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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ107位 黄色い犬 ジョルジュ・シムノン

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     シムノンのメグレ警視シリーズは膨大な数にのぼるが、その中でも代表作のひとつとして名高い小説である。高校のころ、創元の合本で「男の首」と一緒に読んだ覚えがあるが、内容は完全に忘れてしまった。新鮮な気持ちで再読。

     で、読んだわけであるが、ある人いわく、「メグレなんて、想像力だけでできているような男だ」まさにその通り。この平和な港町を恐怖のどん底に陥れた事件に対し、メグレは直観と想像力だけで戦うのである。その独特な捜査ぶりには読んでいてほんとにくらくらきた。こんな奴に見込まれた犯人が気の毒である。

     これが折原一とか中町信だったら叙述トリックにするんだろうなあ、というような事件であるが、シムノンはこれに正面から答えて見せた。力技というもおろか、小説家としてのシムノンの剛腕ぶりが如実にわかる。ちょっとでもパワーと勢いがそがれたら空中分解してもおかしくない小説なのだ。

     メグレ警視シリーズは、この85年版「東西ミステリーベスト100」に、101位以下も含めると「男の首」「黄色い犬」「サン・フォリアン寺院の首吊り人」と3作ランクインしているが、どれもこれも「まっとう」な代物ではない。「シムノンの小説」とでもいうしかない作品である。

     一時期、「新しいミステリ」の代表として、シムノンとメグレがやたらと取り上げられたことがあるそうだが、「新しい」とか「古い」とかではないのだ。シムノンはシムノンであり、孤絶した「オンリーワン」なのだ。だから、「肌に合う」人間には異常にぴったりくるし、ダメな人間にはとことんダメだろう。

     今回は、バーミヤンでフライドポテトをサカナに軽く一杯やりながら読んだ。先のまったく見えない五里霧中な事件をメグレに鼻面をとられて引っぱりまわされるのはミステリファンとして無上の快感だった。こうなってくると、河出書房新社のシリーズを片っ端から読みたくなってくるが、土浦市立図書館にはさすがにおいてない。さっきも書いたように、「シムノンの小説」が肌に合う人間しかピンとこないシリーズなので、そういう人間は、この日本ではどう考えても少数派だろう。だから、早川や創元が改訳版でシリーズ全巻を出す、とかいうことには天地がひっくり返ってもなるまい。

     少し前、ローワン・アトキンソンがテレビでメグレをやって話題になっていたが、この「黄色い犬」みたいな事件を演じるには、ローワン・アトキンソンでは少し線が細くてインテリじみているような気がする。やっぱりジャン・ギャバンでないとダメなのか。ほかに演じる人はいないか……と思ったら、ひとり適任がいた。

     片岡千恵蔵(笑)。

     わたしが映画会社の社長だったら、片岡千恵蔵主演で「日本版メグレ」を撮らせていたと思う。金田一耕助より、よほどはまり役だったんじゃないのか。惜しい(笑)。
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    ~ Comment ~

    NoTitle

    >一党独裁の警察国家だからつつがなくやると思うけど
    オリンピックはいまだに反対って方だけど、とはいえ、やるからには、つつがなくやってほしいですね。

    Re: ひゃーく・すかいうぉーかーさん

    まったくですな。日本の安全神話など、神話でしかなかったことが21世紀になってまるわかりに。

    こんな国がオリンピックだとさ。まあ一党独裁の警察国家だからつつがなくやると思うけど。
    • #20593 ポール・ブリッツ 
    • URL 
    • 2019.11/11 13:12 
    •  ▲EntryTop 

    NoTitle

    >あの警報が出た時点で家を離れて避難所へ行くと、たぶん二次災害しか引き起こさないと思う
    19号台風では、都内じゃ避難所が人であふれたとこも多かったらしいですもんね。
    今までは行政も、どーせ避難するヤツなんかいないよなぁ~だったけど。
    今年でまるっきり意識が変わっちゃったろうから、行政は元より一般庶民も意識を根本に変えないとまずいんだろうね。
    ま、なんにしてもとりあえずは無事でなによりでした。
    • #20580 ひゃーく・すかいうぉーかー  
    • URL 
    • 2019.11/04 15:18 
    •  ▲EntryTop 

