映画の感想
「ちいさな独裁者」見た
有楽町のミニシアターで見た。
いや、きっつい戦争映画であった。第二次大戦末期のドイツで、脱走兵が大尉の軍服を盗み、残虐行為の限りを尽くす、という『実話』である。ドイツ人らしい徹底したリアリズムで撮られた映像は、この特異な人物を、まさに目の前で生きているかのように描き出す。
とにかく、主演の脱走兵ヘロルトのキャラクターが強烈で、軍服一枚とうち捨てられた車一台から、恐ろしいほどのアドリブの才でみるみるうちに人心を掌握し、デタラメの『特殊部隊H』を作り上げていく。やっていることはメチャクチャなのだが、この、次から次へと化けの皮がはがれそうになる危機を口車ひとつで乗り切っていく前半は、ブラックユーモア作品としても出色で、恐ろしい話だが『エンターテイメントとして面白い』。
そこから舞台は軍刑務所に移るのだが、そこもブラックジョークのカタマリである。軍隊内の脱走兵を収容しているここで、かねてから「軍が彼ら脱走兵に対して甘すぎる」と考えていた収容所の警備責任者を味方につけ、「法的な後ろ楯」まで得た上で、「収容されていた脱走兵90人を全員処刑する」という荒業(「断固とした決然たる処置!」)でもって、将校たちの人心を掌握し、全権を握ってしまう。いやはやである。
邦題の「ちいさな独裁者」というのはあまりにも強引でありすぎるだろうが、ほかに適当なタイトルがないのも事実。原題は「Der Hauptmann(大尉)」で、こっちのほうが確かにふさわしい。
反戦、とか、怖い、とかいう前に作品が思考の先を行ってしまうタイプの映画で、主人公が悪の限りをつくすのをあれよあれよと見ているうちに映画は終わってしまう。残されるのは呆然としている観客と、なんとなく胸の奥に残る不条理感、倫理的に「見てはならぬもの」を見てしまったときのあの胸の奥に残る「共犯者意識」である。
しかし自国のこんな非道な話を2019年の今になってではあるが映画化して公開するドイツ人の根性は見上げたものである。「はだしのゲン」でさえ目くじらを立てる日本では考えられないことであろう。
だから今こそ「ゆきゆきて、神軍」を全国ロードショーでだな(待て)
いや、きっつい戦争映画であった。第二次大戦末期のドイツで、脱走兵が大尉の軍服を盗み、残虐行為の限りを尽くす、という『実話』である。ドイツ人らしい徹底したリアリズムで撮られた映像は、この特異な人物を、まさに目の前で生きているかのように描き出す。
とにかく、主演の脱走兵ヘロルトのキャラクターが強烈で、軍服一枚とうち捨てられた車一台から、恐ろしいほどのアドリブの才でみるみるうちに人心を掌握し、デタラメの『特殊部隊H』を作り上げていく。やっていることはメチャクチャなのだが、この、次から次へと化けの皮がはがれそうになる危機を口車ひとつで乗り切っていく前半は、ブラックユーモア作品としても出色で、恐ろしい話だが『エンターテイメントとして面白い』。
そこから舞台は軍刑務所に移るのだが、そこもブラックジョークのカタマリである。軍隊内の脱走兵を収容しているここで、かねてから「軍が彼ら脱走兵に対して甘すぎる」と考えていた収容所の警備責任者を味方につけ、「法的な後ろ楯」まで得た上で、「収容されていた脱走兵90人を全員処刑する」という荒業(「断固とした決然たる処置!」)でもって、将校たちの人心を掌握し、全権を握ってしまう。いやはやである。
邦題の「ちいさな独裁者」というのはあまりにも強引でありすぎるだろうが、ほかに適当なタイトルがないのも事実。原題は「Der Hauptmann(大尉)」で、こっちのほうが確かにふさわしい。
反戦、とか、怖い、とかいう前に作品が思考の先を行ってしまうタイプの映画で、主人公が悪の限りをつくすのをあれよあれよと見ているうちに映画は終わってしまう。残されるのは呆然としている観客と、なんとなく胸の奥に残る不条理感、倫理的に「見てはならぬもの」を見てしまったときのあの胸の奥に残る「共犯者意識」である。
しかし自国のこんな非道な話を2019年の今になってではあるが映画化して公開するドイツ人の根性は見上げたものである。「はだしのゲン」でさえ目くじらを立てる日本では考えられないことであろう。
だから今こそ「ゆきゆきて、神軍」を全国ロードショーでだな(待て)
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NoTitle
>来てるのは映画マニアの中高年ばかりだった
へー。
そういうものなんだ。
あれかな?若い世代は映画館じゃなくて、DVDや配信で楽しむのかな?
