ウォーゲーム歴史秘話
『偉大なる敗軍の将』を探して(日本編)
アイザック・アシモフ先生の「黒後家蜘蛛の会」のある作品のマクラで、「世界史で、『偉大なる敗軍の将』を三人挙げるとしたら誰か」という話題がふられたことがあった。「カルタゴのハンニバル」「フランスのナポレオン」がすぐに出てきて、あと一人は誰だ、ということになり、「スウェーデンの少年王カールかな」という意見に対して、ゲストが「南北戦争のロバート・E・リー将軍」だ、といって一同納得する、という、アシモフお得意の、本筋のミステリに関係ない雑学雑談話である。
中学生だったわたしは、さすがアシモフ、いいところ突くなあ、と思ったが、今にして思うと、ちょっとこれは変だ。アジアやアフリカやオーストラリアはどうした、である。ヨーロッパ偏重もいいところだ。特にリー将軍、あなたみたいなレベルの敗軍の将だったら、ほかにもいくらでもいるんじゃないのか。
まあアメリカ人が世界三大美女に「クレオパトラ」「楊貴妃」に並んで「小野小町」が入っていたら同じように思うんだろうな。やつらは平気で「マリリン・モンロー」とかいいかねん。個人的には「小野小町」が入るなら「マリー・アントワネット」が入ってもよさそうだとは思う。
で、わたしは東洋の「偉大なる敗軍の将」を考えたわけだが……意外と難しい。亡国の危機に直面して死んだオリエントの将軍は、たいてい、「戦には勝ったもののその後の政治的混乱に巻き込まれて処刑される」ものだからだ。
かくしてわたしは、数年前に、土浦市立図書館の廃棄図書からもらってきた「戦争・事変 全戦争・クーデター・事変総覧」という本を読んで、「偉大なる敗軍の将」を探すことにした。
「ふーん」
なんだよキリコ。じゃなくて霧村さん。
「そんなことより、応募原稿でも書いたらどうなの? 3月末が締め切りなんでしょ」
うるさいな。まず、日本からだ。古いところで「壬申の乱」から行こうか。
「あれはダメよ。大友皇子は、どう考えても名将って器じゃないわ」
ばっさりだなお前。じゃあ、承平の乱の平将門は……。
「名将愚将以前にあまりにもマイナー。藤原純友も同様ね。特に平将門なんて、大河ドラマ『風と雲と虹と』の後は、荒俣宏が『帝都物語』を書くまで日本人全員忘れてたわよ」
茨城県民としてはつらいなあ。ということは、同じ理由で、前九年・後三年の役も……。
「安部貞任なんて、東北人以外はマニアとシミュレーションゲーマーしか名前知らないわよ」
そうかもしれん……保元・平治の乱はどうだ?
「平清盛ね。彼は優れた軍事指揮官だけど、最終的に勝っちゃったから、『敗軍の将』とは呼べないわ」
源義経みたいな、拮抗する天才と戦わないで済んだだけ、大スキピオと戦わなくちゃならなくなったハンニバルよりは運がよかったな。では源平争乱に行こう。木曽義仲はどうだい。
「野蛮すぎてちっとも偉大さを感じないわよ、あの男。ネームバリューでも源義経に完全に負けてるし」
その源義経は……。
「さっきもあなたが挙げていた通り、戦いには勝ってもその後の政治的闘争で殺されたバージョンね。偉大だけれど『敗軍の将』じゃあないわね」
これで「古代」は終わって、「中世」に移るわけだけど……承久の乱の後鳥羽上皇は?