    Re: ひゃくの焦点さん

    あれも低地のほうではレベル4警報出たようで、スマホがうるさくてかなわんでした。

    教訓として、あの警報が出た時点で家を離れて避難所へ行くと、たぶん二次災害しか引き起こさないと思うので、わたしみたいな身体弱者(何しろ睡眠時無呼吸症候群で、寝る時に呼吸の補助具を持っていかないとえらいことになる)は、雨がまだ小ぶりのときに避難しないとあかんですな。コンセントの確保とか、いろいろたいへんなのよ。

    NoTitle

    >生まれてはじめて「避難」とかしたけど、わたしは元気です。
    へー、避難したんだー。
    あの辺りで高台って……
    あ、荒川沖の方に行くと、確か高台があったっけ?
    何にしても無事でよかったけど、そーいえば、金曜日(10/25)の大雨で桜川が危険水位とか出てたけど、そっちは大丈夫だったの?

    >イヤになる人は10ページも読むとイヤになる
    そんなこと言われると、読んでみたくなる(笑)

    Re: こみさん

    恐ろしいことに、シムノンのメグレ警視シリーズ、「全作」邦訳があって、しかもそれが出版社バラバラなんですよね。

    メグレは当たりはずれも大きいみたいですから、ちょっと手を出しにくいところがあります。

    警察官が勤務中に酒を飲むのは当然のことかと……。(『鬼平犯科帳』を読みながら)

    NoTitle

    河出書房のシリーズ、11冊ありますよ。
    なんか一時期ハマりました。
    都築道夫の砂絵シリーズみたいに、その世界に浸ってたいって感じでした。
    だって、仕事中にビールとか飲んじゃうんだもん。
    『サンフォリアン寺院』が未読なので読んでみたいです。

    Re: 面白半分さん

    大胆というかなんというか、江戸川乱歩も「幽鬼の塔」として翻案してる「サン・フォリアン寺院の首吊り人」なんてすごいですよ。メグレが最初に思いつきだけでとんでもない行為をしてから、メグレがほとんど何もしないのにめちゃくちゃ面白い、という、ひとくちでいって「変な話」(笑) その本については再来年あたりに書けると思います(^-^)

    Re: ひゃく軒店商店街さん

    生まれてはじめて「避難」とかしたけど、わたしは元気です。

    メグレはフランスでOK。それにしても、最近ほんとに見なくなっちゃったなあ。

    肌に合うかどうかは、適当に一冊選んで読んでみれば一発でわかります。独特な文体と展開なので、イヤになる人は10ページも読むとイヤになる(笑)

    バーミヤンにありますよ、フライドポテト。あれ食うと覿面に太りますな(笑)。とほほ。

    NoTitle

    おおメグレ警部シリーズですか
    読んでる気がするがやはり思い出せません。

    「まっとう」でないのか!

    そういうフレーズで引き寄せられてしまうのです

    NoTitle

    10/12の記事って、もろ台風の日ですけど、大丈夫でした?

    メグレ警部…、警視だったっけ?は、名前だけはよく聞きますけど、読んだことないですね。
    ていうか、本自体見たことがないよーな?(^^ゞ
    最近の日本人は、妙におフランスが好きじゃないようなところがあるから、あんまり流行らないのかな?
    ていうか、メグレ警部(あ、警視?w)はフランスで合ってる?
    フランスのイメージだったから、フランスって言ってるだけなんだけど(^^;

    >バーミヤンでフライドポテトをサカナに
    バーヤミンって、中華料理のファミリーレストランじゃなかったっけ?
    バーヤミンでも、フライドポテトがあるんだ!?

    >「シムノンの小説」が肌に合う人間しかピンとこない
    肌に合う、合わないの、その差は何?
    • #20523 ひゃく軒店商店街 
    • URL 
    • 2019.10/14 16:09 
    •  ▲EntryTop 
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