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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎週土曜日更新)

    海外ミステリ111位 大統領に知らせますか? ジェフリー・アーチャー

     ←海外ミステリ111位 トリプル ケン・フォレット →自炊日記・その92(2019年8月)
     ジェフリー・アーチャーといえば、わたしが中高生のころは、書く作品書く作品ことごとくがベストセラー入りする政治家作家であった。だから腹を立てた、というわけではないが、コン・ゲーム小説とわかっている「百万ドルをとり返せ!」以外の作品は読む気がしなかった。なにしろ、ほかの代表作が「大統領に知らせますか?」に「めざせダウニング街10番地」という軟弱にもほどがある訳題である。どうせ軟弱な話だろう、と早飲み込みし、読みもせずにいままでやってきた。というわけで今回が初読である。バーミヤンで餃子を肴に、生絞りレモンサワーを飲みながら読んだ。どちらも割引券を使っての食事である。たぶんバーミヤンとしては嫌な客なんだろうな。

     で、感想であるが、面白かった。アメリカ大統領暗殺を扱ったサスペンス小説で、一週間の期限内に陰謀団を特定し、大統領を暗殺の手から守らなければならない、というものなのであるが、この事件を担当することになったFBIの人間が、まあ、他の冒険小説やサスペンス、スリラーから見ればあり得ないほどのミスをしでかしまくる。陰謀団も陰謀団で、かなり小規模であるうえ、こちらもミスを連発する。陰謀団のミスがバレるのが早いか、FBIがほんとに大ミスをしでかして大統領が殺されてしまうか、まことにスリル満点。FBIの捜査官が読んだら激怒するんじゃないか、という代物なのだが、作者のジェフリー・アーチャーは捜査を行う捜査官を新米にすることにより、この無茶なプロットに真実味を与えることに成功している。新人とは思えぬまことに老獪な技といえよう。

     というのは半ばジョークだが、面白かったのは事実。実際、読み始めたら本を閉じるのがもったいないくらいに読みやすくて続きが気になる、軽いエンターテインメントだった。なんせ大統領暗殺の陰謀を聞かされて、上司と同僚が陰謀団の手で殺され、大統領暗殺の日まで一週間、という状況にありながら、この主人公の捜査官マーク・アンドリューズは、一目ぼれした美人女医のエリザベス・デクスターと、毎晩デートを重ねるのだ。おい、お前、そんなことをしている間にやることがあるだろう! デートなんかするくらいなら睡眠をとれ、睡眠を! ワーカホリック気味の日本人に生まれた読者としては、やきもきせざるを得ない。国民性の違いというだけで説明しきれる問題でもないような気がする。

     この本は、初版と改訂版でかなり書き換えがあって、初版では大統領がエドワード・M・ケネディに設定され、登場議員も実名がバンバン出てくる、政治風刺小説の側面が強かったらしい。改訂版では、大統領を、自分の大河小説シリーズである「ケインとアベル」「ロスノフスキ家の娘」の重要登場人物であるフロレンティナ・ケインにすることによって、シリーズ外伝のような位置づけで取り込んでいる。どうせなら新潮文庫の初版を読みたかったが、話の大筋自体は変わっていないそうなので、改訂版で満足することにした。それにしても、ジェフリー・アーチャーがこの改訂版で「ありうべき近未来」として描いた国際情勢が、2019年の今読むと、ほほえましいというか、もう、恥ずかしい。なにしろNATOは共産圏の侵食でガタガタになって(スペイン・ポルトガル・イタリアが共産化して離脱しているのだ)、解体の必要性が叫ばれている始末。政治の世界に長いこと身を置いているジェフリー・アーチャーほどの人でも、ポリティカル・フィクションを書くと、存命中にもその現実認識のイカレかたがわかってしまうので、書くにはよほどの覚悟が必要であろう。だって、アメリカ大統領がドナルド・トランプなんて、1990年代に書いたら絶対編集者にボツにされるぞ……。
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    ~ Comment ~

    Re: 吾輩はひゃくであるさん

    ちなみに、アメリカで、「銃で死亡する人の割合」で断トツで多いのが「自殺」だとか。

    https://gigazine.net/news/20080701_gun_suicide_half_us/

    ものすごくわかる気がする。あのアメリカでこうなんだから、日本で銃が解禁されたら、それこそ何千万の葬式が出るかわからんなあこの自殺大国じゃ。とほほ。

    NoTitle

    >フライドポテトのほうが量が多い
    いくらなんでも、カンタンすぎだろ!(爆)

    >あの昭和の頃はまだ牧歌的だった
    あの頃は、そうやって、いくらでも話してられたんだよなぁ~。
    でも、今の高校生だって、そうじゃないの?
    平日の夕方とか、たまーにハンバーガー屋とか入ると、女子高生ががワイワイ話してたりするもん。
    ただまぁ私自身がそこに長居しないんで。
    どれだけ長い時間おしゃべりしてるかはわからないんだけどさ(^^ゞ

    >今でもうっとうしいと思うよ、飯食った後、いつまでもドリンクバーで本を読み終えるまで粘る客
    ブリッツさんも、意外に自意識がちょっと過剰なタイプなんじゃない?(^^)/
    店員さんは、ほとんどバイトかパートだもん。長居しようがいまいが、自分の時給に関係ないわけで。
    「あの客、まだいるんだなぁ…」と思うくらいで、大して気にしないと思うけどなぁ~(^<^)

