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    東西ミステリーベスト100挑戦記(ミステリ感想・やや毎日更新)

    海外ミステリ114位 約束の地 ロバート・B・パーカー

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     この企画の海外28位で再読した「初秋」があまりにもクソ作品だったのであきらめて読んだ。いちおう、大学のころに読んだので、再読、である。

     感想だが、この作家のスペンサー・シリーズはあきらめていたが、読んでみると意外と面白いハードボイルド小説であった。1976年度MWA受賞作というのもうなずける。家出した妻を探せ、という導入部から、依頼を完璧にこなしたうえでそれ以上のことまでやってしまう私立探偵スペンサーの活躍ぶりをにやにやしながら眺めるのには一種独特の味わいがある。ハードボイルドというよりも、一種の「仕事人」小説だな。

     それはそれでいいのだが、「初秋」で嫌になるほど見せつけられたあの悪癖も、本書ですでに嫌になるほど出てきている。要するに、スペンサーも、彼のステディであるスーザンも、話の鍵である、家出した主婦のパム・シェパードも、「しゃべりすぎ」なのだ。彼らはしゃべる。事件が動いていない合間なんか、もう、しゃべりっぱなしだ。その内容が内容で、作者のパーカーとしては、ハイソで高踏的な議論をしているつもりなのだろうが、ハイデガーのいい方を借りれば、見事なまでの「空談」で、中身が完全に空っぽなのだ。それに登場人物はまるで気づいておらず、人生の真実に迫る重大なことのように、かつ、自分の現実の生活とは結びつかないどうでもいいことのように、しゃべる。その姿は、あたかもツイッターで議論をする「イキリオタク」のそれだ。

     イキリオタクの議論が悪いことではないのは事実であるが、文弱の徒であることでは引けをとらないわたしの神経を逆撫でするようなマッチョ礼賛のスペンサーの発言を聞いていると、「違うだろ!」といいたくなってくる。ツッコミを入れたら負け、なんだろうと思うが、それにしてもねえ。

     また、スペンサー・シリーズの名脇役である黒人、フリーランサーでやっている裏社会の人間、ホークも登場するが、やっぱりかっこいいね、ホーク。その理由は、たぶん、スペンサーやスーザンたちの議論に「深入りしないから」だろう。かわりに、ホークは行動のひとつひとつがかっこいい。結末での、ホークのスペンサーに対する「借りの返しかた」なんて最高である。まったく、なにをやっても「爽快」感を与える男である。だが、スペンサーと比べて図々しさが足りないので、「主人公」にはなれないタイプの男ではあるな。

     このスペンサー・シリーズは、人気があったがゆえの悲惨な運命をたどることになった。日本での評価は「初秋」でピークを迎え、その後ひたすらな「下り坂」をたどることになるのである。スペンサー・シリーズを推していた最右翼が「読まずに死ねるか!」の内藤陳であったが、彼がその自分の連載コラムでロバート・B・パーカーの小説を、「落ち目」になってもひたすらに擁護し続けたのは、やっぱり日本のファンとして「感ずるところ」があったのだろう。なんだかんだいって、スペンサー・シリーズは作者の死後出版された「春嵐」まで、番外編的な一作を除きすべて邦訳されているのだ。あれだけミステリマニアから、「パワーが落ちた」だの「駄作」だの「才能の残りカス的作品」だのいわれ続けながら。早川書房もよくもまあつきあったものである。このことについての教訓は、やっぱり「安易に版権の契約を結んじゃダメ」ということかなあ、といったら、スペンサーファンに殴られるだろうか……。
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    ~ Comment ~

    Re: 赤鼻のひゃくさん

    まあスーザンが主役でも、やってることはほとんど変わらんらしいのでいいんじゃない?(笑)

    NoTitle

    今さら思い出したんですけど、ロバート・B・パーカーの女性が主人公のやつは読みましたね。
    読んだ理由は特にはなくて、たまたま新刊で出てたからだと思うけど。
    そんなわけで、内容も憶えてません(^^ゞ

    Re: blackoutさん

    裏道を行くのももう飽きた、が、表へ踏み出すのもめんどくさい年齢になっちゃって、年は取りたくないですなほんと。

    Re: 東京ひゃくストーリーさん

    まあ読みたいときに読むのがミステリというものですので(笑)

    パーカーとスペンサーは、良くも悪くも「20世紀」の作家であり探偵ですから、どうしても、「読み時」というものに縛られるように思います。フォーサイスには「普遍性」があるけど、パーカーにはそれがないような。

    でもまあ、この作品は面白いですよ。「初秋」なんかより、よほどいいですな。

    NoTitle

    古今東西、図々しくてよく喋る輩は中身のない連中が大半かとw

    そして、それがマジョリティだったりすることも、また大半かと(汗)

    なので、連中のいない場所で我が道を行けばいいかとw

    自分はそう思ってますですw

    NoTitle

    ロバート・B・パーカーは、80年代の中ごろから、やっと海外モノを読みだした私みたいのからすると、もしかしたら、ずっと読まない作家なのかもなー。
    ハードボイルドは嫌いではないので。
    興味がハードボイルドに振れるたび、読んでみようかなーと思うんだけど。
    でも、他のヤツに手を出している内に、自分の中のハードボイルドブームが終わっちゃう…、みたいな(^^ゞ

    でも、ブリッツさんの話を(見る)聞く限りじゃぁ、デニス・ルヘインを読み始めて、すぐ、主人公のおしゃばりにゲンナリして読むのを止めちゃった私みたいなのは手を出さない方がよさそーな?(^。^)

    >イキリオタク
    その言葉、初めて知りました(^^;
    確かに、そーいう人、いますよね、よく(笑)
    ただ、時々、なんでそんなに知ってるん?と、逆に感心しちゃう人もいたりして(゜.゜)
    ま、オタクと揶揄されないだけど、迷惑という意味じゃぁ、そのイキリオタクよりも、おしゃべりが迷惑な人も結構いるんですけどね。世の中(爆)
    • #20713 東京ひゃくストーリー 
    • URL 
    • 2019.12/15 16:23 
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