「無能」
おまえね、恐れ多くも皇族のおかたに……日本会議から刺されても知らんぞ。宝治の乱はまたお前に「マイナー」とかいわれそうなので飛ばすか。
「わかってるじゃない。次は『元寇』ね」
最近の研究ではいろいろとわかってきて、日本側もただやられるだけの無能だったわけじゃなく……。
「この戦いでも、現地で戦った指揮官の名前、元軍も日本軍も、パッと出て来る? その時点で、『偉大なる敗軍の将』に当たる人物、いないわよ。北条時宗は後ろにいたし、クビライ・カンは日本に来る気すらなかったでしょ、たぶん」
待て、それをいうならアシモフのあれでもリー将軍のことなんて……。
「『黒後家蜘蛛の会』は、アメリカ人がアメリカ人に向けて書いた小説よ。そして、教育受けたアメリカ人なら誰でもリー将軍のことは源義経とかのことみたいによく知ってるわ」
リー将軍はともかく、ハンニバルとナポレオンなら、普通にマジメに教育受けた日本人なら、何をしたかは知らなくても名前だけは知ってるレベルの天才指揮官だからなあ。わかったよ。次行こう。
「鎌倉滅亡から南北朝を経て室町幕府が成立するまでは面白いわね。あたしのイチオシは北畠顕家よ。北方謙三の小説『破軍の星』なんて泣けるわよ」
ほう。お前、そういう趣味だったのか。
「戦績、重要度、逸話といい、『偉大なる敗軍の将』としてはこれ以上の人はいないけど、問題はこの南北朝時代がマイナーすぎることよね。戦前の極端なまでの南朝正統説のごり押しがアレルギー反応になって研究その他に影を落としてるんだと思うけど、残念よね。大河ドラマも『太平記』だけだし、シミュレーションゲームも事実上、『太平記』ってゲームが出るまではほとんど未踏の荒野状態だったしねえ」
うん。ゲームの「太平記」はわたしも遊んだけど、あれは楽しい。東北から北畠顕家を南下させて、鎌倉の武家方を一方的にボコボコにしてサドンデス勝利すると胸がスカッとする。
「あなた、笠井潔主義者の、『左翼系ファシスト穏健派』じゃなかったっけ?」
いいんだよ。ネットの心理テストやってみたら共産主義者じゃなくて社会民主主義者って結果が出たから。じゃあ、いちおう、『北畠顕家』を候補に入れとこう。
「楠木正成もいい負けっぷりだったけど、あの人最後まで、『合戦の最高指揮官』になれたわけじゃないから除外よ。一時期『太平記』プレイヤーの間では、上級の司令官を全部外して、楠木正成を総大将にして武家方をボコボコにするプレイがはやったそうだけど、そうでもしないかぎり、歴史でも楠木正成に真の実力を発揮させる方法はなかったでしょうね」
戦前生まれが文句言うのが聞こえそうだ。南北朝はそれでいいとして、室町時代の中期から後期をいってみよう。
「あなた、足利義教が好きみたいだけど」
ありゃダメだよ。政治改革者としてとらえるべきで、その意味では革新的だけど、政治家としても軍人としても明らかにダメだろ。ひどい恐怖政治やった結果、嘉吉の変で、本拠も本拠の京の都で首を取られたうえに、仇討ちをしようってやつが誰一人出てこないっていう人望のなさだから。
「『夢逐人』の続きを早く書かないと、ただでさえ少ないあなたの人望もゼロになるわよ」
……きついこというなあ。でも反論できん。
「蝦夷地ではコシャマインの乱が起こってるわね」
そういうセンシティブな話題には触れないでおこう(汗)。それに、アイヌの軍事指導者としては、むしろ後代のシャクシャインを考えるべきだろうな。善戦したけど外交交渉中に謀殺されたわけで、これはシャクシャインが偉大だというより江戸幕府が卑劣だといったほうが。
「どっちがセンシティブよ。となると、次は応仁の乱かしら」
めちゃくちゃな争いだったからなあ。一時期ベストセラーになった、あの時代を解説した新書、図書館で借りて読んでみたけどまったくわけがわからんかった。この戦乱は聞かれても答えられん。それより、次行こうぜ、次。お待ちかねの「戦国時代」だ!
「盛り上がってるようだけど、ひとこといい?」
なんだ?
「応仁の乱が形だけでもおさまったのが1477年。大坂夏の陣で家康が大阪城を攻め落としたのが1615年。その間、本州以南の日本全土が大規模な内乱状態にあったわけだけど、なんでそんなに内乱が続いたのかしら」
なんだっていうんだよ。
「ひとことでいって、『傑出した軍事指導者が出なかった』からよ。軍事的なテクノロジーというハードウェアとそれを動かすためのソフトウェアは発展したけど、使いこなせた人間がいなかったのよね。だから日本全土で『ジャブの打ち合い』みたいな光景が繰り広げられて、むなしい勝った負けたが繰り広げられていたわけ」
戦国時代ファンが聞いたら怒るぞ。じゃあ、その中で優秀な軍事指揮官は誰だっていうんだ。
「月並みだけど、信長と秀吉と家康しかいないでしょ。この三人よりも自分の支配領を広げたやつ、いる?」
……いないな。
「で、この三人に負けた戦国大名で、この三人よりも『この人は偉大だ』って人、考えられる?」
