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    日本ミステリ98位 ひげのある男たち 結城昌治

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     高校に入り、ミステリとSFを中心に読書する、という願ってもない同好会があることを知ってそのまま飛び込み、先輩たちが買っては寄贈した膨大な蔵書にうへうへいいながら耽溺していたころに読んだ一冊で、結城昌治の長編デビュー作である。その時の読後感では面白かったように思う。内容をすっかり忘れてから30年ぶりくらいに再読。その結果、この小説の犯人を覚えていたことに気づいた。この東西ミステリーベスト100に入っている、別な小説の犯人だと思っていたのだ。別な小説のその立場の人には悪いことをしたと思う。30年もたつと記憶もあいまいであるなあ。

     さて、本書であるが、よくできたユーモア・ミステリである。読んだ感触としては仁木悦子の「猫は知っていた」と似たような、ソフィスティケートされた感じ。終始のほほんと話が進むように見えて、けっこう真実はビターなところも共通している。だが、登場人物のエキセントリックなところから、わたしはこの「ひげのある男たち」のほうが好きだ。作中でもっとも生き生きしている郷原部長刑事が、いい迷探偵ぶりを見せていてくれてにやにやできる。

     トリックもよくできているが、一番の白眉は、小説の中盤で起こるあのサプライズであろう。東西ミステリーベスト100のあらすじ紹介では、このサプライズまで書いてしまっているため、ちょっと興ざめだが、まるで落語を聞いているかのような笑いどころがあるのだ。

     こういう作家が、やるせないスパイ小説「ゴメスの名はゴメス」だとか、やるせないハードボイルド「真木シリーズ」を書くようになるのだから世の中はわからない。いや、あっちも好きだけど。

     わたしが「真木シリーズ」より「佐久シリーズ」のほうが好きなのは、あの愛すべき郷原部長刑事が登場したりして、ユーモア・ミステリでありながら、渋い私立探偵小説でもある、「過渡期」的なところに惹かれるからかもしれない。くすぐりを入れて笑わせながらも、ビターな真相を暴いていく「面白くてやがてかなしき」小説であるところに、わたしは結城昌治の最大の魅力というか、「本領」を見るのだが。

     こうなると読みたくなってくるのが、戦後の大阪での万引き集団を扱った、作者のユーモア路線の最高傑作といわれる「白昼堂々」である。小学生の時に押入れから掘り出し、読みかけて挫折して以来読んでいない作品だ。結城昌治は「軍旗はためく下に」よりもこちらで直木賞を取るべきだったと嘆く評者もいる。宿題にしておきたい。
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    ~ Comment ~

    NoTitle

    >いちばん本筋と関係ないところやんけ
    そうそう。まさに(爆)
    • #20440 ひゃくデカ「んぺと」 
    • URL 
    • 2019.09/16 14:50 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 秘密戦隊ひゃくレンジャーさん

    いちばん本筋と関係ないところやんけ(笑)

    NoTitle

    >よほど島田荘司が合わんのだなああなた
    確かに、よっぽど合わんみたい(爆)
    ぶっちゃけ、石岡氏が京都の市電の駅で思い立って、あちこち調べまわる、あの件が一番面白かったってぇーんだから(^^ゞ
    • #20402 秘密戦隊ひゃくレンジャー 
    • URL 
    • 2019.09/01 15:59 
    •  ▲EntryTop 

    Re: ひゃく・にち・べにさん

    普通のミステリファンはそこら辺に来るとすでに本書を読むのをやめること自体が困難になっているはずなのだが……よほど島田荘司が合わんのだなああなた。

    NoTitle

    >さっさと読まんかい
    あれ、めんどくさい。
    やっと、飯田なんとかが出てくるとこまできたけど、それまでが雪の密室がどーちゃらこーちゃら、なんかどーでもいいよ!そんなのあとでやれ!って、もぉ読んでいて眠くなっっちゃって(^^ゞ
    あれ、ぶっちゃけ、その後もう少し、面白くなるのぉ~?(^^)/
    • #20382 ひゃく・にち・べに 
    • URL 
    • 2019.08/25 16:07 
    •  ▲EntryTop 

    Re: イエローひゃくマリンさん

    さっさと読まんかい。損はさせへんで。

    NoTitle

    >いいから読め
    そげんこつ言うたかて、バッテン、あんさんがおススメの『占星術殺人事件』買うてしもうたぞな、もしー。 ←どこ弁だ?(^^ゞ
    • #20357 イエローひゃくマリン 
    • URL 
    • 2019.08/18 15:15 
    •  ▲EntryTop 

    Re: ひゃくの惑星さん

    あの人のユーモアは、上品でソフィスティケートされていて、どことなくペーソスがあって、いいから読め(笑)

    Re: 面白半分さん

    デビュー作が「寒中水泳」っていう、ユーモアミステリの上にガチガチの謎解きですからね、結城昌治先生。

    その時代の作品も、味があっていいですよ~(^^)

    NoTitle

    ふーん。結城昌司のユーモアって、どんな感じなんだろ?
    ていうか、あの時代のユーモアって、どの辺にツボがあるんだろ?
    ちょっと興味あるな―(^^ゞ

    NoTitle

    ハードボイルドの方を先に読んでいたので
    ユーモアミステリのほうがびっくりでした。
    長編デビュー作でしたか!

    イメージとしてはハードボイルド作家です
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