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    映画の感想

    「素晴らしき戦争」見た

     ←日本ミステリ77位 大いなる幻影 戸川昌子 →日本ミステリ77位 団十郎切腹事件 戸板康二
     大学在学時にミリタリー同人誌をコミケで売っていたとき、買った同じくミリタリー関係の同人誌で取り上げられていて名前を知った。なんでも「ジジイやオッサンが軍服を着て歌い踊るミュージカル映画の傑作」ということだった。それ以来、見たい見たいと思い続けて20年。ついにCS放送を録画して見たが……たしかに、噂は正しかった。ジジイやオッサンが歌って踊るすごい作品だった。しかし、だからといって生半可に見ていられるような能天気作品ではまったくなかったのである。アッテンボロー監督、きつい作品撮る人だなあ。

     冒頭の戯画的な政府首脳たちのやりとりで、これはこういうファンタジー的作品なのかな、と思って見ていると、平凡なイギリス人大家族の話になり、そして戦争を煽り立てる歌と踊りのシーンになって……世界大戦勃発。そこから恐怖の戦争ものになる。この映画を見る上では、いくらかの第一次世界大戦に関する知識がないとわかりづらいところがあるかもしれない。

     開戦当初、全世界の人間は、ヨーロッパで戦火との話を聞いて、「ああ、また戦争が始まったのか。じゃあ、クリスマスまでには終わるな」とマジで信じていた。世界大戦というものは、最初、「ウォー・トゥ・エンド・ウォーズ」(戦争を終わらせるための戦争)だなどと呼ばれていたくらいだ。勝つにせよ負けるにせよ、砲兵に援護された歩兵の前進と、騎兵の突撃で、一回か二回の会戦でケリがつくだろう、というのが当時の常識だった。それをひっくり返してしまったのが、「機関銃」の発明である。ドイツ軍は効果的に機関銃を用いて、英仏ベルギーの軍隊の騎兵突撃を徹底的に粉砕してしまった。この映画では、いみじくもそれをあらわしたシーンがある。遊園地みたいな「第一次世界大戦にようこそ」をエンジョイするために続々と入っていくイギリス人。そこでは、能天気な歌に合わせ、うきうきできらびやかな軍装をまとってメリーゴーランドに載っている兵士たちが、機関銃の射撃音とともに、死体になってぐるぐる回る……。そして悲惨でリアルな戦場の風景になるのだ。正直、やられた、と思った。あまりにも鮮やかな場面転換である。

     その後も、あくまでも史実に忠実に、第一次大戦がどんどん悲惨になっていくのが映し出されていく。ピクニック気分だった行軍は、泥まみれで冷たい塹壕での持久戦となり、日に日に兵士たちは非人間的になっていく。撤退をするばかりだったフレンチ元帥の代わりに、彼にライバル意識を燃やすヘイグ将軍が、歌い踊りながら「王家のコネ」で最高指揮官となり、戦争を「消耗戦」とする。彼の積極策により、ドイツ兵の損害も大きくなるが、それ以上にイギリス兵がばたばた死んでいく。「犠牲は6万ですんだ」というのは名ゼリフであろう。指揮を執る将軍たちは、歌わせ踊らせギャグ映画みたいに撮り、現実の戦場は徹底したリアリズムで撮るというアッテンボロー監督の演出、冴えている。その間にも戦争は毒ガス戦になり、「一日にだいたい5000~50000の規模で人が死んでいく」という異様な状況となって、もう見ているほうもわけがわからなくなってくる。(そんな中で日曜礼拝の牧師の説教のギャグには笑ってしまった。恐ろしい話ではあるが)

     主役である大家族スミス一家の男たちは、ひとりまたひとりと戦地に倒れていく。最後に残ったジャックが、命令に従い赤いテープをたどっていくと……。

     ラストシーン。美しい映像だった。この悲惨な話の結末としてはあまりにも美しすぎる映像。だがここで考えなくてはいけないのは、あの映像は「一部」でしかないということなのだ。それがわかっているから監督はあそこまで美しい映像が撮れたのではないかと思う。

     キワモノブラックジョーク映画を見るつもりだったわたしがバカだった、というしかない。第一次世界大戦を扱った戦争映画の傑作である。マイベスト戦争映画に入れるにはちょっと……だが、万人に見てほしい映画。何のヒロイックなところもなく、兵士が次から次へと消耗させられていくような話が好きな人間にはたまらん映画である。「犬死に映画」とでも呼ぼうか。そして戦争というものの本質は、そこにあるのだ。さすがはイギリス人、といっておこう……。
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    ~ Comment ~

    Re: 八つひゃく村さん

    古本はもっと手に入れにくくなると思いますよ。だっていま限界まで搾取されているトラック輸送が破綻をきたすのは目に見えてますもん。

    送料が倍になったって驚きゃしません。それが日本の消費を底まで冷え込ませることになるでしょうねきっと。

    それまでうまいもん食って面白い本読んで寝ましょ。(刹那的な男であった)