い、石田三成……いやごめん。考えられん。動員兵力から考えると、今川義元も、浅井長政も、武田勝頼も、毛利も本願寺も北条も、石田三成も、真田幸村も、小物ないし力不足だ……。武田信玄や上杉謙信が当たっていたらどうなったかはわからない。両方とも織田があれほどでかくなる前に死んでしまったし、伊達政宗は合戦よりも政治的陰謀で名を成した男だし、九州の大名は大友宗麟が秀吉に泣きついて、島津も軍事的判断からだろうけど秀吉に服しちゃったし。もし、島津家があくまで九州統一にこだわって秀吉と対決したら、「偉大なる敗軍の将」と呼ばれるにふさわしい美的敗北を遂げたろうけど、島津はそこまでバカじゃないしな。
「では、この三人の中に、『偉大な敗軍の将』はいるかしら?」
……いない。織田信長は『敗軍の将』になる前にひとりで逃げちまうやつだ。頭がいいっちゃそうだけど。最期も合戦というよりは政治的暗殺だしな。秀吉は小牧・長久手で家康に負けたってなってるけど、政治的策謀で、戦後、どっちが勝ったかと言えば秀吉だろう、ということになっちゃって、最後も天下人として畳の上で死んだしな。家康に至っては二百年以上続く江戸時代をもたらした最終的勝者だ。
「そういうことになるわねえ」
まったく、関ケ原の戦いで、西軍の実質的総指揮官を宇喜田でも石田でもなく、上杉景勝か直江兼続がやっていたら、『偉大なる敗軍の将』と呼ばれてもよかったんだろうけど、石田三成の戦闘力はどうみても家康以下だ。関ヶ原戦役って、石田三成がなにかをやればやるほど、家康が偉大に見えてくる、という気の毒さがあるよなあ。鉄壁の包囲陣を作っておいて、その三分の一がまともに働かないかもしくは裏切りを鮮明にする、って時点で、三成はじめ西軍首脳部、そろって、アホか、と。たぶん日本の軍事史を調べてこの合戦のことを知ったドイツ人のメッケル少佐、呆れてたぜ。
「1757年のインドで、イギリス東インド会社軍3000に対して、ベンガル軍とフランス東インド会社軍合計60000が正面からぶつかった結果、ベンガル軍のうち50000人が寝返ってイギリス軍の大勝利に終わったプラッシーの戦いってのがあるから、そう呆れはしなかったんじゃないかしら」
そんなゲームやりたくはないなあ。
「秀吉の朝鮮出兵では、まさに『ピュロスの勝利』を地で行くことになったしね。総退却を成功させただけでも日本軍の精強さがわかるけど、『偉大なる敗軍の将』が出るほどの軍事的敗北はしてないわ。そんな敗北してたら日本軍は全滅してただろうしね」
わかったよ。戦国時代に『偉大なる敗軍の将』はいなかった、でいいよもう。では江戸時代。
「泰平だったから……」
島原の乱は?
「本気でいってるの? あんな反乱起こした時点で、一揆勢は軍事的に無能よ。板倉重昌がそれ以上に無能なうえに手兵もないような状態だったから序盤は善戦したように見えるけど。幕府の増援が続々やって来ることと、スペインからの援軍が来るわけないことくらい見抜けなきゃ、最初から戦争なんて始めちゃいけないのよ」
もしお前が島原の乱の指導者だったらどうするんだ?
「籠城策なんか捨てて、九州じゅうを逃げ回ってゲリラ戦やってたでしょうね。それでも勝ち目はないでしょうけど、あたしは籠城って嫌いなの」
そういうやつだったなお前。
「シャクシャインの乱と、クナシリ・メナシの乱は、史実を調べるだけで暗澹としてくるので、飛ばしたほうがいいわね。『偉大なる敗軍の将』どころか、ただの虐殺よ、あれ」
飛ばすっていうと、いきなり幕末か。早いな。天誅組と天狗党と薩英戦争は飛ばすぞ。小規模すぎたりマイナー過ぎたり、敗軍というにはあまりに節操がないというか、負けた側に敗軍という気がしない戦いだったりするからな。
「じゃあ戊辰戦争だけど……負けた側の最高指揮官である徳川慶喜、えらい人とは思うけど、軍事的指揮官としては……」
無能だよな。
「北越戦争を指揮した河合継之助は……」
「峠」は読んだけど、司馬遼太郎、ひいきの引き倒しじゃないのか。ハンニバルもナポレオンも、ゲティスバーグのリー将軍も、『この乾坤一擲の大博打に勝てば最終的な勝利だ』という状況を作れたけれど、河合継之助はそうじゃないしなあ。だいたい、「調停」が成立すると考えた時点で、戦争の大局を読み間違えてるよあの人。
「五稜郭の土方は?」
北海道共和国ができてたら、たぶん三年もしないうちにロシアの植民地だったろうと思うね。そうでなくても、新政府軍と戦えば、じり貧の共和国軍は物量的にかなわないことは明白。チャンスがあることを知ったうえで手持ちの軍事力を使って賭けてみるのが名将ならば、五稜郭の旧幕臣は、いずれもそれに値しない。
「西南戦争の西郷さんは……」
暴徒の集まりに無理やり担ぎ出された気の毒な人。だいいち、西南戦争で野戦してないじゃん。
「どっちがボロクソよ」
そういわれてもなあ。じゃあ、明治維新の後の対外戦争では誰かな?