    >アメリカ人がバカに見えますこの問題に限っては
    まぁー、人間、一度見についた習慣っていうのは、内心ではよくないと思っていてもやめられないってことなんでしょーね。
    ある意味、日本の昔の武士の刀みたいな。それがあればいつでも楽にジサツ出来る、みたいな面もあるんじゃない?
    いや、もちろんアメリカ人のメンタリティーって、そんなネガティブじゃないんだろうけど。
    でも、そういう面も多少はあるよーな気がしないでもない。

    そんな風に、銃があることで、安直にジサツに走る人がいるように。銃があることで、安直に事件を起こす人がいるのは間違いないだろうから。
    そう考えると、ブリッツさんの言うように、銃に固執しているのは愚かでしかないんだろうね。
    • #20634 吾輩はひゃくである 
    • URL 
    • 2019.11/23 12:24 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 機械ひゃく爵さん

    簡単なことだよワトスン君。フライドポテトのほうが量が多いのだ(笑)

    そうか……冷房あたるためだけにアイスコーヒーで半日粘るタイプか……。あの昭和の頃はまだ牧歌的だった気がする。でもやっぱり、今でもうっとうしいと思うよ、飯食った後、いつまでもドリンクバーで本を読み終えるまで粘る客って(笑)

    銃規制やってるイギリス人に取っちゃ、あれだけ発砲事件が多発してるのに銃を規制しないアメリカ人はバカに見えるんでしょうな。ちなみに同じく銃規制下の国に住んでる日本人のわたしも、アメリカ人がバカに見えますこの問題に限っては(笑)

    NoTitle

    >ポテトより餃子のほうが安い
    え?
    餃子の方が安いの?
    なんで?
    ま、確かに餃子は材料を入れれば機械で出来ちゃうんだろうけど、でも、それにしたってフライドポテトの方が手間がかからない気がするけど!?
    もちろんフライドポテトも好きだけど。
    でも、餃子とだったら、断然そっちの方が好きなんで。
    まぁ私は、餃子が安い方がうれしいかなぁ~(^^)/

    >ドリンクバーだけで毎週三時間も本を読み終わるまで居座られてみなさい
    高校生の頃、よくコーヒー一杯で、日曜の午後ずっと喫茶店でダベっってたりしたけど、そんな感じ?(^^ゞ
    でも、ファミレスなら店員さんのほとんどはパートやバイトだろうから、特にどうってことないんじゃない?
    都内だと、2時間で追い出される決まりになってるところがあるけど、そういう決まりはないわけでしょ?

    >フロレンティナ、まさにイギリスの国会議員が考えるような政策やっててカッコいい
    今のイギリスの国会議員は何やってんだ!(爆)
    そういえば、あのネクタイがやたら派手な議会の議長が引退でインタビューに応えてるのを見ましたけど、あの人、ユニークで面白い人ですね(^^)/

    Re: ひゃっくぬーどるさん

    飽きたというか、ポテトより餃子のほうが安いんじゃ。くくくく。(血涙)

    それとドリンクバーだけで毎週三時間も本を読み終わるまで居座られてみなさい、普通の店なら出禁ものです。

    フロレンティナ、まさにイギリスの国会議員が考えるような政策やっててカッコいいですよ。銃規制とかね!(^-^)
    • #20599 ポール・ブリッツ 
    • URL 
    • 2019.11/11 14:23 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 面白半分さん

    しかたがないんだ……。

    家にいると、すぐそばにパソコンがあるから、

    つい『対魔忍RPGX』をしてしまうんだ……。

    自炊日記が更新されないのもそのせいなんだ……。(待てコラおい)
    • #20598 ポール・ブリッツ 
    • URL 
    • 2019.11/11 13:47 
    •  ▲EntryTop 

    NoTitle

    >バーミヤンで餃子を肴に
    ポテトは飽きたの?

    >バーミヤンとしては嫌な客
    個人商店じゃないから、割引券だけで飲食しても、店員は別に関係ないんじゃない?(^^ゞ

    >読みやすくて続きが気になる、軽いエンターテインメント
    軽いかどうかはともかく、というか、その軽いと感じさせるテイストを良しとするか、悪いとするかはともかく、ジェフリー・アーチャーの良さはポジティブなエンタメさに徹しているところだと思いますね。

    >初版では大統領がエドワード・M・ケネディに設定
    この本は読んでないんだけど、そうだったんだ!
    ていうか、大統領はフロレンティナなんだ!へぇー!
    なーんか、すっごい懐かしい。
    ケインとアベルとロスノフスキ家の娘は、昔読んで、すっごくよかったんで。フロレンティナの大統領の場面があるってだけで、読んでみたくなったぞ(^^)/

    >「ありうべき近未来」として描いた国際情勢が、2019年の今読むと
    そりゃそうでしょー(^^ゞ
    ていうか、この時点では、冷戦の消滅なんて空想小説の世界だったろうし。何より、ソ連が解体されちゃうなんて、誰も考えもしなかったんじゃない?
    それこそ、3年前、トランプさんが大統領になると、ほとんどの人が
    予想してなかったように(^^;
    • #20586 ひゃっくぬーどる 
    • URL 
    • 2019.11/10 15:38 
    •  ▲EntryTop 

    NoTitle

    バーミヤンで読書!
    そこに食いつき気味です。

    「百万ドル~」しか読んでいませんので参考になりました
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