    NoTitle

    >デフレスパイラルだから経済弱者はなんとか生きていけているのもまたしかり
    そう!まさにそこ!
    要は、大企業が馬鹿で無意味な内部留保を止めて。率先して懐を痛めればいいんだけど、サラリーマン社長だから、自分の業績に引っかかっちゃうからやらないわけですよね。
    それで日本人がどんどん疲弊していったのが、まさに10何年か前のいざなみ景気で。その後のリーマンショックに始まる世界恐慌とさらに東日本大震災等災害でさらにヨレヨレになっているわけですよね。
    このままいくと、ホント落ちるとこまで落ちちゃうんじゃないかと…。

    とはいえなぁー。
    最近のアマゾンの古本の高騰は痛いんだよなぁ…(>_<)

    Re: さいもん・ひゃーくの事件簿さん

    デフレスパイラル怖いけど、デフレスパイラルだから経済弱者はなんとか生きていけているのもまたしかりですからねえ。

    ここで手のつけられないインフレなんか起きると、それこそ生活無力者は首を吊って死ぬしかないからなあ……。ほんと経済は魔物や。

    Re: miss.keyさん

    それは誰もが指摘することですね。正確には、終止符が打たれたのは「第一次大戦の前半」です。ドイツの基本作戦であったシュリーフェンプラン(というのも正確ではないのですが)がマルヌの会戦で失敗し、果てしない塹壕戦にはなりましたが、実はロシア相手の東部戦線では、二倍の敵を機動防御で各個撃破した「タンネンベルグの戦い」でもうかがえるとおり、けっこう機動力がものをいう運動戦になり、ドイツ軍は快進撃をしていたのです。そこらへんを説明すると長くなりますが……。

    それにしても、第一次大戦序盤のフランス軍の作戦計画はまさに「アホの集団」といったおもむきが強い。よーするに、防御拠点で機関銃を構えている相手にひたすら正面から突撃をし続けたんですな。よく目立つ青の制服で。「攻撃は最大の防御だから攻撃しかしないぜ」って感覚で。当然大損害を出して攻撃は頓挫し、フランス軍も塹壕戦を始めることになるわけであります。いったいあの酸鼻をきわめた南北戦争と日露戦争から何を学んだんだ、って感じですが、このフランスのメチャクチャな作戦、実は日露戦争の、旅順の要塞にまともな火力支援抜きでひたすら歩兵突撃を繰り返して最終的に開城させた日本軍の影響が強かったらしく、世の中、何が災いするかわからんもんであります。

    第二次世界大戦を過ぎて、地政学的に見た現在の日本の武力状況では、『すぐ隣の某国やその隣の某国やその隣の某国のキ印相手』であろうと、「話し合う」ことしか選択肢が存在しないのも事実なので(殴り合ったらバスに体当たりするみたいな感じで正面からのされるか、軽量級ボクサーの試合みたいに果てしないジャブの打ち合いに引きずり込まれて15ラウンド戦った末に両者ノックダウンするか、しかない)、今のネトウヨさんの無責任極まる「大日本帝国万歳」的言動には正直「アホちゃうか」としか思えないであります。とくに石原慎太郎の無責任ぶりにはハラが立ちますな。とほほ。

    NoTitle

    犬死したかどうかはともかく、2000年代前半くらいの日本の製造業はそんな感じでしたね。
    90年代の真っ暗闇から抜けた感じは確かにあるんだけど、でも、その真っ暗だった90年代が懐かしくなるくらいに猫も杓子も「値下げしろ!」の連呼。
    経営者は「新興国企業に勝つために、今は給与や雇用より設備投資」と何のビジョンもなくお金を貯めるばっかり。
    リストラで人がどんどんいなくなって、残った人に全部しわよせ。でも、給料は上がらない。
    みんなボロボロになって気づけば、シェアは新興国企業に全部持ってかれている。
    そこにリーマンショックがきて…
    みたいな。

    今またほとんど同じようなことが起きているような……
    • #19957 さいもん・ひゃーくの事件簿 
    • URL 
    • 2019.03/10 16:47 
    •  ▲EntryTop 

    古き良き時代最後の戦争

     語弊はあるが、「古き良き時代の戦争」に終止符を打ったのが第一次大戦だったのではなかろうか。何といっても此処までは勘と経験と知恵と閃きを頼りに戦争が出来た時代である。しかしこの後は物量と兵器の性能。大局的に兵士の能力はあまり関係ない。一人の兵士の生死に価値は無く、英雄も現れない。ただひたすらに戦局の片隅で死に、ボードにカウントされるだけの兵士。
     しかしそれでも戦争が無くならないのは「必要だから」なのだろう。すぐ隣の某国やその隣の某国やその隣の某国のキ印相手に「離せばわかる」が通らないのは誰が見たって判るもの。

    NoTitle

    まったくです。

    好みもあると思いますが、

    どストライクでした~(^^)

    たぶんドイツ人が作ったらもっと救いのない映画になるんだろうな……。

    コメントを頂き、有難うございました☆

    >「犬死に映画」とでも呼ぼうか。そして戦争というものの本質は、そこにあるのだ。さすがはイギリス人、といっておこう……。

    仰る通りですね!
    この映画に対する想いを感じる記事ですね。

    長年見たくてやっと見られても
    ガッカリする作品も多いかと思います。
    この作品がご期待以上で、本当に良かったですね~!


    .
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