「あのね。あたしにそれをいわせるの?」
いや、わたしがいうと棘が立つかな、と思って。
「あたしがいっても同じじゃないの。うーん、でもまあ、いいたいことはわかるわよ。日清、日露、第一次世界大戦と日本は戦争で負けなしだった。だから、『敗軍の将』が出るわけないわよね。それがまずかったのよねえ……」
得るものが何もなかったシベリア出兵、よせばいいのに中国に手を出した山東出兵。このときならまだ手を引けたかもしれない。しかし満州事変から始まり真珠湾を経て玉音放送で終わる十五年戦争。これはもう、日本としては弁解の余地がない大失策だった。特に真珠湾からの対米戦は、何度も何度も引用しているが、歴史研究家の有坂純先生のいうとおり、「政府の無能と軍部の無責任による国際外交の一連の破滅的な失敗の総決算」そのものだ。そしてこの戦争の救いようのないところは、『偉大なる敗軍の将』がいないところなんだ。近代戦や現代戦は、そんなもの作らない。命令を下した「勝者の将」と、あとは死体の山だけだ。まさに「一将功成りて万骨枯る」でしかない。、敗将は戦死してなければ、生きて責任逃れの日々を送るだけだ。とくにその傾向が日本ではあまりにもひどすぎる。
「顔つきが死人みたいになってるわよ」
死人みたいにもなるさ。なんで「日本の一番長い日」の主役が阿南なんだ。もし、御前会議で軍の総意をまとめてポツダム宣言を早期に受諾して原爆投下とソ連侵攻を回避して降伏文書をミズーリ号に持って行ったのが「山本五十六」だったなら、彼は最後の「偉大なる敗軍の将」になれただろうけど、歴史はそうはならなかった。極東国際軍事裁判なんてのを食らってるのに、誰も責任なんて取りやしない。それどころか神様として祀るっていうんだから文句のひとつも言いたくなるじゃないか。
「センシティブな発言は避けるんじゃなかったの?」
うー、そうだった。まあ、日本人が誰でも知っている、日本独自の『偉大なる敗軍の将』なんて、考えてみりゃ、ひとりしかいないよ。北畠顕家以上の知名度と実力と逸話とに富んでいる人間はね。
「誰よ?」
ヤン・ウェンリー。
「あなた、日本のことばかり考えていて疲れたんじゃないの? いいかげんに寝たほうがいいわよ。それに、アジアにあるのは日本だけじゃないわ。ヤン・ウェンリーついでに、中国行きましょ。それからモンゴル、インド、中東、アフリカとオーストラリアと南米も調べましょうか」
ええと、中国? だったらまずあいつだ。ええと、殷の紂王……。
「時計を見るのよ。そしてもう、今日は薬飲んで歯を磨いて寝なさい。明日の仕事で死ぬわよ」
そうします……。
中学生だったわたしは、さすがアシモフ、いいところ突くなあ、と思ったが、今にして思うと、ちょっとこれは変だ。アジアやアフリカやオーストラリアはどうした、である。ヨーロッパ偏重もいいところだ。特にリー将軍、あなたみたいなレベルの敗軍の将だったら、ほかにもいくらでもいるんじゃないのか。
まあアメリカ人が世界三大美女に「クレオパトラ」「楊貴妃」に並んで「小野小町」が入っていたら同じように思うんだろうな。やつらは平気で「マリリン・モンロー」とかいいかねん。個人的には「小野小町」が入るなら「マリー・アントワネット」が入ってもよさそうだとは思う。
で、わたしは東洋の「偉大なる敗軍の将」を考えたわけだが……意外と難しい。亡国の危機に直面して死んだオリエントの将軍は、たいてい、「戦には勝ったもののその後の政治的混乱に巻き込まれて処刑される」ものだからだ。
かくしてわたしは、数年前に、土浦市立図書館の廃棄図書からもらってきた「戦争・事変 全戦争・クーデター・事変総覧」という本を読んで、「偉大なる敗軍の将」を探すことにした。
「ふーん」
なんだよキリコ。じゃなくて霧村さん。
「そんなことより、応募原稿でも書いたらどうなの? 3月末が締め切りなんでしょ」
うるさいな。まず、日本からだ。古いところで「壬申の乱」から行こうか。
「あれはダメよ。大友皇子は、どう考えても名将って器じゃないわ」
ばっさりだなお前。じゃあ、承平の乱の平将門は……。
「名将愚将以前にあまりにもマイナー。藤原純友も同様ね。特に平将門なんて、大河ドラマ『風と雲と虹と』の後は、荒俣宏が『帝都物語』を書くまで日本人全員忘れてたわよ」
茨城県民としてはつらいなあ。ということは、同じ理由で、前九年・後三年の役も……。
「安部貞任なんて、東北人以外はマニアとシミュレーションゲーマーしか名前知らないわよ」
そうかもしれん……保元・平治の乱はどうだ?
「平清盛ね。彼は優れた軍事指揮官だけど、最終的に勝っちゃったから、『敗軍の将』とは呼べないわ」
源義経みたいな、拮抗する天才と戦わないで済んだだけ、大スキピオと戦わなくちゃならなくなったハンニバルよりは運がよかったな。では源平争乱に行こう。木曽義仲はどうだい。
「野蛮すぎてちっとも偉大さを感じないわよ、あの男。ネームバリューでも源義経に完全に負けてるし」
その源義経は……。
「さっきもあなたが挙げていた通り、戦いには勝ってもその後の政治的闘争で殺されたバージョンね。偉大だけれど『敗軍の将』じゃあないわね」
これで「古代」は終わって、「中世」に移るわけだけど……承久の乱の後鳥羽上皇は?