>わたしがいちばん若かった
それって、そのサークルがそういうサークルなだけじゃないのぉ~。
「60~70年代のミステリー映画を楽しむ会」みたいなー(^^;
へー。
そういうものなんだ。
あれかな?若い世代は映画館じゃなくて、DVDや配信で楽しむのかな?
>わたしがいちばん若かった
それって、そのサークルがそういうサークルなだけじゃないのぉ~。
「60~70年代のミステリー映画を楽しむ会」みたいなー(^^;
- #19941 ひゃくあられ
- URL
- 2019.03/03 17:03
- ▲EntryTop
Re: 22ひゃく事件さん
初めて行ったけど、来てるのは映画マニアの中高年ばかりだったです(^^;)
その後に行きつけの映画サークルに参加してきたけど、
そこではわたしがいちばん若かった(笑)
その後に行きつけの映画サークルに参加してきたけど、
そこではわたしがいちばん若かった(笑)
NoTitle
>有楽町のミニシアターで見た
へー。有楽町のミニシアターとか、行くんだ。
ブリッツさん、わっかーい!
冗談抜きで、若者or中年は、今現在どんな映画が公開されているか知っているかor知らないかで別れる気がします(^^;
ちなみに私は、かれこれ十年以上前からわからなくなりました(爆)
へー。有楽町のミニシアターとか、行くんだ。
ブリッツさん、わっかーい!
冗談抜きで、若者or中年は、今現在どんな映画が公開されているか知っているかor知らないかで別れる気がします(^^;
ちなみに私は、かれこれ十年以上前からわからなくなりました(爆)
- #19921 22ひゃく事件
- URL
- 2019.02/24 16:54
- ▲EntryTop
Re: LandMさん
戦争をテーマにしたブラック・ユーモア映画は多いですよ。
今度CS放送を録画するつもりの「素晴らしき戦争」とか、中国戦線での旧日本軍を扱った「独立愚連隊西へ」、冷戦と核戦争をネタにした「博士の異常な愛情」とか。キューブリックでは、傑作「フルメタル・ジャケット」でもブラック・ユーモア的要素は欠かせません。なにせハートマン軍曹のセリフなんて、普通の生活に持ってくるとギャグでしかありませんからねえ。
ユーモア精神がない人間が、戦争映画なんか撮るべきじゃない、とまで思いますね。いやほんと。
今度CS放送を録画するつもりの「素晴らしき戦争」とか、中国戦線での旧日本軍を扱った「独立愚連隊西へ」、冷戦と核戦争をネタにした「博士の異常な愛情」とか。キューブリックでは、傑作「フルメタル・ジャケット」でもブラック・ユーモア的要素は欠かせません。なにせハートマン軍曹のセリフなんて、普通の生活に持ってくるとギャグでしかありませんからねえ。
ユーモア精神がない人間が、戦争映画なんか撮るべきじゃない、とまで思いますね。いやほんと。
NoTitle
まあ。なんでしょうね。。。
戦争映画ってなると、どうしてもメッセージが「戦争はいけないこと」というものが入って来るので、つまらない・・・ということが先入観になってしまうんですよね。
(確かに戦争なんて、絶対に嫌ですが。医療者にとっても)。
けど、エンターテインメントとして、戦争として、
残虐性とかブラックジョークとか交えるのも必要だな。。。
・・・と思います。
( 一一)
戦争映画ってなると、どうしてもメッセージが「戦争はいけないこと」というものが入って来るので、つまらない・・・ということが先入観になってしまうんですよね。
(確かに戦争なんて、絶対に嫌ですが。医療者にとっても)。
けど、エンターテインメントとして、戦争として、
残虐性とかブラックジョークとか交えるのも必要だな。。。
・・・と思います。
( 一一)
Re: blackoutさん
うーん、どうなんでしょうねえ(^^;)
この映画の置き去りっぷりは、それとはちょっと違うような感じがします。
まあ映画と小説という媒体の違いもありますけどね。
この映画の置き去りっぷりは、それとはちょっと違うような感じがします。
まあ映画と小説という媒体の違いもありますけどね。
NoTitle
次回作は、3月ごろに書き出そうかと思ってる今日この頃ですが、なんとなく私の書いてきた小説も、この読み手や視聴者の思考の先を行ってしまう感じかなと
そんなことを思いました
もしくは、ただ単に読み手や視聴者を置き去りにしてるだけ、かな(汗)
そんなことを思いました
もしくは、ただ単に読み手や視聴者を置き去りにしてるだけ、かな(汗)
- #19911 blackout
- URL
- 2019.02/19 15:02
- ▲EntryTop
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Re: ひゃくあられさん
ミニシアターまで行くってのはマニアくらいのもんでしょう。わたしはマニアじゃないけれど。