「無能」
おまえね、恐れ多くも皇族のおかたに……日本会議から刺されても知らんぞ。宝治の乱はまたお前に「マイナー」とかいわれそうなので飛ばすか。
「わかってるじゃない。次は『元寇』ね」
最近の研究ではいろいろとわかってきて、日本側もただやられるだけの無能だったわけじゃなく……。
「この戦いでも、現地で戦った指揮官の名前、元軍も日本軍も、パッと出て来る? その時点で、『偉大なる敗軍の将』に当たる人物、いないわよ。北条時宗は後ろにいたし、クビライ・カンは日本に来る気すらなかったでしょ、たぶん」
待て、それをいうならアシモフのあれでもリー将軍のことなんて……。
「『黒後家蜘蛛の会』は、アメリカ人がアメリカ人に向けて書いた小説よ。そして、教育受けたアメリカ人なら誰でもリー将軍のことは源義経とかのことみたいによく知ってるわ」
リー将軍はともかく、ハンニバルとナポレオンなら、普通にマジメに教育受けた日本人なら、何をしたかは知らなくても名前だけは知ってるレベルの天才指揮官だからなあ。わかったよ。次行こう。
「鎌倉滅亡から南北朝を経て室町幕府が成立するまでは面白いわね。あたしのイチオシは北畠顕家よ。北方謙三の小説『破軍の星』なんて泣けるわよ」
ほう。お前、そういう趣味だったのか。
「戦績、重要度、逸話といい、『偉大なる敗軍の将』としてはこれ以上の人はいないけど、問題はこの南北朝時代がマイナーすぎることよね。戦前の極端なまでの南朝正統説のごり押しがアレルギー反応になって研究その他に影を落としてるんだと思うけど、残念よね。大河ドラマも『太平記』だけだし、シミュレーションゲームも事実上、『太平記』ってゲームが出るまではほとんど未踏の荒野状態だったしねえ」
うん。ゲームの「太平記」はわたしも遊んだけど、あれは楽しい。東北から北畠顕家を南下させて、鎌倉の武家方を一方的にボコボコにしてサドンデス勝利すると胸がスカッとする。
「あなた、笠井潔主義者の、『左翼系ファシスト穏健派』じゃなかったっけ?」
いいんだよ。ネットの心理テストやってみたら共産主義者じゃなくて社会民主主義者って結果が出たから。じゃあ、いちおう、『北畠顕家』を候補に入れとこう。
「楠木正成もいい負けっぷりだったけど、あの人最後まで、『合戦の最高指揮官』になれたわけじゃないから除外よ。一時期『太平記』プレイヤーの間では、上級の司令官を全部外して、楠木正成を総大将にして武家方をボコボコにするプレイがはやったそうだけど、そうでもしないかぎり、歴史でも楠木正成に真の実力を発揮させる方法はなかったでしょうね」
戦前生まれが文句言うのが聞こえそうだ。南北朝はそれでいいとして、室町時代の中期から後期をいってみよう。
「あなた、足利義教が好きみたいだけど」
ありゃダメだよ。政治改革者としてとらえるべきで、その意味では革新的だけど、政治家としても軍人としても明らかにダメだろ。ひどい恐怖政治やった結果、嘉吉の変で、本拠も本拠の京の都で首を取られたうえに、仇討ちをしようってやつが誰一人出てこないっていう人望のなさだから。
「『夢逐人』の続きを早く書かないと、ただでさえ少ないあなたの人望もゼロになるわよ」
……きついこというなあ。でも反論できん。
「蝦夷地ではコシャマインの乱が起こってるわね」
そういうセンシティブな話題には触れないでおこう(汗)。それに、アイヌの軍事指導者としては、むしろ後代のシャクシャインを考えるべきだろうな。善戦したけど外交交渉中に謀殺されたわけで、これはシャクシャインが偉大だというより江戸幕府が卑劣だといったほうが。
「どっちがセンシティブよ。となると、次は応仁の乱かしら」
めちゃくちゃな争いだったからなあ。一時期ベストセラーになった、あの時代を解説した新書、図書館で借りて読んでみたけどまったくわけがわからんかった。この戦乱は聞かれても答えられん。それより、次行こうぜ、次。お待ちかねの「戦国時代」だ!
「盛り上がってるようだけど、ひとこといい?」
なんだ?
「応仁の乱が形だけでもおさまったのが1477年。大坂夏の陣で家康が大阪城を攻め落としたのが1615年。その間、本州以南の日本全土が大規模な内乱状態にあったわけだけど、なんでそんなに内乱が続いたのかしら」
なんだっていうんだよ。
「ひとことでいって、『傑出した軍事指導者が出なかった』からよ。軍事的なテクノロジーというハードウェアとそれを動かすためのソフトウェアは発展したけど、使いこなせた人間がいなかったのよね。だから日本全土で『ジャブの打ち合い』みたいな光景が繰り広げられて、むなしい勝った負けたが繰り広げられていたわけ」
戦国時代ファンが聞いたら怒るぞ。じゃあ、その中で優秀な軍事指揮官は誰だっていうんだ。
「月並みだけど、信長と秀吉と家康しかいないでしょ。この三人よりも自分の支配領を広げたやつ、いる?」
……いないな。
「で、この三人に負けた戦国大名で、この三人よりも『この人は偉大だ』って人、考えられる?」
い、石田三成……いやごめん。考えられん。動員兵力から考えると、今川義元も、浅井長政も、武田勝頼も、毛利も本願寺も北条も、石田三成も、真田幸村も、小物ないし力不足だ……。武田信玄や上杉謙信が当たっていたらどうなったかはわからない。両方とも織田があれほどでかくなる前に死んでしまったし、伊達政宗は合戦よりも政治的陰謀で名を成した男だし、九州の大名は大友宗麟が秀吉に泣きついて、島津も軍事的判断からだろうけど秀吉に服しちゃったし。もし、島津家があくまで九州統一にこだわって秀吉と対決したら、「偉大なる敗軍の将」と呼ばれるにふさわしい美的敗北を遂げたろうけど、島津はそこまでバカじゃないしな。
「では、この三人の中に、『偉大な敗軍の将』はいるかしら?」
……いない。織田信長は『敗軍の将』になる前にひとりで逃げちまうやつだ。頭がいいっちゃそうだけど。最期も合戦というよりは政治的暗殺だしな。秀吉は小牧・長久手で家康に負けたってなってるけど、政治的策謀で、戦後、どっちが勝ったかと言えば秀吉だろう、ということになっちゃって、最後も天下人として畳の上で死んだしな。家康に至っては二百年以上続く江戸時代をもたらした最終的勝者だ。
「そういうことになるわねえ」
まったく、関ケ原の戦いで、西軍の実質的総指揮官を宇喜田でも石田でもなく、上杉景勝か直江兼続がやっていたら、『偉大なる敗軍の将』と呼ばれてもよかったんだろうけど、石田三成の戦闘力はどうみても家康以下だ。関ヶ原戦役って、石田三成がなにかをやればやるほど、家康が偉大に見えてくる、という気の毒さがあるよなあ。鉄壁の包囲陣を作っておいて、その三分の一がまともに働かないかもしくは裏切りを鮮明にする、って時点で、三成はじめ西軍首脳部、そろって、アホか、と。たぶん日本の軍事史を調べてこの合戦のことを知ったドイツ人のメッケル少佐、呆れてたぜ。
「1757年のインドで、イギリス東インド会社軍3000に対して、ベンガル軍とフランス東インド会社軍合計60000が正面からぶつかった結果、ベンガル軍のうち50000人が寝返ってイギリス軍の大勝利に終わったプラッシーの戦いってのがあるから、そう呆れはしなかったんじゃないかしら」
そんなゲームやりたくはないなあ。
「秀吉の朝鮮出兵では、まさに『ピュロスの勝利』を地で行くことになったしね。総退却を成功させただけでも日本軍の精強さがわかるけど、『偉大なる敗軍の将』が出るほどの軍事的敗北はしてないわ。そんな敗北してたら日本軍は全滅してただろうしね」
わかったよ。戦国時代に『偉大なる敗軍の将』はいなかった、でいいよもう。では江戸時代。
「泰平だったから……」
島原の乱は?
「本気でいってるの? あんな反乱起こした時点で、一揆勢は軍事的に無能よ。板倉重昌がそれ以上に無能なうえに手兵もないような状態だったから序盤は善戦したように見えるけど。幕府の増援が続々やって来ることと、スペインからの援軍が来るわけないことくらい見抜けなきゃ、最初から戦争なんて始めちゃいけないのよ」
もしお前が島原の乱の指導者だったらどうするんだ?
「籠城策なんか捨てて、九州じゅうを逃げ回ってゲリラ戦やってたでしょうね。それでも勝ち目はないでしょうけど、あたしは籠城って嫌いなの」
そういうやつだったなお前。
「シャクシャインの乱と、クナシリ・メナシの乱は、史実を調べるだけで暗澹としてくるので、飛ばしたほうがいいわね。『偉大なる敗軍の将』どころか、ただの虐殺よ、あれ」
飛ばすっていうと、いきなり幕末か。早いな。天誅組と天狗党と薩英戦争は飛ばすぞ。小規模すぎたりマイナー過ぎたり、敗軍というにはあまりに節操がないというか、負けた側に敗軍という気がしない戦いだったりするからな。
「じゃあ戊辰戦争だけど……負けた側の最高指揮官である徳川慶喜、えらい人とは思うけど、軍事的指揮官としては……」
無能だよな。
「北越戦争を指揮した河合継之助は……」
「峠」は読んだけど、司馬遼太郎、ひいきの引き倒しじゃないのか。ハンニバルもナポレオンも、ゲティスバーグのリー将軍も、『この乾坤一擲の大博打に勝てば最終的な勝利だ』という状況を作れたけれど、河合継之助はそうじゃないしなあ。だいたい、「調停」が成立すると考えた時点で、戦争の大局を読み間違えてるよあの人。
「五稜郭の土方は?」
北海道共和国ができてたら、たぶん三年もしないうちにロシアの植民地だったろうと思うね。そうでなくても、新政府軍と戦えば、じり貧の共和国軍は物量的にかなわないことは明白。チャンスがあることを知ったうえで手持ちの軍事力を使って賭けてみるのが名将ならば、五稜郭の旧幕臣は、いずれもそれに値しない。
「西南戦争の西郷さんは……」
暴徒の集まりに無理やり担ぎ出された気の毒な人。だいいち、西南戦争で野戦してないじゃん。
「どっちがボロクソよ」
そういわれてもなあ。じゃあ、明治維新の後の対外戦争では誰かな?
「あのね。あたしにそれをいわせるの?」
いや、わたしがいうと棘が立つかな、と思って。
「あたしがいっても同じじゃないの。うーん、でもまあ、いいたいことはわかるわよ。日清、日露、第一次世界大戦と日本は戦争で負けなしだった。だから、『敗軍の将』が出るわけないわよね。それがまずかったのよねえ……」
得るものが何もなかったシベリア出兵、よせばいいのに中国に手を出した山東出兵。このときならまだ手を引けたかもしれない。しかし満州事変から始まり真珠湾を経て玉音放送で終わる十五年戦争。これはもう、日本としては弁解の余地がない大失策だった。特に真珠湾からの対米戦は、何度も何度も引用しているが、歴史研究家の有坂純先生のいうとおり、「政府の無能と軍部の無責任による国際外交の一連の破滅的な失敗の総決算」そのものだ。そしてこの戦争の救いようのないところは、『偉大なる敗軍の将』がいないところなんだ。近代戦や現代戦は、そんなもの作らない。命令を下した「勝者の将」と、あとは死体の山だけだ。まさに「一将功成りて万骨枯る」でしかない。、敗将は戦死してなければ、生きて責任逃れの日々を送るだけだ。とくにその傾向が日本ではあまりにもひどすぎる。
「顔つきが死人みたいになってるわよ」
死人みたいにもなるさ。なんで「日本の一番長い日」の主役が阿南なんだ。もし、御前会議で軍の総意をまとめてポツダム宣言を早期に受諾して原爆投下とソ連侵攻を回避して降伏文書をミズーリ号に持って行ったのが「山本五十六」だったなら、彼は最後の「偉大なる敗軍の将」になれただろうけど、歴史はそうはならなかった。極東国際軍事裁判なんてのを食らってるのに、誰も責任なんて取りやしない。それどころか神様として祀るっていうんだから文句のひとつも言いたくなるじゃないか。
「センシティブな発言は避けるんじゃなかったの?」
うー、そうだった。まあ、日本人が誰でも知っている、日本独自の『偉大なる敗軍の将』なんて、考えてみりゃ、ひとりしかいないよ。北畠顕家以上の知名度と実力と逸話とに富んでいる人間はね。
「誰よ?」
ヤン・ウェンリー。
「あなた、日本のことばかり考えていて疲れたんじゃないの? いいかげんに寝たほうがいいわよ。それに、アジアにあるのは日本だけじゃないわ。ヤン・ウェンリーついでに、中国行きましょ。それからモンゴル、インド、中東、アフリカとオーストラリアと南米も調べましょうか」
ええと、中国? だったらまずあいつだ。ええと、殷の紂王……。
「時計を見るのよ。そしてもう、今日は薬飲んで歯を磨いて寝なさい。明日の仕事で死ぬわよ」
そうします……。
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敗軍の将と言いますと、項羽ですかねぇ。偉大かどうかは知らんけど、かなり痛い人だったのでは。
エルヴィン・ロンメル。惜しい人ですたい。彼を粛清してしまう様だからドイツは負けたんですよ。あ、勝って欲しかったとは言ってませんよ。
あと一人か。うーん、ナポレオンは陳腐だしなぁ。アントニウスもあれだし、ウェルキンゲトリクスにしときます。ローマにやられちゃいましたけど、頑張ったんだよ。うん。そうに違いない。
エルヴィン・ロンメル。惜しい人ですたい。彼を粛清してしまう様だからドイツは負けたんですよ。あ、勝って欲しかったとは言ってませんよ。
あと一人か。うーん、ナポレオンは陳腐だしなぁ。アントニウスもあれだし、ウェルキンゲトリクスにしときます。ローマにやられちゃいましたけど、頑張ったんだよ。うん。そうに違いない。
Re: ECMさん
楠木正成もいいんですが、自分の立てた作戦で善戦むなしく敗れた、ならともかく、アホの新田義貞に作戦を却下されて一部将として働いての戦死ですからねえ……。
それなら北畠顕家や石田三成や真田幸村のほうがまだわかるような。
それなら北畠顕家や石田三成や真田幸村のほうがまだわかるような。
NoTitle
楠木正成を推薦している人がいましたな。
昔楠木正成が祀られている湊川神社の近くに住んでいました。
昔楠木正成が祀られている湊川神社の近くに住んでいました。
Re: 椿さん
リー将軍は日本でいえば直江兼続というところでしょうかね、ちょうどいい将軍がいませんが、智仁勇を兼ね備えた将のなかの将です。その相棒になるのがストンウォールとあだ名されたジャクソン将軍で、これがちょうど真田幸村的ポジション。この二人が組むと向かうところ敵なしなのですが、ジャクソンは戦死してしまうのです。南北戦争で南軍が必要以上に長く戦えたのは、こうした指揮官の質がよかったからで、それゆえに「悲劇」と思えるくらいに善戦してしまったんですよね。北軍なんて、グラントとシャーマンをのぞいたら後はアホばかりですからなあ……。
それでは、これから、中国史をひとあたりしてみましょう。はたして、ギリシア悲劇のような美的敗北を遂げた武人は……と。(原稿の締め切りから目をそらせている)
「夢逐人」最終第三部は、そのうち……(現実から目をそらせている(笑))
それでは、これから、中国史をひとあたりしてみましょう。はたして、ギリシア悲劇のような美的敗北を遂げた武人は……と。(原稿の締め切りから目をそらせている)
「夢逐人」最終第三部は、そのうち……(現実から目をそらせている(笑))
NoTitle
偉大なる敗軍の将を探す日本史、面白かったです。
リー将軍はアメリカ人のヒーローのひとりなのでしょうね。「アメリカの歴史教科書」みたいなタイトルの本が話題になった時に読んでみて知りました。あの本の独立戦争から南北戦争の記述は面白かったなあ。どこの国にもそれぞれの歴史上のヒーローがいるんだなあと思いました。(当たり前か)
「応仁の乱」は、戦乱の概説書ではなくて「応仁の乱のときに興福寺がどう立ち回ったか」っていう本ですものね。お坊さんたちのキャラが立っていてあれはあれで面白かったですが。
敗軍の将を探す世界史めぐりも面白そうですね! 楽しみです!(圧) 「夢逐人」の続きもお待ちしております♪(圧)
リー将軍はアメリカ人のヒーローのひとりなのでしょうね。「アメリカの歴史教科書」みたいなタイトルの本が話題になった時に読んでみて知りました。あの本の独立戦争から南北戦争の記述は面白かったなあ。どこの国にもそれぞれの歴史上のヒーローがいるんだなあと思いました。(当たり前か)
「応仁の乱」は、戦乱の概説書ではなくて「応仁の乱のときに興福寺がどう立ち回ったか」っていう本ですものね。お坊さんたちのキャラが立っていてあれはあれで面白かったですが。
敗軍の将を探す世界史めぐりも面白そうですね! 楽しみです!(圧) 「夢逐人」の続きもお待ちしております♪(圧)
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Re: miss.keyさん
エルヴィン・ロンメルは確かに偉大ではあったけど、ちょっとでも第二次大戦のドイツ軍をかじった人間の一致した評価では、「最も優秀な将軍がマンシュタインで、二番目がグデーリアン。三、四がなくて五にロンメル、いやモーデルの方が上かな」というところなので、天才レベルなほどに秀才を極めたマンシュタインと、常軌を逸したほどに天才というか予言者レベルであったグデーリアンと同時期に生まれたのが不運ですなあ……。前にドイツ軍の将軍で打線を組むという遊びをしたことがありますが、ロンメルは一番バッターで、三番がグデーリアン、四番打者がマンシュタインという感じなんですよ、感覚的には……。
ウェルキンゲトリクスは不憫な人で、戦えば戦うほど相手のカエサルが偉大な天才に見えてくるという。たしかに一度はカエサルを後退させているけど、決戦となったアレシアの戦いではカエサルのワンマンショーみたいになって降伏してしまいましたからねえ。それを勝者のカエサルが「ガリア戦記」という二千年以上たってもまだ面白いという奇跡的な読み物にまとめちゃったので。たしかに佐藤賢一みたいな人がウェルキンゲトリクスを主人公にして「カエサルを撃て」みたいな波乱万丈の歴史小説書いてますけど、自分はそれ読んで「ウェルキンゲトリクスにはついていけん」と思った口ですから……。それにカエサルネタで行くなら、ウェルキンゲトリクスよりもポンペイウスのほうが戦術の才でも功績の面でもはるかに偉大で死に方もドラマチックですからねえ。まあ不憫な人ですわなあ。